文・ライター:@小松糸
家族とともに引っ越しをしたロールは、少女リザをはじめとする新しい友人たちに「 ミカエル 」と偽名を使い、男の子だと思わせることに成功する。
親しくなっていく中で、リザがミカエルに好意を抱き始めていることに気づく。
葛藤しつつも距離を縮めていくが…。
トムボーイ
公開日
2021年9月17日
原題
Tomboy
上映時間
82分
キャスト
- ゾエ・エラン
- ジャンヌ・ディソン
- マロン・レバナ
予告編
公式サイト
感想レビュー
とても好きな世界観だった。
子どもたちが主人公ってワクワクする。
フランス映画ならではのおしゃれな雰囲気(特に家)も良かった。
ロール(ミカエル)役の女の子、とても中世的な顔立ちで惹かれる。
リヴァー・フェニックスを彷彿とさせる美顔だった。
いつもタンクトップやTシャツを着ていた彼女が、女の子の服を着たとき、あまり違和感を感じなかったことに驚いた。
度々バレそうになる瞬間があるので、何度もヒヤヒヤしてしまった。
そんな嘘なんてすぐにバレてしまうと分かっているのに、なぜかロールを応援してしまう。
子どもの無邪気さ、それが招く残酷さ。
まだ12歳弱の子どもが考えることなんて、たかが知れてしまうのだ。
小学6年生の子どもなんて、まだ自分が何者なのか、そのアイデンティティや本心すらも知らないま過ごしている子も少なくないだろう。
自分の内側にある「何か」に触れたとき、初めて自分が何者なのか気づき始めるものだと思う。
ロールが男の子だと偽っていたのは、ただ単純に嘘をつきたかっただけなのか、もしくは本当に心は男の子なのか。
嘘ならばそんなことを言った理由すら、鑑賞したお客さんに想像させる。
この作品の奥行きは、受け取り側によって作り上げられていると感じた。
これは現在までにある数々のLGBTの作品においても言えることだが、「 女の子だから 」とか「 男の子だから 」とか考えず、「 好きになった人がたまたま同性だった 」
と考えれないものなのだろうか。
リザはきっと、ロールが女の子として出会ったとしても、並々ならぬ感情を抱いたと思う。
実は女の子だったと明かされても、リザにとってロールは特別な存在として、今後も2人は続いていくと思った。
お母さんがとった行動が正しいかどうか、今のわたしには分からない。
でも、ロールのためを思って実行したというのは確かだ。
この映画は82分で終わり、またここから始まる。
まとめ
2011年の作品が10年越しに日本で公開し、新宿のシネマカリテ1館のみでの上映だった。
とても素敵な作品だったし、お客さんも多く入っていたので、今後上映館数がもっと増えてほしいと切に願っている。