映画を語る上で欠かせない監督と聞いて、あなたはどの人物を思い浮かべるだろうか。
ハリウッドきってのヒットメーカーにして、世界中の誰もがその名を知っているほどの巨匠。
なおかつ映画の歴史をコロリと覆した稀代の映画監督といえば、そう、スティーブン・スピルバーグだ。
彼が残した映画の数々は、未だ色褪せないどころか、現代に至るまでの映画史を語る上では必要不可欠。
映画という魔法で人々の心と歴史を動かし、新たな時代を切り開いてきたスピルバーグ。
彼の映画人生が始まった決定的な長編デビュー作から現在に至るまで、そのフィルモグラフィーを振り返ってみたら、どのような発見があるのだろうか。
本記事では、スピルバーグ作品を愛してやまない筆者が、彼の作品たちを一挙にまとめてみた。
1946年に生まれ、幼い頃から8ミリカメラで映画を撮っていたというスピルバーグの作品を一から辿り、映画の歴史を覗いてみよう。
スティーブン・スピルバーグ作品一覧
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スティーブン・スピルバーグの監督作品は以下の通り(計35作品)。
- 激突!(1971)
- 続・激突!カージャック(1973)
- ジョーズ(1975)
- 未知との遭遇(1977)
- 1941(1979)
- レイダース 失われたアーク《聖櫃》(1981)
- E.T.(1982)
- トワイライトゾーン 超次元の体験(1983)
- インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説(1984)
- カラーパープル(1985)
- 太陽の帝国(1987)
- インディ・ジョーンズ 最後の聖戦(1989)
- オールウェイズ(1989)
- フック(1991)
- ジュラシック・パーク(1993)
- シンドラーのリスト(1993)
- ロスト・ワールド ジュラシック・パーク(1997)
- アミスタッド(1997)
- プライベート・ライアン(1998)
- A.I.(2001)
- マイノリティ・リポート(2002)
- キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002)
- ターミナル(2004)
- 宇宙戦争(2005)
- ミュンヘン(2005)
- インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国(2008)
- タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密(2011)
- 戦火の馬(2011)
- リンカーン(2012)
- ブリッジ・オブ・スパイ(2015)
- BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント(2016)
- ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書(2017)
- レディ・プレイヤー1(2018)
- ウエスト・サイド・ストーリー(2021)
- フェイブルマンズ(2022)
激突!(1971)

原題(英題)
Duel
公開日
1973年1月13日
上映時間
90分
キャスト
- スティーブン・スピルバーグ(監督)
- デニス・ウィーバー
- ティム・ハーバート
- チャールズ・シール
コメント
弱冠25歳にして長編映画の監督デビューを果たしたスピルバーグ監督のサスペンススリラー。
テレビ用の映画として制作されたが、1973年には日本で劇場公開されたため、1作目に挙げさせていただいた。
狂ったトラックに追い回されるだけのシンプルな設定にもかかわらず、全く飽きずに観賞を続けられるほどおもしろい。
特に、殺人トラックの標的となる男の心理描写は巧みである。
男の怒りや恐怖、焦り、絶望などの感情が段階的に描かれ、見る者の心理状態もろとも劇中に引きずり込む。
当のトラック運転手の顔は一切見えず、無情にも物語は進んでいく。
主人公の男が正体を突き止めようと必死になる姿もまた、この映画の恐ろしさを強調する点であり、スピルバーグの手腕とも言えるのだ。
“ 見えないことで増幅される恐怖 ”は、のちのジョーズに通ずるものがある。
90分間という非常に観賞しやすい尺も魅力的だ。スピルバーグが好きな方は、ぜひ観賞してほしい。
続・激突!カージャック(1973)

