文・ライター:青葉薫
今回は、「 衝撃のラスト 」という呪縛と向き合いながら、独自の世界観を築き上げてきたM・ナイト・シャマランのフィルモグラフィーを改めて振り返っていく。
M・ナイト・シャマランとは

ラストシーンは「 猿の惑星 」(1968)と並ぶ衝撃度。ミステリー映画の歴史は「 シックス・センス 」(1999)以前と以後に分けられる。
そういっても過言ではないマスターピースを29歳、長編映画3作目にして世に送り出したのがM・ナイト・シャマランだ。
インドで生まれながら、アメリカ・フィラデルフィアで育った。
ヒンドゥー教の家庭に生まれながら、カトリックの寄宿学校に通っていた。
学生時代は白人ばかりの教室で孤独を感じていた。
アイデンティティを希求していた彼の人生を決めたのは、8歳の誕生日にプレゼントされた8ミリカメラ。
スティーブン・スピルバーグに憧れ、10代で50本近くの自主映画を撮った。
半自伝的なデビュー作からの2作は興行的に振るわなかったが、先に述べた3作目の「 シックス・センス 」が転機となった。
脚本・監督を務めた本作でアカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞にノミネート。無名だった自身の名を世界に轟かせた。
だが、自ら生み出した「 予測不能なストーリー 」と「 衝撃のラスト 」という高いハードルと、周囲に背負わされた「 天才ストーリーテラー 」の名が彼を苦しめ続ける。
観客の「 『 シックス・センス 』を越えるラストの衝撃 」という過剰な期待に応えようとし続けた結果、「 一発屋 」という汚名を着せられた時期もあった。
「 シックス・センス 」以降の作品をどう評価するかは一人ひとりの自由だが、映画作りを通じて自らのアイデンティティを探求し続けてきた彼は、2008年に自身のルーツであるインド政府から勲章を授与されている。
娘は映画監督のイシャナ・ナイト・シャマラン。
父の「 オールド 」(2021)と「 ノック 終末の訪問者 」(2023)でセカンドユニットの演出を務め、「 ザ・ウォッチャーズ 」(2024)で監督デビューを果たしている。
M・ナイト・シャマラン作品一覧
M・ナイト・シャマランの監督作品は以下の通り。
- Praying with Anger(1992)
- 翼のない天使(1998)
- シックス・センス(1999)
- アンブレイカブル(2000)
- サイン(2002)
- ヴィレッジ(2004)
- レディ・イン・ザ・ウォーター(2006)
- ハプニング(2008)
- エアベンダー(2010)
- アフター・アース(2013)
- ヴィジット(2015)
- スプリット(2017)
- ミスター・ガラス(2019)
- オールド(2021)
- ノック 終末の訪問者(2023)
- トラップ(2024)
Praying with Anger(1992)

原題(英題)
Praying with Anger
上映時間
107分
コメント
自身が主演した、22歳のときのデビュー作。
インド系アメリカ人の主人公が、自らのルーツであるインドの大学でアイデンティティを探し求める半自伝的作品。
脚本は、ニューヨーク大学在学中に個人的な思いを綴ったもの。
トロント映画祭でも上映され、注目を集めた。
「 アメリカン・フィルム・インスティテュート 」で最優秀新人賞を受賞。
「 スチュワートリトル 」の脚色依頼に繋がったことでメジャーへの足掛かりとなった。
翼のない天使(1998)

原題(英題)
Wide Awake
上映時間
88分
キャスト
- M・ナイト・シャマラン(監督)
- デニス・リアリー
- ダナ・デラニー
- ジョセフ・クロス
- ティモシー・レイフシュナイダー
- ロージー・オドネル
コメント
日本未公開の初メジャー作品。
大好きな祖父を亡くし、悲しみに暮れる少年。
天国に行った祖父の行方を確かめようとする道程における彼の成長と奇跡を描いている。
ミステリーでもホラーでもないが、その神秘性と宗教観、そして「 神は存在するのか 」という問いかけには、「 シックス・センス 」以降のシャマランの片鱗を感じることができる。