皆んな大好き「 ちひろさん 」
実は賛否両論巻き起こり、本作も原作同様、好き嫌いがハッキリ分かれそうな作品。
今泉味薄めだけど、小さな大事なことを拾い上げていく良さはしっかり描けている。
マジョリティの中は生きづらいなという方にオススメです。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
ちひろさん
あらすじ
公開日
2023年2月23日
原題
Call Me Chihiro
上映時間
131分
キャスト
- 今泉力哉(監督)
- 有村架純
- 豊嶋花
- 嶋田鉄太
- van
- 佐久間由衣
- 長澤樹
- 市川実和子
- 鈴木慶一
- 根岸季衣
- リリー・フランキー
- 平田満
- 風吹ジュン
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
今泉力哉作品は、監督自身のメンタルと呼応するように作品の当たり外れが大きい。
ただ、原作もの、コラボものにはめっぽう強い。
今泉作品の魅力のひとつに気まずさのカオスがある。
そのカオスは複雑になればなるほど面白い。
そういう意味で本作の「 風俗嬢が弁当屋 」という設定は、気まずさもカオスも孕んだ今泉監督にうってつけの素材だ。
私もそれを期待して観始めたのだが、あれ?
まさかのカオスなし?
今泉味の毒気なし?
全部、ちひろがスルスルッとほどいてしまい、そのほどけた欠片に光を当てていく感じ。
闇は存在しているのに、そこは深掘らず、なんだかんだ皆良い人、良かったねで終わってしまいメリハリに欠けている。
そこにあるのは皆が一生懸命踏ん張って生き救われる、優しい世界があるだけだ。
くるりを主題歌に据えている辺りで、本気度を感じたのに肩透かしを食らった。
深くないけれど、浅くもない傷を持った人々をちひろは、彼らが一人でも立っていられるように少しだけ支える。
ちひろの他者との関わり方が、まさにこれで深くなく浅くなく、対人関係においてこの関わり方が出来る人は本当に稀だ。
久仁子の家庭は、毒親とまではいかなくても目に見えない牙を孕んだ家庭で、だからこそ、他者理解が得られにくく、相談もしにくい。
しかし、そういう傷こそ、放置すると大人になってから膿み、長い時間ズキズキと痛み続けるハメになるのだ。
ちひろは寂しさを全身に纏っている様子から察するに、まだ古傷が少し痛んで、リハビリ中といったところか。
「 あなたならどこにいたって孤独を手放さずにいられる 」と多恵に言われ涙するちひろ。
孤独でなくなるということは失うものを得ること。
傷つく要因を飲み込むということだ。
本作の重要なキーワードとして在る谷口の腕に彫られた「 色即是空 」という仏教用語。
この世の出来事は、必ず因と縁によって生じるが、それより生まれた結果は絶えず形を変え、変化していくという意味だ。
ちひろと街の人々の出会いは良いものも悪いものも、生まれては消え、また生まれるを繰り返し。
ちひろは、その中で形に囚われず成長している途中なのだ。
他人の傷だけでなく自らの傷をも糧に変え、力強く美しく進化したちひろに再び会ってみたくなった。