【 ガチで絶対みろ 】Netflix「 サンクチュアリ‐聖域‐」シーズン1まとめ、シーズン2(続編)に期待!

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サンクチュアリ‐聖域‐シーズン1

©️サンクチュアリ-聖域-

管理人コメント

前代未聞の相撲エンターテイメント開幕。伝統と格式を重んじる角界を揺るがす力士の物語に刮目せよ。

公開日

2023年5月4日

上映時間

各エピソード参照

キャスト

  • 一ノ瀬ワタル
  • ピエール瀧
  • 染谷将太
  • 小雪

公式サイト

サンクチュアリ‐聖域‐

予告編

作品評価

  • 映像
  • 脚本
  • キャスト
  • 音楽
  • リピート度
  • グロ度
  • 総合評価

サンクチュアリ‐聖域‐シーズン1(ネタバレなし考察レビュー)

第1話 – このドラマ、めちゃめちゃ凄いぞ

公開から瞬く間に話題となり、Netflixの国内ランキングでは1位を獲得。

公開から1ヶ月近く経とうとしている現在も3位と上位に食い込み続けている。

さらに、相撲という日本の国技の斬新な描き方が目新しいのか、海外での評価も高く、50以上の国と地域で「 今日のシリーズTOP10 」入りを果たしている。

主演の一ノ瀬ワタルは、最近だと藤井道人監督の映画「 ヴィレッジ 」、ドラマ「 インフォーマ 」にも出演したことが記憶に新しく、

どちらもなかなかに凶悪で、切なさを抱えた男を見事に演じられていたのが印象的だった。

相撲という題材にピンとこず、視聴を後回しにしていた筆者であるが、いい機会を頂戴したのでしかと拝見させていただいた。

もし同じようにサンクチュアリ後回し勢だという人がいたら、これを読んだ後でも読む前でもいいから、騙されたと思って1話だけ見てほしい。

福岡での荒れた生活から抜け出すため、青年は相撲で大金を稼げると誘われ、故郷を離れて相撲部屋に入門する。だが、彼の反抗的な態度は変わらず、周囲からは認められず、相撲に対して真剣に向き合えずにいた。

正直なところ舐めていた。

このドラマ、めちゃめちゃすごいぞ。

荒々しく乱暴な稽古のシーンは、それだけで好きな人には刺さりまくるに違いない。

くすりと笑える多少のコミカルな演出はあるものの、舞台のメインとなる猿将部屋が古めかしい相撲部屋ということもあってか、その空気感はほとんど任侠映画のよう。

聖域という割りに、何かあればすぐに「 殺すぞ 」と威嚇し合うヤクザの事務所のような相撲部屋の雰囲気は、猿将親方を演じているのがピエール瀧だからというだけではないだろう。

元・格闘家であるという主演の一ノ瀬ワタルの演技もさることながら、ピエール瀧、小雪、染谷将太と脇を固める俳優陣も盤石で、物語により厚みを持たせることに一役も二役も買っていることはいうまでもない。

少し内気で、相撲に真摯に打ち込んでいる清水(染谷将太)は、基本コミカルな演技が光っていたが、部屋から脱走しようとした小瀬(のちの猿桜/一ノ瀬ワタル)を引き留めるシーンにはスポコンらしい爽やかな熱があった。

(そのあと、自分はちゃっかりと脱走していった清水の背中は忘れない。暑苦しいだけじゃない笑いが随所に散りばめられているのも、本作の魅力の1つだ。)

1話は序章的な意味合いもあり、小瀬が相撲の世界に飛び込むまでの背景も描かれている。

脚が悪く甲斐性なしの父親と、借金まみれで娼婦同然の母親。

小瀬は「 目標800万 」と書かれた通帳を後生大事に持っているが、チンピラから巻き上げたお金はまだ五桁にも届かない。

どうして800万なんだろうか――と、とてつもなく不器用な父子の別れのシーンを見てしまうと、その数字にも何か意味があるのではと勘繰りたくもなってくる。

父親が餞別として渡したしわしわの5000円札を、小瀬が決して使わず大切に持っていたことが分かるシーンには、平常時の粗暴さと相撲を舐め切った悪童っぷりとのギャップに思わず胸が熱くなった人も少なくないだろう。

