
全体的にただよう奇妙で洒脱な雰囲気。
哀しみにもユーモアにも変化する深い表現が印象的な
ユニークな意欲作。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
林檎とポラロイド


公開日
2022年3月11日
原題
Mila
上映時間
90分
キャスト
- クリストス・ニク(監督)
- アリス・セルベタリス
- ソフィア・ゲオルゴバシリ
- アナ・カレジドゥ
- アルジョリス・バキルティス
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
気が付いたら記憶をなくしていたけれど、なんとなくその片鱗は自分の中に残っていて、新たな人生に進もうとするけれど、
なんだかどこかで服の裾を引っ張られているような感覚、とでも言うのでしょうか。
主人公が記憶を回復するプログラムを愚直にこなす様子は、どこかいびつで、でも間違ってはいなくて、奇妙でリアルで説得力があります。
決して分かりやすいエンターテイメントではありませんが、哀しみを受け止められない主人公の動揺や、そこから抜け出す希望、果ての絶望など。
言葉や表情少なくして物語る役者や製作サイドの技量を感じます。
映像自体の色味やインテリア、登場人物のファッションなどに、シンプルながら趣味の良さが溢れていて好感を持ちました。
哀しい、寂しい記憶だけを無くすことができたら、どんなにか楽でしょう。
しかし、この主人公のように、そんな都合の良いことはできなくて、結局はすべてを自分で受け止めざるを得ない。
そこから進んでいくしかないのだ、ということを暗に物語る作品だと感じます。
しかもそんな苦行を経ても、ハッピーエンドにつながる保証などない。
すべては哀しみとユーモアの中で消化していくしかない、だってそれが生きることだから。
とでも言われているようです。
それはひねくれているようでもあり、正直でもあり、あきらめでもあり、だからこそ歩みを止めないタフさもあるのではないでしょうか。
思ったよりも救いのないラストではありますが、彼はきっと、フラフラしながらも前を向き、林檎をかじりながら、新たな日常に足を踏み出していく気がします。
まとめ


デビュー間もないながら、大女優ケイト・ブランシェットの目に留まり、すでにハリウッド進出も決定しているギリシャの若き才能、クリストス・ニク監督の独特な感情表現と映像美に注目です。
ギリシャ語という聞きなれない言葉もまた、映画の独特さに拍車をかけているのですが、描かれる人の心の揺れはとても普遍的。
異文化体験をしつつ、国は違っても同じ人間なのだな、と思い知る機会でもありました。