「 不都合な記憶 」の映画情報・あらすじ・レビュー(Amazonオリジナル)

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文・ライター:リリヲ

「 Arc アーク 」で近未来と人間性の融合が見事だった石川慶監督が描く、新たなSFラブストーリー。

2200年のスペースコロニーで暮らす夫婦の記憶と秘密が暴かれてゆくSF、サイコ、サスペンス、ラブの多要素がバランスよく楽しめる秀作エンタメです。

目次

不都合な記憶

©不都合な記憶

あらすじ

2200年、宇宙に浮かぶスペースコロニーで、理想的な結婚生活を送っている夫婦。しかし、実際は妻は既に亡くなっており、夫は保存しておいた情報を頼りに幸せだった時の妻を求め、何度も彼女を再現していた。再現を繰り返すうちに、彼女の隠された記憶がよみがえり、彼らの結婚生活の秘密が暴かれていく。近未来のスペースコロニーを舞台に、夫婦それぞれの記憶とそこに隠された秘密、そして始まる妻からの復讐を、サスペンスとラブ・ストーリーの要素を交えて描く。

(公式サイトより引用)

原題

Previously Saved Version

公開日

2024年9月27日

上映時間

117分

予告編

キャスト

  • 石川慶(監督)
  • 伊藤英明
  • 新木優子
  • ジアッブ=ララナー コーントラニン
  • 水間ロン

公式サイト

不都合な記憶

作品評価

  • 映像 
  • 脚本 
  • キャスト 
  • 音楽(BGM) 
  • リピート度 
  • グロ度 
  • 総合評価 

石川監督が切り開く新たなSF作品

©不都合な記憶

これまでの日本でのSF映画といえば、タイムリープ系、近未来でも日本が舞台のものが多く、

宇宙を舞台にし、オリジナル脚本で“ 見ることのできる ”SF映画を作れる日本人監督はそう多くなかった。

これを見事に成立させた石川監督だが、それは彼の映画人生が海外からスタートしたことに起因すると言っていいだろう。

本作はアメリカ配給(Amazon GMG studioはアメリカの配給会社)、これまで4度タッグを組んだポーランド人の撮影監督、

カナダのVFXチーム、タイの撮影スタッフと、国際色豊かな制作チームを起用している。

実際、夫婦が暮らすコロニー内の自宅や宇宙描写はダイナミックで美しく、感嘆してしまう。

マユミの陶芸家という設定や、全てをテクノロジーに頼るわけではなく、畑から収穫したり、

料理の作り方はAIが教えてくれるものの作るのは人間だったり、現代の生活と地続きの点があることでリアリティを感じさせ、

監督は人間の営みにおいて温故知新を大切に考えているのだと想像できた。

さまざまな要素が織り込まれている本作だが、私にとってはとても悲しくて切ない愛の物語だった。

「 エクス・マキナ 」(2015)からAIの人間性をさらに成長させ、より親密な存在へ発展させていた。

理想と完璧を追い求め続けたナオキ

毒親育ちの人間は、誰より深く愛を求めるのに、歪な人間関係になってしまいがちで、永遠に失いたくない関係さえも壊してしまうことがある。

ナオキはそんな、悲しくて切ない人だと感じた。

思考は短絡的だが、愛を求める気持ちだけは誰よりも強く、諦められない人だと思うから。

とはいえ、大量のマユミAIや彼女たちを切り捨てる判断の速さにはゾッとしたが…。

本作では伊藤英明自身が持つ危うさが作品にうまく呼応していた。

伊藤演じるナオキのワイルドな色気と繊細さ、科学者という知能の高さ、愛一択な性格は、サイコパスでさえなければ完璧なのに(笑)

感情を持ったAIと暮らす場合、大抵の人は情が湧いてしまうものだが、ナオキは違う。

科学者としてマユミを作り上げようとしているから完璧を目指すし、そもそもマユミ本人ですら事故とはいえ

「 こんなのマユミじゃない 」と殺してしまった男だ。

社会性に乏しいから「 こうあるべき 」から離れられず、変化に適応する力に欠けているのだろう。

歪な人間が作り出すものは、あと何百年経っても” 完璧 “なんて出来得ないのかもしれない。

だって、人間自身が歪さを愛おしいと感じているから。

作中でナオキが救われなかったことがとても悲しく余韻が抜けない。

彼の魂の安住を願わずにはいられない。

まとめ

本作は辛口な感想が多いが、物語が二転三転し、それぞれの秘密に驚き、登場人物の悲しみに共鳴する、

力作揃いのAmazonオリジナル映画と並んでも引けを取らない作品なのではないだろうか。

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