こんな感じで相撲とドラマにただただ熱い本作だが、ただのスポコン、ヤンキーが更生していくサクセスストーリーというだけで終わらないのも面白い。

ほとんどイジメのような先輩力士によるしごき、女性蔑視的とも言える男性中心の土俵社会、おまけに何やら師匠会の暗い思惑も錯綜していくような展開も予感させる。

先の読めない重層的な開幕に、胸躍るばかりである。

相撲スゴイ。

一ノ瀬ワタルもスゴイ。

サンクチュアリ‐聖域‐もスゴイ。

冒頭で正直舐めていたと書いたが、今書きながら筆者は猛省しているところだ。

個人的に、とくに印象深かったのは、「 女は土俵に近づくな 」と差別されたことに憤る国嶋(忽那汐里)を猿将部屋の外で上司の時津(田口トモロヲ)がなだめるシーンだ。

一般社会の常識から大きくズレた角界の「普通」を異常だと罵る国嶋に、時津が言った台詞がある。

「 異常の上に成り立つ異世界、それが角界なんだ 」

尾瀬は、今はまだただの問題児。

そんな剥き出しの熱い青さを秘める男が、その異常の先で一体どんな景色を見ることになるのか。

たった60分で、もう目が離せなくなった。

第2話 – 戦う理由を背負った人間はきっと強くなる

清は兄弟子に誘われて、気乗りしないまま高級クラブへ行く。しかし、兄弟子からの酷い扱いを受け、稽古中に怒りをぶつけることにする。

1話の冒頭は吹き飛ばされた小瀬が叩きつけられる稽古場の壁が約1分にわたって映されるという、なかなかに痺れる開幕だったが、2話はまた違った意味で衝撃だった。

一瞬、全然違う番組が再生され始めたと思った人も多いのではないだろうか。

というのも、画面いっぱいに映し出されるのは、はらりと舞う桜の花びらと血を流す女の腕。

そして事切れた女の虚ろな顔と、死体の前に佇む1人の少年へと画面は変わる。

これだけ観ると完全にサスペンスやミステリの冒頭。不穏である。

これはどうやら、小瀬がよく煙草を喫っている公園で知り合って仲良く(?)なる怪物級力士・静内(住洋樹)の過去のようだが、何者なんだ……と引きもばっちり。

そんな感じで、今後の展開に深く絡んできそうな新キャラが続々と登場するのが2話である。

明らかに異質さ極まっている静内に、小瀬が鼻の下伸びまくりのキャバ嬢・七海(寺本莉緒)、とりあえず名前だけ出てきた休場中の横綱「 蛇王 」などなど。

キャバクラのシーンでは「 猿楽町で会いましょう 」(2019)、「手」(2022)などで主演を務めた新鋭の若手俳優・金子大地がなにやら意味ありげにちらっと映るシーンもあった。

もちろんドラマも健在。

清水(染谷将太)の熱が響いたかと思いきや、1話から引き続き全く真面目に相撲に取り組む雰囲気のない小瀬。

しかし自分の序の口優勝を唯一喜び、たくさんの仕送りを送ってくれた父が交通整理の仕事中の事故で寝たきりになってしまう。

安くはないだろう入院費だが母親はびた一文払わないと言い出す始末で、小瀬の背中には不器用ながらも大好きだった父の命が圧し掛かることになる。

相撲で稼ぐしか残された道はなくなった。

果たして、これが悪童・小瀬にとっての転機になるのだろうか。

とうとう小瀬に、戦わなければならない(相撲で上を目指さなければならない)理由ができたのである。

戦う理由を背負った人間はきっと強くなる。

そんな感慨に耽りつつ、筆者はふとあることに気づいてしまう。

このドラマ、まだここまで1度も割(試合)をしていない。

スポーツ(武道)の醍醐味と言えば、やはり緊迫感ある試合だ。

あらゆるスポーツ漫画なんかが早々に練習試合を組み入れてストーリーを展開させていくのも、やはり試合こそがスポーツものの肝だからだろう。

おすすめサイト

日常生活でついつい調べたくなるものをテーマに発信しているサイト。スポーツ記事も多い。 とはとは.net

しかし、ここまで2話、全体の4分の1を終えて、「サンクチュアリ‐聖域‐」はまだ取組をしていない。

それどころか小瀬はネコ騙しをするばかりで、まともに相撲を取ってすらいないのだ。

にもかかわらずストーリーのテンポはよく、荒っぽい部分と笑える部分とちょっと泣きそうになる部分のバランスが絶妙なので観ていて飽きないどころか、どんどん作品に引き込まれていく。

