巨匠デビッド・クローネンバーグ監督の息子であるブランドン・クローネンバーグ監督の最新作であり、R18指定の問題作が満を持して日本に上陸。
本作は美しいインフィニティ・プールを舞台に、クローンの要素を取り込んだり不気味なマスクなど、色々と目を惹かれる要素が多いですが、ある意味一人の鬱屈した作家のフィクションに近いドキュメンタリーを鑑賞している様にも錯覚しました。
スウェーデンの俳優一家であるスカルスガルド家の長男で、父は今年公開されているDUNE2でハルコンネン男爵を演じるステラン・スカルスガルドを擁して海外でスマッシュヒットした本作。
そんな本作の見所について迫っていきたいと思います。
インフィニティ・プール
あらすじ
前作を書いてから長い間スランプに陥っている売れない作家の主人公は、裕福な金持ちの妻と新しいアイディアのインスピレーションを得るべくリゾート地であるインフィニティ・プールへ旅行に出かける。そこで出会い仲良くなった主人公は、ルールを破って運悪く交通事故を起こしてしまい本来死刑になるはずが、お金を払い自分のクローンをつくることで死刑を免れ何とか難を乗り切るが、それが本当の悪夢の始まりになることとなる。
公式サイトより
原題
Infinity Pool
公開日
2024年4月5日
上映時間
118分
予告編
キャスト
- ブランドン・クローネンバーグ(監督)
- アレクサンダー・スカルスガルド
- ミア・ゴス
- クレオパトラ・コールマン
- トーマス・クレッチマン
- ジャリル・レスペール
- アマンダ・ブルジェル
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- 総合評価
考察レビュー
本作の見所は何といっても、主演のキャスト陣と斬新な映像です。
主演をはるアレクサンダー・スカルスガルドは品のある端正な顔立ちで、今回作品の舞台でもあるインフィニティ・プールが映えるアレクサンダーですが、
今作では序盤から自信を失くした売れない作家を演じ、自尊心を更に傷つけられ、一気に底まで堕ちていき
時にあられもない、羞恥な姿も堂々と演じきっているその役者魂には感嘆とします。
ノースマンで屈強な復讐心に燃えていたアレクサンダーとは対照的すぎて驚きますが、それだけ役に入り切って
いるので、ファンからすると複雑な心境もあるかもしれませんが、これを観れば更にアレクサンダーが好きになるといっても
過言ではないです。
一方でもう1人の主演であるミア・ゴスは、今作ではある時は冷静にクールなそぶりを見せ、一方で急にギアが入って
完全にぶっ壊れたりと決して精神が不安定な訳ではなく、映画の中の役柄でもある女優としての資質を見せつけ、
アレクサンダーを手玉にとる完璧な演技で、ここまでインディペンデント系のホラー映画でキャスティングが最高な作品は贅沢です。
また、本作の映像という点では初めから終わりまで終始不穏で陰鬱、今までみたことのない映像体験に圧倒されます。
反転するリゾート地、前作のポゼッサーの時から更に昇華させた形のトリップ描写、ショッキングな物を観ているはずなのに
何故か惹きつけられる背徳感のあるスリル、蜷川実花の様な色鮮やかな極彩色のアートが所々に散りばめられていて
行きつく暇がないです。細かい部分でもテキストのフォントにもこだわっていて、
なかなかないラストのカラフルなエンドロールも興味深かったです。
まとめ
昨年父親のデビッドの「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」が日本で公開され
話題を呼びましたが、今回それに追随する形で、クローネンバーグの血統が冴えわたり、
今回も前人未到の映像体験に引き摺り込まれました。
俳優の豊川悦治が性癖に刺さる作品とナレーションしていましたが、
まさにその通りで、R-18指定も納得の退廃的なエロスやグロテスクさも織り交ぜた監督会心の一作。
誰かと一緒に鑑賞する作品では決してないですが、
脳裏にも突き刺さり、未知のスリルを味わえる作品であることに間違いはないので
是非劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。