平原綾香さんが音楽を通じて社会に希望を灯す活動の象徴、「 平原綾香 Jupiter 基金 」が2025年で設立10周年を迎えました。
2015年の設立以来、基金は毎年チャリティコンサートを開催し、子どもたちを支援する活動を続けてきました。
その10年の歩みは、音楽の力と人々の善意が重なり合い、未来への希望を紡いできた壮大な物語です。
記念すべき10周年の幕開けは東京から

10周年記念の幕開けとなったのは、2025年4月30日に東京で開催された「 第9回 平原綾香 Jupiter 基金 My Best Friends Concert〜顔晴れこどもたち〜with Orchestra 」。
このコンサートは、子どもたちの未来を応援し、社会貢献活動を支援するためのチャリティイベントとして毎年多くの感動を生み出してきました。
当日は、白い衣装に身を包んだ平原さんが登場し、照明によって表情を変える華やかな衣装と、今年でデビュー22周年を迎えるベテランならではの圧倒的な歌唱力で観客を魅了しました。
会場には音楽への深い愛情を持つ観客が集まり、平原さんの歌声とオーケストラの壮麗な響きが一体となって、心を揺さぶる特別な一夜となりました。
指揮はNHK連続テレビ小説「 おひさま 」のテーマ音楽作曲者としても知られる渡辺俊幸さんが担当。
演奏は平原さんの母校・洗足学園の「 洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団 」。
さらに、長年信頼を寄せるバンドメンバーの則竹裕之さん(ドラム)、大貫祐一郎さん(ピアノ)、伊藤ハルトシさん(ギター&チェロ)も加わり、豪華なサウンドスケープが広がりました。
コンサートの冒頭から、平原さんの伸びやかな歌声とオーケストラのハーモニーが会場を包み込み、名曲からチャリティのために選ばれた特別な楽曲まで、一曲ごとに深い感情とメッセージが観客の心に直接語りかけます。
会場は感動の空気に満ち、音楽が持つ力を改めて実感させられる時間となりました。
寄付先は「 ダイアログ・イン・ザ・ダーク 」
今回、寄付先に選ばれたのは「 ダイアログ・イン・ザ・ダーク 」。
これは完全な暗闇の中で視覚以外の感覚を研ぎ澄ませ、コミュニケーションや体験を行うユニークなエンターテインメントであり教育プログラムです。
2025年8月には戦後80年を記念し、平和について深く考える特別プログラム「 ピース・イン・ザ・ダーク 」が開催予定。
集められた基金は、この価値ある体験を多くの子どもたちに届けるために活用されます。
なぜ平原さんがこの活動を寄付先に選んだのか――そこには深い個人的な体験がありました。
最愛の父を亡くした1年後、友人に誘われてダイアログ・イン・ザ・ダークを体験した平原さんは、暗闇の中で父の存在を近くに感じ、心が「 ふわっと開く 」不思議な感覚を味わったと語ります。
幼い頃から暗闇が怖かった平原さんですが、見える景色が同じ暗闇の中で恐怖心が薄れ、新たな自分に出会えたと言います。
また、ダイアログ・イン・ザ・ダークがエンターテインメントだけでなく学校教育にも力を入れていることに強く共感し、寄付先に決めた理由を丁寧に説明しました。
ステージには、ダイアログ・イン・ザ・ダークを運営する一般社団法人ダイアローグ ジャパン ソサエティの代表・志村季世恵さん、アテンドのミキティさん、手話パフォーマーのRIMIさんも登壇。
志村代表は、視覚や聴覚に障害を持つ方や高齢者が豊かな感性と知恵でエンターテインメントを創出していることを紹介し、日本の子どもたちが世界で最も孤独を感じているという現状に触れ、ダイアログ・イン・ザ・ダークでの出会いが子どもたちに勇気を与えていると熱く語りました。
ミキティさんはプログラム体験者の様子を紹介し、「 一人でも多くの子どもたちが元気に、自由になれるように活動を続けたい 」と意気込みを述べました。
RIMIさんは「 100%のエネルギーは平等 」と、全ての人が持つ可能性と幸せな社会への願いを共有しました。
コンサートでは、鳥取県の「 あいサポート運動 」テーマソング「 虹の向こうへ 」も披露。
大人になると夢が叶わないのではと不安になることもあるが、「 あいサポート運動 」で出会った人々の姿に勇気をもらったと平原さんは語りました。
父親を亡くしてからサックスを吹くことがつらくなっていたものの、あえて演奏し、歌とともにサックスの音色を会場に響かせたことも印象的でした。
暗闇の中で感じる音楽の力
第2部は照明を落とし、ダイアログ・イン・ザ・ダークの世界を再現したかのような暗闇の中でスタート。
視覚情報が遮断された空間で聴く音楽は新鮮で、観客は音に集中し、音楽の奥深さと力を感じていました。
MCでは、指揮の渡辺俊幸さんが多くの観客がコンサートに来てくれることへの感謝を伝え、平原さんも「 お客様の優しさや夢が私に降ってくるよう 」と感謝を述べました。
「 これからも活動を続けていけるよう頑張らないと 」と、チャリティ活動への強い意気込みも語りました。
そして、渡辺さん発案の「 サウンド・オブ・ミュージック・メドレー 」も披露され、平原さんは多彩なキャラクターの楽曲を見事に歌いこなし、ミュージカル女優としての表現力も発揮。
代表曲「 Jupiter 」で感動的に締めくくられ、東京公演は大盛況のうちに幕を閉じました。
初の九州公演が決定!

この感動とエネルギーは、いよいよ初の九州へと受け継がれます。
10周年記念の第10回公演は、2025年6月28日(土)福岡県久留米シティプラザ ザ・グランドホールで開催。
出演は平原綾香さん、指揮は渡辺俊幸さん、演奏は九州交響楽団。
則竹裕之さん(ドラム)、大貫祐一郎さん(ピアノ)、伊藤ハルトシさん(ギター&チェロ)も出演し、東京公演とは異なるオーケストラとの新たな響きが期待されます。
音楽の力とチャリティへの想いが結びつくJupiter 基金コンサート。
設立10周年を記念する特別な年、初の九州公演も、きっと忘れられない感動と希望に満ちた体験となるはずです。
会場で平原綾香さんの歌声と熱い想いを、ぜひ直接感じてみてください。

取材・文:栗秋美穂
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