やはり「サンクチュアリ‐聖域‐」、とてつもなくスゴいドラマである。

第3話 – 俳優たちの「出世作」となる予感しかない

清は悪知恵を働かせ、父親の入院費用を工面するためにお金を稼ぐことにした。猿将親方は、本場所に挑もうとする清に、猿桜という四股名を授けるのであった。

今回はコミカルな〝おバカ〟シーンが多かった。

小瀬は延々と自撮りをしているイケメン力士・猿岳の熱烈なファンからテンポよくお金を巻き上げてみたり、七海のおっぱいに鼻の下を伸ばしていたら巻き上げた50万をあっさりすられたり。

公園友達の静内との絡みもあり、一方的に絡んでみて煙草を喫わせてみたりもしていた(咽る静内を見て小瀬は大爆笑していた)。

小瀬は憎たらしいし、個人的には絶対自分の周りいてほしくないタイプの人間なのだが、どうしても憎めないのは、こういう底抜けに〝バカ〟で〝アホ〟な愛らしい一面があるからなのかもしれない。

こんな感じでゆるい3話だが、少しずつ小瀬の相撲に対する意識への変化も見られた。

猿谷にされたアドバイスを真摯に受け止め、小瀬は先輩力士たちの稽古を真剣に観察し始める。

夜中の公園では七海からの連絡に全く気付かないほど一心不乱に〝コソ練〟に励む。

真面目や努力なんてものとは無縁で、いつもふてぶてしく恥知らずな男・小瀬清だが、勝利への渇望と相撲に対する熱意が徐々に頭をもたげ始めているのを感じた。

勝てば官軍という言葉がある通り、相撲だって「勝ってなんぼ」だという側面がないわけではないだろうと、門外漢の筆者は勝手ながらに思う。

小瀬のビックマウスも、礼儀を失している行為と言えばまあそうなのだが、ボクシングとかでよくあるマイクパフォーマンスだとすれば、観客を楽しませるエンタメとしてはアリな気もしなくもない。

だが相撲は勝負が大事な競技である以上に武道であり、つまるところ「 道 」でもある。

力士たちはみな、面倒な礼儀や作法を重んじ、かたちのない敬意というものを信仰している(少なくとも猿将部屋で最も真摯に相撲に向き合っている猿谷はそういう存在に見える)。

