陽気なイタリアンファミリーコメディでありながら、家族の闇や性のとらえ方にザックリ切り込む社会派な面も魅力な一本。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
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泣いたり笑ったり
あらすじ
公開日
2022年12月2日
原題
Croce e delizia
上映時間
100分
キャスト
- シモーネ・ゴダノ(監督)
- アレッサンドロ・ガスマン
- ジャスミン・トリンカ
- ファブリッツィオ・ベンティボリオ
- フィリッポ・シッキターノ
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
とにかく最初から最後までテンションが高く、エネルギーに満ちたイタリアの人々が描かれていて、良きにつけ悪きにつけ、こんなに情感豊かに生きているというのは立派だなあと思わざるをえません。
ただ、陽気で明るいどんちゃん騒ぎばかりかと思いきや、家族の闇や経済格差、それにともなう文化格差など、イタリア社会の抱える課題も描かれており見逃せません。
振り切れた陽の中に、宿命的に陰も抱いている印象が、イタリアをますます多面的で魅力的な国に思わせます。
裕福で教養に溢れ、自由気ままに人生を謳歌するトニと、猟師として逞しく生き、素朴であたたかな愛情を持つカルロ。
ともに60代という年齢ゆえ、築き上げてきた確固たる過去もあります。
シモーネ・ゴーダル監督は、「 最初は30代の設定だったが、残りの人生を一緒に過ごすパートナーを見つけたことを主題にして60代という設定に変えた 」
と語っていますが、トニとカルロの関係性が、よくある「 禁断の恋 」ではなく「 互いを補いつつ、互いの良さを豊かに発揮できる関係性 」であるという描き方に好感を持ちました。
猟師の文化と生活の中で「 男らしさ 」を価値として代々生きてきたカルロの息子サンドロが、父の幸せを願いながらも、父親の男性との結婚に対し「 不快だ 」と打ち明けるシーンがあります。
イタリアですら、同性愛に対する嫌悪感はまだまだ根強いという現実。
それに対しカルロがすごい剣幕で「 不快に思うのは君ら自身の問題だ!」と抗議します。
エンターテイメント映画の中でのこうした表現にイタリアという国の先進性を感じます。
また、勝手気ままにふるまう父からの愛情を受けず、情緒不安定なトニの娘ペネロペが、父親の再婚相手に父親像を見出すのが不憫で、けなげで、幸せを願わずにいられませんでした。
まとめ
陽気なイタリアンファミリコメディと思いきや、家族の闇や社会の課題を描くさまは、今年9月公開の「 靴ひものロンド 」を回想させます。
伝わりやすいカラーの中でさらっと本質を提示するイタリア映画にこれからも目が離せません。