ファイト・クラブ(1999)

原題(英題)
Fight Club
公開日
1999年12月11日
上映時間
139分
キャスト
- ブラッド・ピット
- エドワード・ノートン
- ヘレナ・ボナム・カーター
- ミート・ローフ
- ジャレッド・レト
- デビッド・アンドリュース
- ザック・グルニエ
コメント
フィンチャー監督の4作目となる本作は、映画界に強烈な拳を叩きつけた作品となる。
「 セブン 」から2度目のタッグとなるブラッド・ピットを主演に迎え、暴力的な映画を青春ともサスペンスとも、スリラーともつかない独特な作品に仕上げた。
物語の構成はもちろんのこと、作中の登場人物であるタイラー(ブラッド・ピット)が投げかける消費社会への問いかけは、今もなお現代人の心に響くだろう。
公開当時の興行収入は控えめな様子ではあったものの、ボディーブローのようにじわじわとその評価を確実なものとしていった作品としても興味深い。
実際、イギリスの権威ある映画雑誌「 エンパイア 」で行われた2008年の「 史上最高の映画 」では10位にランクインしているほどだ。
月日が経った今だからこそ本作の意義が明白となり、現代において影響力が増していることを示唆していると言えよう。
当然ながら、本作を見た瞬間の“ やられた ”という感覚は、顔面にアッパーを喰らったときのような衝撃があるのだが、倒れたあとに残る満足感が痛みを通り越して快感へと変わってゆく。
ストーリーはあらすじ以上のことは言いたくないので、ぜひ前知識のない状態で本作を観賞してほしい。
パニック・ルーム(2002)

原題(英題)
Panic Room
公開日
2002年5月18日
上映時間
113分
キャスト
- ジョディ・フォスター
- フォレスト・ウィテカー
- ドワイト・ヨーカム
- ジャレッド・レト
- クリステン・スチュワート
- パトリック・ボーショー
- アン・マグナソン
- イアン・ブキャナン
- アンドリュー・ケビン・ウォーカー
- ポール・シュルツ
コメント
5作目の本作は、一晩の間に一つの部屋で繰り広げられるサスペンス劇を、緊張感たっぷりに描いた映画だ。
主演にジョディ・フォスターを迎え、限られた空間の中で見事な演技を披露した。
緊迫した映像と主人公たちの緊張感が眼前に迫り来る様は、さすがフィンチャー作品とも言うべきだろうか、恐ろしい。
しかし、本作の撮影には、一筋縄ではいかないトラブルが続いた。
まず、主演のジョディ・フォスターの前に、ニコール・キッドマンが起用されていたのだが、彼女は前の撮影で膝を痛めており、ドクターストップの末に降板。
400万ドルの大金を叩いた脚本をゴミ箱に捨てることはできず、もともとフィンチャー映画に出演を希望していたジョディ・フォスターを迎えることになった。
だが、続くジョディ・フォスターにも一つの懸念点が浮かび上がった。
それは、彼女のお腹に赤ちゃんがいたこと。
フィンチャーは完璧主義で、テイク数も並じゃない。
悠長に構えていたら、ジョディのお腹は膨らんでいくため、そそくさと撮影を行わなければならなかった。
限られた時間の中で極上のパニック映画を作り出したフィンチャーの手腕が再確認できる作品だ。
ゾディアック(2007)

原題(英題)
Zodiac
公開日
2007年6月16日
上映時間
157分
キャスト
- ジェイク・ギレンホール
- マーク・ラファロ
- ロバート・ダウニー・Jr.
- アンソニー・エドワーズ
- ブライアン・コックス
- イライアス・コティーズ
- ドナル・ローグ
- ジョン・キャロル・リンチ
- ダーモット・マローニー
- クロエ・セビニー
コメント
6作目のフィンチャー作品は、実在した連続殺人事件をリアルに描き出した本格スリラー。
出演は、ジェイク・ギレンホールとマーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr.ら、今や知る人ぞ知る演技派俳優たちである。
実在の“ ゾディアック事件 ”を題材にし、惨たらしい犯罪の過程と、事件を追う刑事やマスコミの狂っていく人生を丁寧に描いた。
フィンチャー監督は一からゾディアック事件について調べ上げ、新たな証拠を見つけるまでに至るほど全容を追求した。
そして制作された本作は、まさに地に足のついた真実。
演者による「 うまい 」としか言いようのない演技力が、観客を恐怖の淵へと誘い、震撼させる。
本作の題材であるゾディアック事件は、現在も未解決のままなのがやり切れない。
ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008)

原題(英題)
The Curious Case of Benjamin Button
公開日
2009年2月7日
上映時間
167分
キャスト
- ブラッド・ピット
- ケイト・ブランシェット
- タラジ・P・ヘンソン
- ジュリア・オーモンド
- ジェイソン・フレミング
- イライアス・コティーズ
- ティルダ・スウィントン
- ジャレッド・ハリス
- エル・ファニング
- マハーシャラルハズバズ・アリ
コメント
フィンチャー監督の7作目は、F・スコット・キー・フィッツジェラルドの小説をもとに制作された世にも奇妙な物語。
企画の発案から約20年の時を経て、結果的にフィンチャー監督とブラッド・ピット主演で映画化されたが、監督と主演の候補にスティーヴン・スピルバーグとトム・クルーズが挙がったこともある。
第81回アカデミー賞では、作品賞を含む13部門にノミネートされ、美術賞と視覚効果賞、メイクアップ賞に輝いた珠玉の一作。
物語は、年をとるごとに若返っていく奇妙な男の一生を描いたファンタジー映画だが、よくよく見ると実に悲しい物語であることが分かる。
何より、周囲が年老いていくとともに若返るベンジャミンは、大切な人とも同じ時を刻めなくなるのだから切ない。
一方で、その悲しさが“ 愛 ”に変わる瞬間もある。
インタビューでブラッド・ピットは「 僕にはあとどのくらいの時間が残されているのかを意識するようになった 」と語っているように、人間の一生にある素晴らしい瞬間を逃してはならないことも感じる。
超絶技巧の特殊メイクとブラッド・ピットの繊細な演技、フィンチャー監督の華麗な演出が光るダイヤモンドのような映画だ。