そしてその信仰や伝統は、ときに歪みながら「 女は土俵に近づくな 」などという時勢にそぐわない不合理な姿をもって私たちの前に現れる。

ふてぶてしい小瀬の進む道がどこへ向かうのか、まだ3話時点ではどうにも予想できない。

しかし親方から与えられた四股名を「 ダサい 」と一蹴した小瀬が、自分自身の相撲の道を進み、その異常の先の景色を望むのはまだもう少し先のことになりそうである。

本話からようやく本番――5月場所が始まった。

稽古では先輩力士にしごかれまくっていて歯が立たない猿桜だが、本番に強いタイプなのか取組では圧勝。

相変わらず礼儀の「 れ 」の字も知らないふてぶてしさも健在で、関わるあちこちで波紋を立てていく。

その結果、初日を無事に終えた夜、猿将部屋を目の敵にしている犬嶋親方とその腰巾着の馬山親方が猿将部屋を訪れる。

「 あの猿桜ってガキ…今日中に引退させろ 」

ドラマらしく、次回への引きもばっちりである。

また、前回で痛烈な存在感を放っていた静内の、その異常な強さもヴェールを脱いだ。

結果はまるで子供をあやすような完勝。

そもそも身体の大きさが違いすぎて、相手力士がただただ可哀想である。

今後、静内が猿桜のライバルとして立ちはだかることは明白。

2人の取組が待ち遠しくてたまらない。

第4話 – いつの世も男の手綱を握っているのは女

協会から引退を迫られる猿桜。敵対者たちは、おかみの助けで難を逃れた猿桜を執念深く攻撃し続ける。

女将さんのおかげで難を逃れたとはいえ、粘着質で陰湿な犬嶋・馬山両親方の「 猿桜潰し 」は執拗に続く。

痛快だったのは、その嫌がらせに対する猿桜のアンサーだ。

腕を折りにきた馬山部屋の力士との一番。

両腕を相手にがっちりと抱え込まれ、苦しみ悲鳴を上げる猿桜。

騒然となる(ほくそ笑む)会場だったが…

悲鳴はまさかの演技。

猿桜は密着状態からのヘッドバットで相手を打ちのめす。

そのまま押し出しで無事勝利――かと思いきや、普通に勝つだけで終わらないのがこの男である。

「 仕返し 」の一手は、やはりふてぶてしく、どうしようもなく幼稚だ。

だが、猿将親方と同じように、画面の前で思わず笑みを溢し、胸が湧いた人はきっと少なくないだろう。

2話でちらっとだけ映っていた男・村田(金子大地)が本格的に登場。

キャバクラに七海といた猿桜の前に現れ、金にものを言わせたド派手な遊びに連れ込んでいく。

この村田、いわゆるどんなビジネスをしているのか全く見えないタイプの「 胡散臭い 」金持ちなのだが(投資家らしい台詞がある)、

横綱なら億単位で稼げると言った猿桜に「 やっす 」と言ってのけ、優勝祝いとして札束を無造作に渡すくらいなので、図抜けた富豪であることは間違いない。

猿桜は村田に気に入られてまんざらでもない様子だが、こういうタイプの金持ちと関わったドラマで事態が好転する予感がしない。

本作は1話から借金やカツアゲなどの描写があり、猿桜のパーソナリティにも金の問題は深く関わっている。

金が持つ魔性が、また1つ新たなドラマを生み出しそうである。

大相撲でも八百長などの問題があるように、多くのスポーツで金の問題は深い闇を作っている。

大相撲には〝図抜けた金持ちが力士の後見人になって無償で支援する〟「 タニマチ 」という仕組みが存在する。

村田の登場が、大相撲を取り巻く「 金 」の因習を軸にしたドラマを展開するのでは…と期待感が高まるエピソードだった。

さらに本話では、静内の過去を探る謎の記者・安井(毎熊克哉)も登場し、いかにも怪しい風体で静内の故郷・羅臼を訪れ、静内の母と弟が死んだ事件を探っていた。

デビュー以来無敗を守って5月場所を優勝した静内はまさに怪物級の強さで、他の力士を圧倒し続けている。

本当に家族を殺しているのか――

第5話 – 男の物語

21連勝で三段目優勝、幕下へと昇進した猿桜はインタビューで答える。

「自分、横綱になる男なんで。角界ぶっ壊―す! ファ――――ック!!!!」

相変わらずの悪童・問題児っぷりである。

いっそここまでいくと清々しい。

村田に教えられた株取引も順調なようで、懐も温いらしい。

そんな感じで有頂天の猿桜は、稽古中、十両に上がってすぐ再び膝を故障してしまい幕下に逆戻りとなった先輩力士・猿谷を遠まわしに侮辱する。

