築港ナイトマーケット&サンセットシアターで大人も子供も拍手喝采、屋外シアター開催までの道のりに迫る!【 取材 】
大阪市港区築港にて「 サンセットシアター 」と題し、屋外シアターが開催されました。
当初の目標である来場者数500人のところ、なんと1800人が集まる大成功。
会場になったのは、USJや海遊館などの大きな観光名所近く、海岸の景色や風も気持ちいい築港エリアの広場。
地下鉄の駅や駐車場もあり交通の便は良いものの、人通りはまばらで少し寂しい印象です。
そこを活性化させようと活動するのが、今回の主催である築港リノベーション協議会とのこと。
コロナ禍における映画館業界は公開延期、閉鎖、客席の間引き販売などが行われ、興行収入が激減。
その対策の1つとして、屋外シアターイベントの開催が増加中。
映画館や自宅とは全く違う、屋外シアターでの映画鑑賞は一体どのようなものなのか?
開催までの道のりについて主催の方にお話を聞きました。
会場にはデロリアンも登場。
主催スタッフがSNSを通じてオファーをし、オーナーがここまで運転して来ていただいたそう。
サインも入っています。
ビデオカメラなど小道具もあり、映画の世界にどっぷり漬かれる嬉しい演出です。
ポップコーン屋の出店もあり、上映前に購入。
いよいよ始まるんだとワクワク感も最高潮!
上映は19時から。
暗くなるのを今か今かと待ちます。
海岸なので夕日も綺麗。
スクリーンの前の芝生は子供優先エリア。
ブランケットにくるまって寝転がったりダンスしたり、のびのび全身で映画を楽しむ姿が印象的でした。
レジャーシートや椅子を持ち込んで観賞。
会場ではお酒も販売しており、それぞれが自由に楽しむ雰囲気は、まさに“お祭り”
予想をはるかに上回る来場者で、会場外の階段も客席として活用。
大盛況でしたね!とても楽しかったです。
本当に。こんなに沢山の人が来てくださるとは…驚きました。私たちは元々、映画イベント開催のためではなく、大阪市港区築港のいう地域を盛り上げるために集まったメンバーなんです。
その活動のひとつとして、以前から何度か屋外シアターイベントを開催していたのですが、今回はまさか1800人のお客様に来ていただけるなんて。とても嬉しかったです。
上映作品はどのように決めましたか?
今までは飲食店や雑貨を販売する出店者を集めたマルシェのようなイベントの横で映画を上映している、というだけだったんです。
でも今年からは、せっかく上映イベントをするなら、屋外で映画観たら気持ちいいよ!だけでは勿体ないと思い、“映画を体験”する、というコンセプトを立ち上げ、イベント自体の世界観をアメリカンヴィンテージで統一しました。
小さい頃に観た映画って、親父と一緒に観たなとか、金曜ロードショーで観た映画の話を次の日学校でしたな、とか、映画を観た環境や人についてもインパクトのある思い出として残っています。
そんな映画体験って、子供達の将来を変えるきかっけにもなるんじゃないかな、と感じています。
バックトゥザフューチャーはとても要素が多いですよね。SFが好き、車や機械が好き、50年代80年代の音楽やファッションがかっこいいとか。ここが好き!かっこいい!と思う興味関心の入口が多い。
映画を体験するというイベントとして、実際レコード屋さんや古着屋さん、ハンバーガー屋さんなどに出店していただき、会場でのお買い物や食べ物全てを映画体験として自然に紐づけることができたのが、作品を選ぶ上で決定的でした。
屋外シアターと映画館の決定的な違いとは、結局何なんでしょうか。
シンプルに考えると、映画館は最新作が観られる、屋外上映会は外で観られて気持ちいい、の差しか無いと思うんです。
今回はただ映画を外で観るだけにとどまらない楽しさを追求したのが、沢山のお客様に喜んでいただけた結果に結び付いたのかなと思います。
映画は2時間で終わってしまうのですが「 1日遊べて楽しかった!」と嬉しい声もいただいて、開催してよかったと思います。
最近は声を出したりペンライトを振ったりできる応援上映なども増えましたが、屋外シアターはもっと自由ですね。お祭りに近いと思います。
天候にも左右されやすいですよね。もし雨がふった場合は、なども考えていらっしゃいましたか?
