「 屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ 」考察レビュー、ドイツに実在したシリアルキラーのお話

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今回は、実在した殺人鬼を描いた「 フリッツ・ホンカ 」を紹介します。

超リアルに最底辺の人々を描いた作品です。

今作には、「 ジョーカー 」のようなスタイリッシュさも、「 パラサイト 」のような家族の絆もありません。

1970年代に実在した連続殺人鬼、フリッツ・ホンカがモチーフ。

ここ数年の底辺層を取り扱った作品のなかでも、とにかく救いがなく、惨めに主人公を描いています。

極端な猫背、額にはりついた髪、分厚い眼鏡に斜視、曲がった鼻

フリッツ・ホンカは見るからにみすぼらしく、汚らしい印象の40歳の中年男性です。

そんな彼は行きつけの場末のバー「 The Golden Glove 」で、孤独な女性を引っかけては、殺人を繰り返します。

フリッツ・ホンカが手にかけるのは、娼婦や孤独で醜い中年女性ばかりです。

弱者の彼が、さらに弱者である女性たちを虐げる、おぞましい地獄。

私たちが目を向けていないだけで、実はその辺で起きているのかもしれない。

そんなことを考えさせられました。

目次

屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ

©︎屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ

公開日

2020年2月14日

上映時間

110

キャスト

  • ファティ・アキン(監督)
  • ヨナス・ダスラー
  • マルガレーテ・ティーゼル
  • ハーク・ボーム

予告編

公式サイト

フリッツ・ホンカ

感想レビュー

©︎屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ

好きだった点

連続殺人鬼フリッツ・ホンカの描き方です。

生理的に嫌悪感を抱かせるような外見。

性欲のおもむくままに女性を誘い、気に食わないことがあれば暴言を吐き、暴力をふるい、殺害し、死体をバラバラにする非道さ。

本当に最低最悪で、悪であるからこその魅力や華は皆無。

特に、女性を物のように扱うシーンの数々は、観ていて身の毛もよだつ描写の連続です。

ただ、それがものすごくリアルなんです。

何人も人を殺したシリアルキラーというと、人は一種のカリスマ性を求めがちです。

でも、フリッツ・ホンカは違います。

醜く、金もなく、性格に難がある、ダメな人間がタガを外してしまっただけ。

だからこそ、「 自分の身の回りで起きているかも 」そんな恐怖を抱かせます。

彼は性欲に突き動かされて犯行を重ねるのですが、その相手が彼好みの金髪美人ではなく、ことごとく、太ってたり、年齢がいっていたりするのがまたなんとも言えません

犯罪に手を染めても、欲しいものは手に入らない。

とにかく、哀れでした。

そんなフィリッツ・ホンカを生々しく演じるのが、23歳(!)のヨナス・ダスラー。

「 僕たちは希望という名の列車に乗った 」で話題になった新星イケメン俳優です。

年齢と外見が違いすぎるため、ミスキャストでは?と思いきや、これがハマリ役!

フィリッツ・ホンカの自己中心性や幼さ、憶病さが、ヨナス・ダスラーの若さが加わることによって、リアルに表現されています。

途中で何度か、フリッツ・ホンカが、人への親愛の情を見せたり、はしゃいだりするシーンがあるのですが、そういったシーンでにじみ出る、なんともいえない愛嬌も素晴らしかったです。

3時間に及ぶ特殊メイクにより、外見も実際のフリッツ・ホンカにかなり近くてびっくりしました。

また、犯行現場でもあるフリッツ・ホンカの部屋のセットもすごい。

壁中にポルノ写真が貼られ、散らかった屋根裏部屋は、彼の内面をそのまま表しているかのよう。

死体を室内に隠しているのですが、その臭気すら漂ってきそうなほどリアルです。

嫌いだった点

残念だったのが、フリッツ・ホンカが脱ぐシーン。

身体のラインや肌がきれいすぎる気が

あんな不摂生な生活をしている中年男なら、もっと残念な身体のはず!たびたび脱ぐので気になってしまいました。

顔のメイクはバッチリだっただけに、身体にももっと気を配って欲しかったです。

見どころ

フリッツ・ホンカと関わる女性たちの描写は、大きな見どころの一つ。

フリッツ・ホンカは、酒をえさにバーで手当たり次第に女性に声をかけるのですが、たいていの女性は見向きもしません。

なんなら罵声も浴びせます。

ついていくのは、若くなく、見た目も良くない孤独な女性ばかりです。

そして、彼女たちは明らかに彼を無害なしょぼい男となめています。

お互い、「 もっとましな相手がいいのに 」と思いながら性交するシーンは、醜悪で滑稽で、やるせない気持ちになります。

そして、彼女たちの言動のはしばしから、こんな人生は望んでいなかったという想いが垣間見えます。

そして、フリッツ・ホンカも同じように感じているはずです。

望まない人生を送り、それを変えることができず、さらに転がり落ちていく彼らの姿は、この作品の大きな見どころだと思います。

実在した殺人鬼を描いた作品

下記は、実在した殺人鬼をモデルにした作品です。(暇な時にでも見てください)

▶︎ テッド・バンディ(洋画)

▶︎ チェイサー(韓国映画)

▶︎ 殺人の追憶(韓国映画)

▶︎ カエル少年失踪事件(韓国映画)

考察・疑問点

©︎屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ

フリッツ・ホンカが捕まらなかった理由

フリッツ・ホンカの犯行は、驚くほどずさんなのですが、なぜ捕まらずに犯行を続けられたのでしょうか。

その理由としては、被害者である女性たちも、犯人であるフリッツ・ホンカ自身も、他人にかえりみられることのない人間だったからというのが考えられます。

物語の舞台である1970年代のドイツは、好景気に沸いていたそう。

その影で這うように生きていたフリッツ・ホンカと女性たちを思うと、やるせなくなります。

まとめ

©︎屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ

冒頭5分の残虐なシーンからラストまで、とにかくメンタルを削ってきます。

全ての人におすすめできる作品ではありませんが、現実をガツンと突きつけてくる良作かと。

容赦のない地獄を見たい人は是非チャレンジを。

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