憤る猿河たちだが、当の猿谷は「もういい」と揺るがない。ハードボイルドでかっこいい奴である。

第5話は、そんな愚直に相撲に取り組んできた男・猿谷の物語だ。

猿谷は病院にて、担当医の口から膝の完治には手術が必要であること、そして手術をすればもう2度と相撲を取ることはできないことを告げられる。

怪我というのは、アスリートにとって最も強大かつ困難な敵と言える。

まして百キロの身体を支える力士の膝ともなれば、相当な負荷がかかってしまうものなのだろう。

努力や根性、もちろんその場しのぎのテーピングやサポーターではどうにもならないほどに、猿谷の肉体は悲鳴を上げていた。

そんな猿谷には妻と子供がいる。

家族を背負って戦っていた男だったのである。

家の前の公園で友達と遊ぶ息子は父の帰宅に、嬉しそうに手を振り、妻は2人目の子供を身籠っている。

力士らしく亭主関白的なところはややあるが、まあ家族の関係は良好らしい。

猿谷は家族に向けた視線に、一体どれほどの想いや感情を込めたのだろう。

相撲だけが人生だった男は、ついに次場所での引退を決断する。

静かな部屋で、「 お疲れ様でした 」という妻の声と、それに応えるように酒を飲み干した猿谷の吐いた吐息が、切なく響く。

泣いても笑っても次が最後。

それは文字通り、猿谷の人生のすべてを乗せた最後の戦いの始まりでもあった。

しかし猿谷は最後の花道――次場所に向けての稽古中、一緒に倒れた猿桜の下敷きとなり膝を負傷してしまう。

一同が騒然となるなか、病院に運ばれた猿谷は医者に土下座をする。

「俺をもう一度土俵に上げてください、お願いします」

朴訥としていてひたすら相撲に打ち込んだ猿谷が見せた、初めての感情だった。

普段はあまり気持ちを表情に出さない人間のどうしようもなく溢れてしまう強い感情というのに、筆者は弱い。

だが、現実はどこまでも残酷に圧し掛かる。

決死の覚悟で臨む初日――対戦相手はあの怪物・静内。

結果は、善戦するも敗北(これまでになく静内を追い込む一番になっている。この臨場感はあえて書かないのでぜひ映像で体験してほしい)。

猿谷は傷めた膝を庇うように歩きながら土俵から退く。

真摯に相撲を追い求め続けた力士の、切なくも偉大な最後だった。

猿谷の負傷と引退を自分の責任だと抱え込む猿桜は、猿谷の一件で同部屋の力士たちからは完全につまはじきになってしまうが、国嶋や親方、清水たちに少しずつ支えられてなんとか元気を取り戻す。

待ったなし――力士は後ろに退くことも立ち止まることもできないのである。

そんななか対峙するのは、またも静内(どうやら取組表の作成には、犬嶋親方の陰謀が働いている)。

見ている私たちからすれば、とうとうこの瞬間が来たか…と感慨深いものがある。

どちらが勝ってもただで終わりはしないだろう大一番。

戦端が切られる間際、静内は不気味に笑う。勝負の行方は次回へと持ち越された。

勝負の行方は次回へと持ち越されるあたり、視聴者の気持ちを計算しつくした構成がもはや憎く思えてくる。

第6話 – タニマチの命令は絶対

猿桜との取組に臨む静内は、心と体に大きな傷を刻んだ。その後、故郷を訪れた静内は、自身の暗い過去と向かい合う。

猿桜 vs 静内という、本作の肝ともいえる取組の始まりとともに終えた前話だったが、予想の斜め上を行く衝撃の展開が待っていた。

え、待って、あれってそんな簡単に千切れるの…?

もう視聴済みの人であれば、そう思った人も少なくないだろう。

あるいは「 普通あそこまでやらんだろ… 」と思わず目を逸らしてしまったかもしれない。

グロが苦手な方であれば、要注意の本話。

とはいえ、本話は水面下で色々な動きもあり、かなり見ごたえのあるエピソードだった。

色々と触れたいことはあるが、今回はストーリーの大筋から少し逸れ、「 タニマチ 」について言及したい。

5話にて、猿桜の「 タニマチ 」になることを提案した金持ち青年・村田。

タニマチというのは、ひいきの力士の無償スポンサーのことで、細木数子氏が第68代横綱・朝青龍のタニマチだったことなどが知られている。

力士のスポンサーでいるには、食費から何から莫大な金がかかるわけで、金持ちにとってはタニマチとして、自分の周囲に力士をはべらせておくことが1つのステータスになるということらしい。

