「 小学校~それは小さな社会~ 」の映画情報・あらすじ・レビュー

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「 発達と学齢は関係ない。その子自身の発達を見て指導するのが令和の教育 」

日本の集団主義や強調性の高さは、世界が学んでいきたいことの1つです。

しかし、これは実は「 諸刃の剣 」であることをよく知っておく必要があります。(作中に出てくる國學院大學の先生の言葉を抜粋して要約)

目次

小学校~それは小さな社会~

©︎小学校~それは小さな社会~

あらすじ

桜が満開の4月。新年度は入学式から始まる。授業が始まり、1年生は挙手の仕方や廊下の歩き方、掃除や給食当番など、集団生活の一員としての規律と秩序について初めて学ぶ。そんな1年生の手助けをするのは6年生だ。小さくてまだ何もわからない1年生も、わずか6年の間に自分が何者であるかという自覚を持ち、6年生にふさわしい行動を取るようになる。主人公は学校そのもの。カメラは、1年生と6年生に焦点を絞り、春夏秋冬、彼らの学校生活を追う。コロナ禍において学校行事実施の有無に悩み、安全と犠牲をめぐる議論を重ねる教師、社会生活におけるマナーを学んでいく1年生、経験を重ね次章への準備を始める6年生……。3学期になり、2年生に進む1年生は、新1年生のために音楽演奏をすることになる。彼らは社会の一員として生きていくために、ものごとをやり遂げる責任感や、そこで得られる達成感を感じて学び、また“誰かのために何かをする喜び”も体験するのだ。桜のつぼみがほころび始め、また新年度が始まる。(公式サイトより引用)

公開日

2024年12月13日

上映時間

99分

予告編

キャスト

  • 山崎エマ(監督)

公式サイト

小学校~それは小さな社会~

感想レビュー

靴をそろえることは大事ですか?

2021年春、コロナ真っただ中で入学してきた新一年生。毎日を緊張しつつ、楽しんでいる子、お母さんが恋しくなる子、さまざまです。

さて、小学校に入ると「 係活動 」が始まります。上履き(靴だったかもしれません)はきちんと揃えて下駄箱にいれます。
それをチェックする係もあります。

各生徒の上履きの踵がそろえられているかを見て「 花丸、丸、三角 」と言いながら、当番が表にチェックしていきます。

そして最後、きれいに揃えられた上履きたちをiPadで写真に収めて任務は終了です。

脱いだ靴をきちんと揃えるのは、日本人が誇る素晴らしい行儀の1つですよね。

しかし、それがとても難しい不器用な子もいます。数カ月前までは園児だったのです。

今から教え込まなくても、大人になって周りを見て「 自分もああなりたい 」と思ったら、自然と直すよう心がけると思います。

低学年の頃は特に発達過程が様々で、皆が簡単にできることが出来ない子、皆ができないことが簡単にできる子、それが多様性です。発達の度合いはそれぞれ違うのです。

行政が多様性や自主性を重んじている割に、現場は規律と統一であふれていました。「 みんなちゃんと座って!」と周囲に大きな声で言った生徒に先生は「 注意してくれてありがとう 」と言いました。

「 注意することは正しいこと 」だと、その生徒は思ってしまうかもしれませんよね。私は「 皆が気付くように言ってくれてありがとう 」と、先生にそう言って欲しかったです。

先生も苦悩している

苦悩に満ちて、それと葛藤している先生たちのセリフをいくつか紹介します。

「 平均台に乗って仕事してますよ、毎日。自由と制限、フラフラ揺れながら子どもたちと接しています 」

「 保護者には『 もう少し見守ってください 』と言われますよ。僕なんて時代遅れですよ。でもね、怒るべきところは怒らないといけないと思うんですよね 」

嘆くように言ったこの男性教諭は、毎朝誰よりも早く登校し、職員室でコンビニ朝食を食べ、各教室を除菌しています。

保護者の望む形とは違いますが、誰よりも全生徒を見守って除菌をしていると、私は感じました。

行事を通して連帯感や達成感を得ることは大切

学校には季節によって様々な行事があります。連帯感、達成感などを得る大切な行事、社会性への第一歩です。成長を保護者に見てもらう機会でもあります。

新入生が入ってくるための音楽会の担当は来年2年生になる子たちです。それぞれの楽器担当がオーディションで選ばれます。

この時の子どもの表情は演技したものではないので、本当に伝わってきました。頑張りたい、でも怖い、受かった友達を喜んであげなきゃいけない、いろんな思いが交錯します。

めげずにオーディションを受け続け、やっとシンバルをやることになった女の子がいました。しかし、練習中、音がずれていると注意され、先生に理由を尋ねられます。

「 楽譜がありません 」とビクビク答えました。「 みんなも(楽譜を)持っていないのに弾けるのはなぜですか?」と、先生は本人にではなく周囲に問います。

皆は答えます、大きな声でハキハキと答えるんです「 家で練習しているからでーす!」そのようなことは周囲に聞かなくても本人が分かっています。表情を見れば分かります。

この子はすでにそこまでの理解ができる発達をしている子でした。

「 勝ち上がってきた者だけが2年生の代表になれるんです 」と、先生は最後に言いました。

勝ち上がることが大事なのか

この女の子は音楽会当日、怖くて会場に入れませんでした。「 また怒られる 」と、廊下の隅で委縮していました。

でも別の担任の先生は「 一緒に怒られてあげるよ 」とその子に言いました。私は救われたような思いになり、涙が出ました。

音楽会終了後、音楽の先生は、その子に「 きっとできると信じていたよ 」とフォローしました。きっとそれは本音にちがいありません。

しかし女の子は早くその場を去りたい様子でした。駆け寄って行った先は「 一緒に怒られてあげる 」と言った先生でした。
子どもは、今を生きています。後からのフォローは通じません。

いろんなタイプの先生がいて、互いをフォローし合っているこのエピソードはホッと安心した場面でもありました。これはとても大切なことですよね。色々な生徒がいるように、色々な先生がいないと対応できません。 

私はこの音楽の先生が悪いとは思っていません。こういう指導があってもいいと思いますし、発達の段階によっては、ふざけて生意気になってきた子には、たとえ低学年でも厳しく言うべきだと思います。

この世にやってきて7年しか経っていない子ども

相手はやっと2年生になる子です。楽譜を忘れてくる子もいることは、教師として想定できたと思います。

予備の楽譜を用意しておき、黙って渡し、練習後、一対一で「 代表は常に万全を心がけよう 」の一言だったら…

この子は、自分のような子がいた時に助けるため、予備に楽譜を持つようになっていたかもしれません。

叱られた記憶は、その理由を忘れますが、「 具体的に何かをしてくれた 」という優しさは脳に定着します。

疑問と安心の両方あるドキュメンタリーでした。

山崎エマ監督は、私たち大人に「 答えを探してください 」とメッセージをくれたのかもしれません。

どうか、たくさんの人がこのドキュメンタリーを見て多くの疑問と安心を発見してください。

その安心を一緒に膨らませましょう。まずは私たち大人が変わっていくのです。

執筆者

文・ライター:栗秋美穂

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