
デヴィッド・クローネンバーグ監督の子息ブランドン・クローネンバーグによるSFスリラー。
熱狂的な信者のいるクローネンバーグ作品に名を連ねるだろう今作。
やはり残酷な描写、現実が融解していくようなサイコな映像美は流石と言えます。
重苦しい狂気に満ちた展開とセンセーショナルかつ意外な結末は、海外でも問題作として注目を浴びたとか。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
ポゼッサー


公開日
2022年3月4日
原題
Possessor
上映時間
103分
キャスト
- ブランドン・クローネンバーグ(監督)
- アンドレア・ライズボロー
- クリストファー・アボット
- ロッシフ・サザーランド
- タペンス・ミドルトン
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー


最も注目すべきは、徹底してアナログな手段で撮影されていることでしょう。(CGなどが一切使われておらず)
融解していく現実、崩壊していく人格。
監督の脳内イメージが凄まじい不気味さを持ち、生々しく表現されていたように思います。
特にポスターにもなっているマスクを剥ぎ取り被るシーンは、鳥肌を禁じ得ないオドロオドロしい出来栄えでした。
演出や映像は流石の一言ですが、ストーリー展開はイマイチと言わざるを得ません。
というのも、殺し屋の主人公(タシャ)が所属する組織の立ち位置や世界設定など、鑑賞者に提示されない部分があまりにも多いためです。
彼女はなぜ殺し屋であるのか?
一体何のために殺しが行われているのか?
そのあたりの背景が曖昧にされたまま物語が展開していくので、私たちの感情はどこか置いてけぼりにされてしまいます。
耽美的な映像に酔いしれるだけでは物語として不十分。
とまで言い切らずとも、鑑賞者が消化不良に陥るなんて事態も少なくないはずです。
映像が生み出す狂気的な不気味さが非常に鋭い切れ味だった為に、よりストーリーやキャラクターにある粗が惜しいと感じさせられました。
まとめ
これは余談でもありますが、SF装置(他人の意識に侵入するためのヘッドギア装置)などがややチープに感じられてしまいました。
CG無しなので限界はあるのでしょうが、それでもSF装置などは観る者の心をくすぐり、ワクワクさせるようなものであってほしいと感じます。
科学技術の発展によって現実が限りなくSFに近づいている今、実写によるSFは、このあたりの想像力を一段階進化させないといけないのかもしれません。
脚本や舞台装置などを気にすればキリがありませんが、映像という意味では興味深い作品でした。
物語としては、もう一歩というのが正直な感想でした。