前回、力士を隣りに置いておくのかっこいいじゃん、みたいな軽いノリで猿桜のタニマチになった村田は、快気祝いと称して猿桜を無理矢理パーティーに呼びつける。

とはいえ、猿桜は意気消沈。

「 タニマチの命令は絶対 」

「 タニマチだよ?」

そんな言葉とともに飲めと強要された120万のボトルを猿桜は払いのけて粉々にしてしまう。

突っかかる村田だったが、猿桜に叩かれまくり、挙句の果てに女の子たちの前で失禁してしまう。

あらゆるスポーツ界において、スポンサーが強いというのは分からなくもない。

が、呼び出されたら応じなければならず、酒を飲めと言われたら飲まなくてはならない。

これでは、もはや意のままに動くアクセサリーである。

また、一方で静内を調べていた記者・安井は情報のリーク元として、連勝記録を追い抜かれそうになっていた人気力士・龍貴に目をつける。

日本を揺るがすネタになると喜ぶ安井だったが、彼のもとにはただならぬ空気をまとう老人・伊藤(笹野高史)が現れ、リーク元が自分であることを告げる。

さらに伊藤は柔らかな物腰とは裏腹に、安井の別れた妻子の住所や好きなゼリーまで徹底的に調べ上げていることをほのめかし、龍貴のネタから手を引くようにと警告する。

急に裏社会のフィクサーみたいな奴が登場し、不穏さが尋常じゃないのだが、どうやらこの伊藤という老人は龍貴のタニマチ。

ちなみに静内と龍貴の連勝記録を巡る一件には、この伊藤と、龍貴の母親にして龍谷部屋の女将である弥生が絡んでいる。

イチジク(女性の暗喩としてポピュラー)を齧るタニマチ・伊藤と「 お礼をさせて 」と口にする弥生の関係は想像に難くない。

また、イチジクを音を立てて齧るさまは、角界における低すぎる女性の地位を象徴してもいるのだろう。

龍谷部屋、まっ黒である。

これらはあくまでドラマだし、どこまでリアリティをもって描こうとした意図があるかは定かではない。

加えて、最近では大金を積んで力士をはべらせることが金持ちにとってのメリットにならなくなってきているとも聞く。

といいつつ、ジャニーズの新社外取締役に就任した白井氏は、日ハムコーチ時代にタニマチとの会食に、滅多に外食しない大谷選手らの若手を連れ回していたと、

報道されたりもしていたし、スポーツと金は相変わらずベッタリでもある。

型破りな力士である猿桜が「 タニマチ 」のようなお世辞にも素晴ら

第7話 – 絶体絶命のピンチを救った女将

相撲に真面目に取り組み始めた猿桜。その姿にやがて他の力士たちにも影響を与えていく。だが、猿桜は静内との取組での恐怖を克服できず葛藤していた。

まず、龍谷部屋の女将・弥生。

八百長をしかけていたことが親方に露見し、ばっさりと追い出される。

自らの女を利用して色を仕掛けたはずが、結果として伊藤に利用され、呆気なく排除されてしまう。

次に猿桜の彼女(?)である七海。

前回で猿桜に恥をかかされてしまった村田に利用され、猿桜への復讐の道具にされてしまう。

3人目は、記者・国嶋。

彼女は犬嶋親方のもとへと出向き、足に縋りついてまで猿桜の処分を取り消すようにと訴える。

6話の見舞いの一幕にもあるように国嶋の猿桜に対する恋慕は明らかで、なりふり構わない姿には成長を感じるが、やはり彼女もまた無力で力士たちの世界には踏み込めない。

こうして弥生と七海と国嶋が無力だったのは、彼女たちがあくまで「 女 」であり、「 母 」ではなかったからだと言えると思う。

角界において女はどうしようもなく無力だ。しかし女は「 母 」というペルソナを獲得することで強大な力を持つことができる。

それはきっと、角界の中心に我が物顔で座る力士たちが「 男 」ではなく「 子 」に過ぎないからだろう。

女は土俵に近づくなと息巻いた彼らは皆、「 母 」の庇護なしでは立ち上がることすらできない「 子 」なのである。

そのことは皮肉にも、もう2人の女たち――猿桜の2人の「母」たちが証明している。

1人目は猿将部屋の女将・花である。

4話でも解雇寸前の猿桜を助けた花だったが、今回もまた見事に暗躍する。

どんな取引があったのかは不明だが、何やら龍谷部屋の親方と過去に何らかの関係があったようで、詳しくは描かれていないものの、それが色恋的なものであることは想像に難くないだろう。

