中学生とヤクザが歌を通して奇妙な友情を結ぶ人気漫画の映画化。
何度も大笑いしてしまう楽しい作品なのだが、いささか気になる点も…。
カラオケ行こ!

あらすじ
合唱部部長の岡聡実(おかさとみ)はヤクザの成田狂児(なりたきょうじ)に突然カラオケに誘われ、歌のレッスンを頼まれる。組のカラオケ大会で最下位になった者に待ち受ける“恐怖”を回避するため、何が何でも上達しなければならないというのだ。狂児の勝負曲はX JAPANの「紅」。聡実は、狂児に嫌々ながらも歌唱指導を行うのだが、いつしかふたりの関係には変化が・・・。聡実の運命や如何に?そして狂児は最下位を免れることができるのか?
公式サイトより引用
公開日
2024年1月12日
上映時間
107分
予告編
キャスト
- 山下敦弘(監督)
- 綾野剛
- 齋藤潤
- 芳根京子
- 橋本じゅん
- やべきょうすけ
- 吉永秀平
- チャンス大城
- RED RICE
- 八木美樹
- 後聖人
- 井澤徹
- 岡部ひろき
- 米村亮太朗
- 坂井真紀
- 宮崎吐夢
- ヒコロヒー
- 加藤雅也
- 北村一輝
公式サイト
配信入りの異例な早さ

非常に評判がよかったので見ようと思いつつ、見損ねていた作品。
それがNetflixに入ったので、配信開始の初日に見た。
これは1ユーザーとしては、もちろんありがたいことである。
しかし1月12日公開の作品が4月12日にNetflixに入るとは、またどういう事情なのだろうか。
てっきり製作にNetflixが絡んでいるのかと思いきや、そんな形跡もない。
ここまで配信入りが早いと、劇場に見に行った人はバカにされたような気分になるのでは。
今回は個人的に助かったが、それでもこの傾向は映画興行の首を絞めるようで、素直には喜べない。
山下敦弘の作家性と商業性の見事なバランス
なるほど評判になるのも当然の楽しい映画だ。
配信の画面を見ながら、これほど声を出して大笑いしたこともあまりない。
映画館が笑いで包まれている光景が容易に想像でき、一部の劇場でロングランしていた理由も分かるというもの。
この作品なら、発声OKで突っ込みを入れながら見る上映も楽しいのでは。
全編のキーとなる歌がX JAPANの「 紅 」
思いきり笑いのネタになり、それが反転して泣かせのネタにもなる。
この構成はお見事で、あの荒々しい歌に秘められた情感が次第に伝わってくるところも憎い。
どちらかといえば地味で作家性の強い山下敦弘が、これほど優れた娯楽作品を撮ることができたのも驚きだ。
とはいえ、微妙な体温の低さは相変わらずで、分かりやすいクライマックスをスルッとかわす感覚や学校シーンの描写など、
やはり「 リンダ リンダ リンダ 」を撮った監督だと納得できる。
全然熱血ではない青春映画を撮らせると、この人は本当にいい味を出す。
だがどうしても気になることが…
そんな楽しい映画なのだが、どうも両手を挙げて絶賛できない、引っかかる部分がある。
1つは、聡実(齋藤潤)が狂児(綾野剛)と友情を結んでいく展開があまり上手くないこと。
狂児が聡実に積極的にアプローチするのは利害関係から見ても理解できる。
しかし、聡実の方から狂児に「 カラオケ行こ! 」と声を掛けることになる部分は、あまり納得できなかった。
そうなる展開は分かっていたので、聡実の心がどういうきっかけでどんな風に変わるのかに注目していたのだが、「 はて? 」という感じ。
いくら優しいとはいえ、相手はヤクザなのだから。
聡実は変声期が近付いていてソプラノがうまく歌えないかも…という不安を抱えているが、それと狂児との友情は必ずしも結びつくものではない。
聡実が狂児に心を許す展開を、もう少し説得力のある形で描いてほしかった。
もう1つは、ヤクザをかわいく描きすぎではないか?という点だ。
確かに怖い部分も描かれてはいるが、狂児のキャラクターはさすがにいい人すぎでは。
中学生が現役のヤクザと友だち付き合いを続けるのは、正直眉をひそめるものがある。
あの2人が互いの心の欠落を埋めるような関係であれば別だが、上に述べたようにその部分の説得力が弱いので「 いくらフィクションとはいえ、これは… 」という思いが残ってしまう。
せやけど、この作品に関してはな、大阪が舞台やっていう必然性はあんまり感じんかったわ。たぶん原作がそうやから、そのまんま映画にしたんやろな。
それはええねん。でもな、エンドクレジット見たら、ロケ地が千葉や横浜がメインで、どうも大阪でロケしてへんみたいやねん。
映画やから、実際のロケ地と劇中の舞台がちゃうのは珍しないけど、セリフが全部大阪弁で、大阪が舞台やっていうガッツリした設定なのに、全然大阪で撮影してへんのは、なんか納得いかんかったわ。
*最後の段落は「 この文章を大阪弁に翻訳して 」とChatGPTにお願いして出てきたものである(笑)

文・ライター:ぼのぼの