原題(英題)
The Sugarland Express
公開日
1974年6月8日
キャスト
- スティーブン・スピルバーグ(監督)
- ゴールディ・ホーン
- ベン・ジョンソン
- マイケル・サックス
- ウィリアム・アザートン
コメント
前作よりも登場人物や車の数が増える本作は、警察からの逃避劇を騒々しくもスリリングに描いたニューシネマ的な映画である。
日本では「 続・激突!カージャック 」とタイトルが修正されているものの、原題は「 The Sugarland Express 」と、実は前作「 激突! 」の続きではないことがややこしい。
本作は実話に基づいて制作され、スピルバーグにとって初の劇場用映画となった。
物語は、出所を控えた男とその妻が警察車両をジャックし、養子に出されてしまった子どもを取り返しにいくというもの。
「 俺たちに明日はない 」(1967)をはじめとしたアメリカン・ニューシネマの要素を感じさせる後半には、カージャック犯である夫婦2人を村人たちが歓迎し、応援するシーンも出てくる。
思考をフル回転させて観賞する必要もなく、比較的頭を空っぽにして楽しめるのも本作の魅力だ。
序盤から中盤にかけての警察との駆け引きや、全体を通しての人間ドラマ、そして美しいラストは必見。
出演は、ゴールディ・ホーン。妻のルー・ジーン役を演じ、圧倒的な存在感を放っている。
その他、ウィリアム・アザートン、ベン・ジョンソン、マイケル・サックスらが出演。
ジョーズ(1975)

原題(英題)
Jaws
公開日
1975年12月6日(日本初公開)
上映時間
124分
キャスト
- スティーブン・スピルバーグ(監督)
- ロバート・ショウ
- ロイ・シャイダー
- リチャード・ドレイファス
- ロレイン・ゲイリー
- マーレイ・ハミルトン
- カール・ゴットリーブ
- ジェフリー・C・クレイマー
- スーザン・バックリーニ
コメント
スピルバーグの代表作の一つである本作は、もはや日本人でも知らない人はいないだろう。
28歳にしてこれほどの完成度を誇るとは、さすがの一言に尽きる。
本作は、なかなか姿を見せない人食いサメを題材に、人々の恐怖心を砂浜に打ち上げるパニック映画だ。
一人の女性がサメに食い殺されたことをきっかけに、夏の海水浴場は混乱の渦に。
次々と犠牲者が出て人々が恐怖に慄くなか、やがて3人の男が独断で人食いサメの退治に乗り出す。
パニック映画ではあるものの、ジワジワと海と心を血の色に染めていく本作は、ホラーと言っても過言ではない。
特にジョン・ウィリアムスが手掛けた最恐の音楽は、まさにトラウマ級。
今もなお多くの人の記憶にこびりついて離れないのではなかろうか。
見た者の記憶に長く残り続ける映画は、そうやすやすと見つかるものではない。
しかし、本作ほどの斬新さとスピルバーグならではの“ 見えないことで増幅される恐怖 ”を目の当たりにすれば、否が応でも記憶に残るはず。
まだ観賞していない方は、ぜひ週末の一本に選んでみてほしい。
その際は、本作の醍醐味を十二分に味わっていただくために、ぜひ大きな画面と音量で観賞していただきたい。
未知との遭遇(1977)

原題(英題)
Close Encounters of the Third Kind
公開日
1978年2月25日
上映時間
135分
キャスト
- スティーブン・スピルバーグ(監督)
- リチャード・ドレイファス
- テリー・ガー
- メリンダ・ディロン
- フランソワ・トリュフォー
- ケイリー・グッフィ
- ボブ・バラバン
- ランス・ヘンリクセン
コメント
スピルバーグの映画は、対象がなかなか見えない。
本作で描かれる宇宙人との出会いも、物語がかなり終盤に差し掛かった頃に映し出される。
しかしながら飽きずに観賞し続けられるのは、今か今かと待ち侘びるワクワク感を醸し出すのが巧みだからなのかもしれない。
物語は、不可解な現象が立て続けに起こるなか、主人公のロイが謎の飛行物体と遭遇することから始まる。
ロイは何かに取り憑かれたようになり、やがてとある山に辿り着くのであった。
「 激突! 」も「 ジョーズ 」も、スピルバーグはその姿をひた隠しにしながらストーリーを展開させている。
本作も例に漏れず、そのドキドキ感が癖になってしまう。
そして最終的に異星人と遭遇を果たす瞬間は、感動的かつ圧倒的。
心がフワッと宙に浮いてしまうかのような高揚感に包まれる。
主人公には、ヌーベルバーグを代表する名監督、フランソワ・トリュフォーが出演。
当時はSF嫌いとして知られていただけに、本作へ出演すると分かったときは驚かれた。