家族を想うとき

あらすじ
イギリスのニューカッスルで介護福祉士の妻アビーと16歳の息子セブ、12歳の娘ライザ・ジェーンと家族4人で暮らすリッキー。悲願のマイホームを手に入れるため、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立することを決意する。そのためにはトラックを自前で用意する必要があり、アビーを説得して車を売り資金を工面する。
公開日
2019年12月13日
上映時間
100分
キャスト
- ケン・ローチ(監督)
- クリス・ヒッチェンズ
- デビー・ハニーウッド
- リス・ストーン
- ケイティ・プロクター
予告編
考察・感想レビュー

好きだった点
イギリス、ニューカッスル。
両親と息子、娘の四人家族。
物語は、父親がフランチャイズの宅配ドライバーとして独立するところから始まります。
マイホームの購入を夢見る父親は、妻が仕事で使っていた車を売却し、さらに借金もして大型トラックを購入。
夢を抱いて始めた仕事ですが、朝から晩まで運転して配送の毎日、配達先が不在なら不在配達票を書き、また運転して届けての連続。
トイレに行く時間もありません。
ケガや病気、家庭の事情で休めばペナルティで借金がさらに増える。
働けば働くほど、家族の溝も広がり、徐々に家族が崩壊に向かっていく。
リアルな現代社会の闇、人々が目を背けたくなる部分を描くのが上手い!上手すぎます。
前作の「 わたしは、ダニエルブレイク 」もそうでしたが、今作は家族それぞれの葛藤も描かれていて、より共感性が増した気がしますね。
見る人の立場によって、胸に迫るものも変わってくるのではないでしょうか。
ラストカットからのエンドロールも秀逸。
あの幕切れはずるい。
嫌いだった点
主人公の息子の中二病感がどうしても好きになれなかった。
いくら思春期とはいえ、もう少し大人になれないの?
父親も大人げないし、2人の喧嘩シーンには毎度イライラしてしまいました。
チンピラに腕を折られた父親が無理して仕事に行くのを息子が必死で止めたりと、後半は胸アツなシーンもあったので良しとします。
見どころ
それぞれが家族のことを想っているのに、それが噛み合わない。
徐々に歯車が狂い、家族が崩壊してしまうやるせなさ。
本当に見入ってしまいます。
考察・疑問点

今作は、父親の労働環境の劣悪さを中心に描きます。
介護福祉士の妻が出勤手当もつかないのに「 彼女がきっと困っているから 」と、夜中におばあちゃんの家に向かうシーンが出てきます。
この場面があることで、より「 雇う側 」の冷徹さが際立った気がします。
結局、割をくうのはこの妻みたいな心優しい人たちなんだよなあと思いました。
映画というよりは、ドキュメンタリーを見ている感覚でした。
メッセージ性は強いです。
介護保険内では賄えない日常の些細な不便を育成されたアシスタメンバーが解決し、便利さと生活の豊かさを提供していく、介護保険外サービス。アシスタ
まとめ
邦題は「 家族を想うとき 」ですが、原題は「 Sorry We Missed You 」
これ、配達来たけど不在でしたよと知らせるワードなんですよね。
主人公が配達先で不在票を取り出して記入しているときに、この文言が目に入って、あ、これかってなりました。
ラストカットからのエンドロールでこの文言が胸に迫ってきます。
邦題もいいけれど、ありきたりすぎるので、原題の方が個人的には好きです。
世界には、こんな人たちや家族が溢れているのだろうかと思うと切なくなります。
こういう社会の構造は変わらないのでしょう。
こういう人々の生き様を描くことが、ケン・ローチ監督のライフワークになっているんだろうなと思いました。
決して心あたたまる物語ではないけれど、
私たちが知らない世界の一部分を切り取って誠実に伝えてくれる。
次の作品も楽しみです。
仕事が不規則で、ポストに不在配達票が入っていることが多い自分は、今作を見てかなり反省しました。
新築1KDKペット可なのに宅配ボックスだけがないんですよね(謎)
配達員さんごめんなさい。
宅配ボックスのあるアパート探します。