
未曽有のパンデミックで人々の接触が厳しく禁じられた近未来を描くSFスリラー。
察しの通り、今作はCOVID-19のパンデミックに着想して作られた作品だ。
新型コロナにより私たちの生活はまさに一変してきたわけだが、そんななか今作が示す希望とはいったい何なのか――しかと見届けてきた。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
ソングバード


あらすじ
公開日
2022年10月7日
原題
Songbird
上映時間
84分
キャスト
- アダム・メイソン(監督)
- K・J・アパ
- ソフィア・カーソン
- クレイグ・ロビンソン
- ブラッドリー・ウィットフォード
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー


今作は2020年3月に脚本が書き上げられ、同年7月、ロックダウン下のLAを舞台にドローンなどを使って撮影されている。
新型コロナウイルス最初の発症が2019年12月。
その後数か月で世界的なパンデミックに発展したことを考えると、この厳しい状況を予見していたような、時勢への驚異的な感度と速度で生み出された作品と言える。
人の気配が消えた街並みの緊迫感と寂しさはロックダウン下ならではで、主人公のニコを仲間が遠隔で助けていくシーンも、集まることが難しいなかで今作を作り上げた製作陣の姿と重なり感慨深さがある。
とはいえ肝心のストーリーはお粗末なのが正直なところ。
まず「 免疫者 」という抗体を持つ人間の社会での立ち位置が不明瞭だ。
唯一街を出歩ける存在なのだが、特権性は薄く、優位性が不明。抗体を持っているなら実験体にでもされそうなものだが、そういう描写も存在しなかった。
加えて、物語の鍵になる免疫者のパス(偽造パス)もマクガフィンとしてあまりに頼りない。
(偽造)パスで外出はできても、高い致死性のウイルスに対する感染対策にはならないのでは……と、登場人物の(偽造)パスへの執着に疑問を感じてしまう。
自由を求めての行動だろうが、破滅(死)とほぼイコールな自由を欲するほど追い詰められているとは感じられない。
ただ伝えたいテーマは明瞭だった。
ニコはサラへの愛を原動力に命懸けで街を駆け回り、サラもそれに応えるように運命に抗う。
娘を想うパイパーはニコの愛に共鳴してある決断を下し、ドーザーは自分を勇気づけてくれたメイへの恋慕から行動を起こす。
自由を奪われた先の見えない世界のなかでも、愛は、誰かを想う気持ちは未来を生きていく私たちの希望なのだと、そんな強いメッセージが感じられた。
まとめ


〝最後に愛は勝つ〟を地でいくストーリーは少し歯がゆいが、コロナの不安が続く世情だからこそ、そんな希望が差し込む物語があってもいいのだろう。
また様々な制限下でも行動し、出来はともかく今作を世に送り出したクリエイターの不屈の精神は称賛されるべきであり、これこそコロナ下の世界で今作に見いだせる希望だとも思う。