陽気なファミリーコメディと思ったら、度肝を抜かれる家族の痛みが余すことなく描かれた凄まじい作品。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
靴ひものロンド
あらすじ
公開日
2022年9月9日
原題
Lacci
上映時間
100分
キャスト
- ダニエレ・ルケッティ(監督)
- アルバ・ロルバケル
- ルイジ・ロ・カーショ
- ラウラ・モランテ
予告編
公式サイト
靴ひものロンド
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
好きだった点
家族のリアルを見事に描いていると感じました。
予告編からは想像もつかないような生々しい夫婦の現実や傷つく子どもたちの、いたたまれなさに感情移入せずには見ていられません。
特に、類まれな美少女である長女のアンナが、家庭内にただようぴりぴりとした緊張感の影響をもろに受け、だんだんと醜く変わっていってしまうのが痛々しかったです。
気性のままに生きる両親のはざまで苦しむ描写は、「 かつて自分もそうだった 」と感じる方も多いのではないかと思いました。
こうした題材が映画で扱われることは重要なことであり、いかに子どもが両親の緊張感の影響をもろに受けてしまうか、いかにその中でも穏便にふるまおうとするかが描かれ、いたたまれません。
嫌いだった点
父親のアルドの身勝手さには嫌気がさしました。
「 真実を打ち明けたい 」と言って、浮気を妻に告白しながら激怒する妻に逆上する等は、最低な振る舞いをしておきながらよくそんなことができるものだと呆れました。
自分のことしか考えず、罪悪感を抱える覚悟もなく、許しを得たいという甘えきった態度がよく出ていると思いました。
感想レビュー
母親であり妻であるヴァンダがつぶやく「 最大の失敗はアルドを手放さなかったこと 」というのは真理だと思います。
強く、賢明な一面も持つヴァンダですが、アルドのことになると異様に執着心が刺激されてしまい、本質を見失ってしまうようです。
そして、その犠牲は幼い子どもたちの心の傷となってのちのち顕在化します。
もしアルドと決別できていたら、もう少し平穏な未来があったであろうにと悔やまれますが、その当時のヴァンダはそのようにしか振る舞えなかったというのもまた事実。
時間はかかっても、子どもたちは結果的に、傷と向き合い、あらたな一歩を踏みだします。
能天気に見えた弟のサンドロもまた傷を負っていたことに胸は痛みますが、傷つく柔らかい心は、立ち直る強い心でもあるといったら楽観的過ぎるでしょうか?
まとめ
陽気なイタリアの陰に隠れた暗さも含めて、世界の共通性を感じる味わい深い傑作でした。