121分間、一度も飽きずに観ていられるエキサイティングな映画だった。
ハリウッド仕込みのアクションとインド神話、そしてアジア映画にインスパイアされた復讐劇を見事にブレンドさせた作品である。
序盤から観客の心を鷲掴みにする仕掛けが盛りだくさんで、終始スクリーンに目が釘付けだった。
ということで今回は、デヴ・パテルが初の監督として8年の構想を経て公開された「モンキーマン」について感想を綴っていく。
インド映画が好きな方や、アクションジャンルが好みの方は必見だ。
モンキーマン
あらすじ
幼い頃に母を殺され、人生の全てを奪われた〈キッド〉は、夜な夜な開催される闇のファイトクラブで猿のマスクを被り、〈モンキーマン〉を名乗る”殴られ屋”として生計を立てていた。
どん底で苦しみながら生きてきた彼だったが、自分から全てを奪ったヤツらのアジトに潜入する方法を偶然にも見つける─。
何年も押し殺してきた怒りを爆発させたキッドの目的はただ一つ「 ヤツらを殺す 」。
【 復讐の化神 】〈モンキーマン〉となった彼の、人生をかけた壮絶なる復讐劇が幕を開ける!
(公式サイトより引用)
原題
Monkey Man
公開日
2024年8月23日
上映時間
121分
予告編
キャスト
- デヴ・パテル(監督、主演ともに)
- シャルト・コプリー
- ピトバッシュ
- ビピン・シャルマ
- シカンダル・ケール
- アディティ・カルクンテ
- ソビタ・ドゥリパラ
- アシュウィニー・カルセカル
- マカランド・デシュパンデ
- ジャティン・マリク
- ザキール・フセイン
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- 総合評価
白熱!熱狂!怒涛!の復讐劇
本作で主演と監督を務めたデヴ・パテルは「 スラムドッグ$ミリオネア 」や「 ホテル・ムンバイ 」などで知られるイギリス出身の俳優。
本作が初の監督作品となるパテルだが、とても初めてとは思えない、実に斬新で興味深い映画を観せてくれた。
パテルは本作の構想を8年間も練ったのち、満を持して怒涛のアクション映画を完成させた。
特筆すべきは映画に盛り込まれた数々の要素である。
ハリウッド仕込みのアクションシーンは、観客を白熱させ一気に物語に引き込む。
中盤は、インド神話を取り入れた話になり、信仰による力を得る場面で落ち着きを見せながらも、リズミカルな展開で観客を熱狂させる。
そして、中盤からラストにかけてはアジア映画のような怒涛の復讐劇が幕を開けるのだ。
この一連の流れが神々しいまでの復讐劇となって、観客を襲う。
幼い頃にブルース・リーの「 燃えよドラゴン 」など、多くのアクション映画を観て育ったというパテル。
「 もし自分が監督として映画を作ることになったら、アクション映画を撮る 」とインタビューで語るほどアクション映画を敬愛している。
実際、初の監督作品で「 この量のアクションを、このクオリティでできるの? 」と思ってしまったほど、驚きを隠せない大迫力な作品だ。
インド社会に対する風刺
デヴ・パテルはイギリスに生まれながらもインド系の親のもとで育っている。
今までにも「 スラムドッグ$ミリオネア 」や「 LION ライオン 25年目のただいま 」で、インドにおける社会的な問題を浮き彫りにするテーマを取り上げてきた。
本作でも、そんなパテルの考えがちらほらと見え隠れするのが面白い。
架空の都市を舞台に繰り広げられる物語ではあるものの、現代のインド社会を風刺していることが伝わる内容だった。
殴られ屋の” モンキーマン “として裏社会で生きるキッド(デヴ・パテル)。
どこかの村を自分たちの都合で焼き払い、平気で人を襲うギャングのような権力者たち。
政治と警察の癒着問題だけでなく、女性蔑視の様子も本作には散りばめられている。
そんな弱者が虐げられている社会の地の底から這い出た一匹の猿が、モンキーマンとして裏社会で生き続けてきたキッドである。
その身に宿らせた小さな復讐の炎をたぎらせ、強きを挫くヒーローとして立ち上がるのだ。
ただ、本作のなかでは社会的な風刺が復讐劇を印象的に写すためのスパイスともなっている。
観客は単に「 差別や貧困の差が激しいのだな 」と心で素通りするような一瞬の同情を感じるだけではない。
弱き者たちの想いを背負って権力者に立ち向かう様子に、一層グッとくるわけだ。
だからこそ本作の復讐劇には、重みがあって面白い。
まとめ
本作の見どころは、ハリウッドのアクションとインド神話を見事に調和させた” 待ったなしの復讐劇 “である。
「 ジョン・ウィック 」でお馴染みの武器や銃、素手で繰り広げられる多彩な格闘シーンに、
「 ジェイソン・ボーンシリーズ 」を彷彿とさせる疾走感に溢れたカーチェイスが観客の心拍数を加速させる。
この怒涛のアクションと神々しい復讐劇を、ぜひ劇場にて体感してほしい。
ライター:みくと