その意味で弥生と花は対照的だ。

母としての責務を全うしようと色を仕掛けた弥生は自分自身を女という道具として扱った。

しかし花は、あくまで母(女将)としての立場に立ちながら、かつて女だったときのカードを切り札として使うことで猿桜を救った。

似ているようで、全く対照的な2人の行動はやはり対照的な結果を生むことになったのである。

そして、最後に語られるべき人がもう1人。

もちろん小瀬清の母(余貴美子)である。

彼女は唐突に猿将部屋を訪れ、部屋から出て行こうとしていた息子に滅茶苦茶な克を入れる。

蹴り飛ばし、押し倒し、びびる息子をしっかりしろと叩きまくる。

そして反撃に転じた息子を見て笑うのだ。

「 いいツラしとるやん、馬鹿たれが 」

その気迫たるや、黒人の彼氏すら驚きで寄せ付けないほど。

あの怪演を目の当たりにして、「 母強ぇ 」とならないわけにはいかないだろう。

猿桜は2人の母に背中を押され、復活を遂げる。

恐怖を乗り越え、相撲へ真摯に向き合うようになり、猿桜から生まれる熱は他の力士たちを巻き込んで猿将部屋そのものを大きく変えていく。

また、故郷である北海道・羅臼に帰っていた静内もまた、今は亡き母の面影を確かめることで自らが相撲を取る理由、勝つことの意味を再発見した。

最終話前夜、すべての準備は整った。

あとは子が前へと進み、そのたくましく成長した背中を見せるだけである。

第8話 – 続編に大いなる期待を込めて

引退する猿谷の断髪式が開かれた。新年明け1月場所の初日、猿桜が相手は静内だった。物語の結末はいかに。

猿谷の断髪式はきっと、戦い続けた一人の男が怪我という魔によって、志半ばで土俵から退くことになる悔しさなどを描いた感動的なシーンなのだろう。

そこには当然、妻と息子の姿もある。

後援会、部屋の後輩力士たち、息子と名前を呼ばれ、猿谷の髪にハサミを入れていく。そして止めバサミとして親方の名前が呼ばれる。

その瞬間、胸の奥に込み上げつつあった感情は霧散した。

「 奥さんは呼ばれんのかい!」

本作は言うまでもなく凄まじい熱量の作品で、テンポもよくて面白い。

久しぶりにハマったと思える作品だったと言える。

だからこそ、忘れかけていた。危うく騙されることだった。

1話の記事でも書いた通り、角界は異常なのだ。

というのも、きっと猿谷の現役生活を影で最も支えたのは妻のはずだ。

その妻にハサミを持たせずにして、何がけじめだろうか。

ああ、愚かなり。

角界はとてつもなく愚かで、浅はかと言わざるを得ない。

そして異常の内側で悦に浸っている登場人物たちもまた、愚かで浅はかだと、あえて言わせてもらおうと思う。

角界をぶっ壊すと息巻いていた猿桜も、角界の常識にいちいち食って掛かり「 迎合なんてしません 」と宣言していた記者・国嶋も、いとも簡単に、いつの間にか角界の沼に引き摺り込まれてしまった。

このままでいいのか、と筆者は問いたい。

もしここで終わるなら、「サンクチュアリ‐聖域‐」はありがちなスポコン不良更生ドラマに成り下がってしまうだろう。

とはいえ、最終話なのでここで終わるほかにない。

言葉にし難いもどかしさが残っている。

思い返せば1話で時津は「 異常の上に成り立つ異世界、それが角界なんだ 」「 その異常の先にしか見えてこない世界があるんだ 」と言っていた。

それを言われた国嶋も、猿桜も見事に異常に取り込まれてしまったことは残念だが、まだその先にある景色は見えていないと言っていいだろう。

「 サンクチュアリ‐聖域‐ 」はこれから一体どんな景色を私たちに見せてくれるだろうか。

もしそれが、ただ伝統に取り込まれ、迎合した果ての風景だというのなら、残念だと言わざるを得ない。

角界をぶっ壊すという威勢のよさが、単なる一過性の反抗期ではないことを祈っている。

と、最後なのでやや辛口だったが、それはそれとして、本シリーズはめちゃめちゃ面白かった。

辛口なのは面白かったからこその期待が込められているのだ。

詳細への言及は避けるが、もう既にドラマを観終えた読者なら「 これで2期やらなかったら嘘だろ!」と叫びたくなっただろうし、なんなら実際に叫んだ人もいるに違いない。

続編に大いなる期待を込めて、気ままに書き綴ってきた本記事もいったんは千秋楽ということにさせてもらいたい。

©️サンクチュアリ -聖域-

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