【 取材 】東京で新たなミニシアターの開業に挑む「 シネマリス 」の思いとは

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コロナ禍における規制などの影響で減少していた映画館の数が、また増えつつあります。

アニメ作品や漫画原作の邦画のヒットが大きな要素となっていますが、多くはシネコンで上映された作品。

ミニシアターは引き続き厳しい経営を余儀なくされ、閉館も相次いでいます。

今回は、この苦境の中、新しい映画館を作ろうと奔走するシネマリスさんに、お話を伺いました。

シネマリスさん プロフィール
千代田区内で既存の建物の1フロアを利用し、ロードショーとサブスク方式両方を兼ね備えたハイブリッド映画館開業に向けて活動中。完成まで毎週末、Xにて活動進捗を報告。都心の「 居場所 」「 逃げ場所 」となるコミュニティシネマを目指して奔走中。

目次

新作上映とサブスクのハイブリット映画館を目指す

――シネマリスさんは、会社などの組織ではないんですね。

稲田さん:

はい。支配人になる予定の私と、夫が始めた活動です。

加えて、飯田橋にあった名画座「 ギンレイホール 」にお勤めだった藤永さんに副支配人となっていただく予定で、アドバイスをいただき進めています。

夫婦とも全く違う仕事、しかも会社員だったので、経営者としての知識も、映画館運営の知識もなくって。

だから、藤永さんのお力が絶対に必要だったんです。

――頼もしいですね! 元々お知り合いだったんですか?

稲田さん:

夫婦ともギンレイホールに通ってた映画ファンでした。

準新作と旧作を2本立てで2週間交代に上映していて、さらに自由席。

1990年代半ばに“ ギンレイシネパスポート ”という1年間1万円で見放題の会員制度が始まったので、足繁く通っていました。

――1年間で1万円!映画館に通うファンにとっては激安ですね。今回作っている映画館も、新作を上映するロードショー館

と、会費制のサブスク館のハイブリット館を予定されているとか。

稲田さん:

その後少し値上がりはしたんですが、とてもお得ですよね。

サブスク館は、公開されて数ヶ月経った準新作や旧作を予定しています。

新作と組み合わせて、他の映画館にはない、うちの映画館ならではの楽しみ方ができるような作品選びができたらいいですよね。

例えば、リメイクされた新作と、元の作品を上映するとか。

――楽しそう! 1日中居座ってしまいそうです。場所はもう決まっているんですか?

稲田さん:

はい。東京都の千代田区内です。

集客しやすくて、映画館にできそうだな、と思う物件を見付けてすぐ藤永さんに相談して、ここならできそう、やろう!となりました。

ただ、劇場という施設に適合させていくのがとても大変で…。

階段の幅や衛生面など、法律で細かく決まっているので、それに合わせた構造や仕組みになるよう調整しています。

でもとてもいい建物で、ワクワクする感じなんですよ!

――資金の調達はどうされたんですか?

稲田さん:

自己資金と、助成金と、融資をかき集めて、これからクラウドファンディングを始めます。

思っていたより資材高騰などで工事費がかかりそうで、とても厳しいです。

――藤永さんは、どういうお気持ちで参加されてるんですか?

藤永さん:

映画館がどんどんなくなっている現状を、とても悲しく思っていました。

自分でも映画館再開に向けてコツコツ活動していたのですが…まず物件が見つからなかったんです。

映画館を作るのは、そもそもとても大変なんです。お金も必要ですし。

それに会社ではなく個人で本気で挑戦されているのを感じたので、自分の持っている経験などで、何かしら力になれればいいなと思って、一緒に活動を始めました。

映画館が1つでも増えるということは、とてもいいことですよね。

――SNSで進捗を随時報告しているのはなぜですか?

稲田さん:

最初から過程をさらけ出して色々意見をいただくことで、皆と一緒に作る映画館、営業スタート前から映画館のファンになっていただきたい気持ちで全て公表しています。

――リプライで来たアドバイスにも丁寧にご対応されていますね。

稲田さん:

はい。厳しい意見をもらうときもあるんですが、リアルで生活している中では見えないことも指摘していただけるので、勉強になっています。

例えば、喫煙スペースがほしい人と、禁煙にしたい人とか…どちらの意見も取り入れたいのですがスペースの都合で厳しいんです。

でも、みなさんに気持ちよく映画を観ていただけるよう調整しています。

――まさに、皆で作り上げる映画館ですね。

藤永さん:

20〜30代の若い世代の方から興味を持っていただいて、お手伝いをさせてくださいと連絡が来たのがよかったです。

皆さん知識も熱意も持ってらっしゃるんですよ!

ボランティアなので参加したいときだけ参加していただいてるんですが、若い方々が、映画館を作ろう!と集まってくれるのは、

息吹というか、アツい空気を感じられて、とてもおもしろい。

こんなこと経験できるなんで、なかなかないです。

――どんな映画館にしたいですか?

稲田さん:

シネフィルの中高年の皆さんにも来ていただきたいし、若い世代の方にも来ていただきたい。

若い世代の中には、ミニシアターは映画ファンしか来てはいけない敷居の高い場所だと思っている方が多いと知って驚きました。

広い世代に、リラックスして映画体験ができる劇場にしたいです。

あと、交流会なども企画して、コミュニティとして利用できるようにもしたいと考えていて、

何より気軽で居心地のいい映画館にしたいです!

誰でも気軽に立ち寄れる、都心のコミュニティシネマを創りたい

X(旧:Twitter)のシネマリス公式アカウントには、定期的に問題点や解決策などを整理した報告書が掲載されています。

「 この作品を上映してほしい! 」「 完成したら働かせてほしい! 」など、待ち望む声が集まり、既に活気が溢れ映画館のロビーのよう。

完成が待ち遠しいです。

米田ゆきほ

取材・執筆:米田ゆきほ

管理人

映画の情熱は素晴らしいものがありますね。映画館を実際に立ち上げようとしている試みは大変興味深いです。映画業界にはシネマリスさんのように、自身で開拓していく方もいらっしゃれば、他のルートで映画業界に身を置く方々もいらっしゃいます。
映画バイヤーのお仕事について解説しているJOBOON!も参考になります。

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