雨なら延期を考えていました。別の日程も確保して、出店者さんにも確認していました。あと天候のリスクは絶対ありますよね。
例えば梅雨時期の開催だと不安です。上映権自体は、1回いくらで購入していて日程がずれても価格は変わらないので、その点は安心でした。
準備段階で大変だったこと、開催日に大変だったことを教えてください。
スクリーンを設置する場所、お客様に観ていただく場所、それぞれ管理している団体が別で、使用許可の申請がややこしくて大変でした。
実は、初めて開催した時と、第二回目までは、音を出す許可も下りなかったんです。
その時はお客様全員にポケット型のラジオをお配りして、音声はイヤフォンで聞いてもらました。でも回数を重ねるにつれ、
地域の人たちの支えや、区役所の方たちとの信頼関係が出来てきたので、前回開催からやっとスピーカーで音を出せるようになって、自分たちの今までの活動を認めていただいたようで嬉しかったです。
当日は、何人くるか分からない中準備をするのが大変でした。フライヤーを配ったのですが思いの外反応が良くて。
予約制にすることもできたのですが、他にも準備が多くて手が回らなかったんですよ。最初は500人目標だったのに(笑)。
ところが蓋をあけたら1800人!座る場所の確保を一番心配していたのですが、そこは本来客席として想定していなかったスペースにも椅子を置いて、何とか対処できました。
でもフードの出店が大行列になってしまい…人が来すぎて発生する問題は実は沢山起こってたんです。
集客や採算をとるためにどんなことをされたんですか?
地域の新聞屋さんに、チラシの折り込みをお願いしました。あと、近隣の掲示板などにポスターを貼っていただいて、今回からはインスタ広告を利用しました。
単発のイベントとインスタ広告って相性いいと思っていたんです。採算の面では、ドリンク販売を行いました。
フード販売の店舗さんにも来ていただいてましたが、ドリンク販売だけは主催が行い、利益を確保する。
あとはフードや雑貨屋さんの出展料です。それでも厳しいのは事実です(笑)。
ただ、結果的に今回は沢山ご来場いただきましたが、このイベントの力だけの集客では無いと思ってるんです。
バックトゥザフューチャーだから来た、という作品ファンの方、開催した前の週には大阪でコミコンも開催されていたこと、
劇団四季がバックトゥザフューチャーを上演していることなど偶然重なって、この集客に繋がったのだと思っています。
屋外シアターやってみたいなぁ、と思う方も多いと想像しますが、イベントや会場を借りて映画を流す、となると、機材の準備と、映画を上映する権利を申請して購入する必要がありますよね。難しくてお金もかかるイメージで、ハードルが高そうです。
今回は会場の一部にシーサイドスタジオCASOというフォトスタジオがあり、電源の確保と機材を貸していだけたことが、開催できた大きな要因のひとつだと思っています。
そんな開催しやすい場所を探すのも、ひとつの手です。上映する権利に関しては私たちは以前から親交のある京都映画センターの方に相談して手続きをお任せしましたが、
コネクションが無くても、屋外上映の開催までマネジメントしてもらえる代理店は沢山あるので、お任せすればスムーズに開催できるのではないかと思います。
今回、私たちが購入したのは“無料上映ができる権利“で、DVDが送られてくるんです。
”お客様からお金をとって上映会をする”権利だと、値段が跳ね上がるんですよ。でも、作品が入っている映写機のような機材ごと送られてくるらしいので、
機材も何も準備できない状態で、ある程度集客が見込めるなら良いかもしれません。今まで上映会を主催された団体に相談すると、色々アドバイスいただけるので良いかもしれませんね。
屋外シアターを開催したい!と思っている方にアドバイスはありますか?
何のために開催するのかが大事だと思っています。サブスクが普及した今、友達を呼んで一緒に観ることは気軽にできますよね。
せっかく屋上シアターをするなら、それ以上の体験を付けて開催するのが良いと思います。家で映画を観るのと違うポイントをどんどん増やしていく。
今回は、初見の方でも見やすく、何度も観た方には更に楽しんでいただけるよう、バックトゥザフューチャーの伏線・豆知識をまとめたフライヤーも入場時にお配りしました。
単発の開催で終わらず、どんどん興味を引き付けてイベントのファンを増やすと、回数を増すごとに、どんどん楽しい屋外シアター、忘れられない映画体験になると思います!
レジャーシートや折り畳み椅子を持ち寄り、夜空の下、海風を受けながらピクニック気分で楽しむ映画体験。
お酒を飲んだり、寝転がったり、ストーリーについて話したり、屋上シアターならではの楽しみ方が印象的で、体験を他人と共有することの楽しさを再確認しました。
未来から来たデロリアンがタイムスリップしエンドロールが流れると、自然と拍手が巻き起こり、「 何度も観た映画なのに、こんなに面白かったっけ 」「 家帰って続きも観たい!」などの声も。
大人も子供も大満足、思い出に残る一夜になりました。
今後、更に屋外シアターが普及すれば、映画を観る楽しさは勿論、“映画体験”の貴重さや素晴らしさも広まり、映画業界衰退を救うコンテンツに成り得るのではないでしょうか。
自分達でも開催したい!と思った方は、是非チャレンジを。
週末ふらっと屋外シアターに行ってみる、そんな社会の到来を待っています。
取材・執筆:米田ゆきほ