映画大好きですが、夜眠れなくなるのでホラーは苦手です、はりねずみです。
今回は、良質なフランスミステリーをご紹介しますね。
SNSが発達しまくった現代社会。
守りたい情報を守りぬくことがいかに難しいのか考えさせられますよ。
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9人の翻訳家 囚われたベストセラー

あらすじ
世界的ベストセラー3部作の完結編が世界同時出版されることになる。そこで出版社は、機密保持のため9ヵ国から各言語の翻訳家をフランスのとある豪邸に集めて監視し、作業にあたらせる。しかし完全に隔離された状況下にもかかわらず、原稿が流出する事件が発生。出版社の社長のもとには脅迫メールが届く。そこで社長は、翻訳者の中に犯人がいると踏んで、犯人探しに乗り出す。
公開日
2020年1月24日
上映時間
105分
キャスト
- レジス・ロワンサル(監督)
- ランベール・ウィルソン
- オルガ・キュリレンコ
- リッカルド・スカマルチョ
- シセ・バベット・クヌッセン
- エドゥアルド・ノリエガ
- アレックス・ロウザー
- アンナ・マリア・シュトルム
- フレデリック・チョー
- マリア・レイチ
- マリノス・マヴロマタキス
- サラ・ジロドー
- パトリック・ボーショー
予告編
考察・感想レビュー

好きだった点
世界的な大ベストセラー「 デダリュス 」の完結編の発売が決定し、ある出版社が出版権を獲得。
大儲けのチャンスです。
出版までデータの流出を防ぐため、各国の翻訳家を豪邸の地下に完全隔離し、翻訳作業をさせます。
ドイツ、イタリア、中国など売り上げ部数の多い9カ国から個性豊かな9人の翻訳家が集まります。
日本は入っていません。
初対面の9人が勢ぞろいし、一列に並ぶ画に、これから何かが始まる!
という期待感が高まります(キムタクのHERO感出てます)
翻訳作業が進むにつれて原稿の一部が流出し、出版社社長が9人を疑い、殴ったり自殺に追い込んだりするわけですが、この社長のゲス具合がすごいです。
ゲス社長はこの騒動後、監獄に入っているのですが、同情心はかけらも湧きません。
原稿を流出させた犯人はけっこう早い段階で明かされ、観客はなぜ?と、動機の部分だけが分からないまま物語が進みます。
そして、衝撃の事実。
データが盗まれたのは、翻訳作業中ではなかったんです。
翻訳作業の数か月前、9人のうち5人がグルになって、原稿を肌身離さず持っているゲス社長からある手を使って盗んだのです。
これが鮮やかでした。
お前ら初対面じゃなかったんかい!
他人のフリ上手いな!って思わずツッコミました。
物語の主な場面は3つ。
ゲス社長と「 デダリュス 」作者(と思われていた)のやりとり、9人の翻訳作業、収監後のゲス社長と原稿を流出させた犯人(真作者)のやりとり。
それぞれ数か月ずつタイムラグがあり、時系列や場面がいったりきたりしながら謎の全貌が明らかになっていくスタイルです。
最初は少しややこしいですが、観客を置いていくほどではないですね。
嫌いだった点
登場する翻訳家たちがやたらと小説「 デダリュス 」を崇拝していたり、「 デダリュス 」内の台詞を引用したりするのです。
しかし、小説自体の物語がきちんと紹介されているわけではないので、で?となります。
監督の意図がよく分かりませんでしたね。
見どころ
犯人はなぜ原稿を流出させた?
明確な動機だけが最後まで分かりません。
それが明かされた時、きっと涙します(泣きませんでしたが)
種明かしの前に犯人見つけたる!と意気込んで見ると肩透かしをくらうかもしれません。
犯人の正体は?
映画の冒頭は沢山の本が燃えているシーンから始まります。
火事?
どこ?
なぜ?
そんな疑問を抱くのも束の間、本編にどっぷりのめりこみ、冒頭の疑問はすっかり忘れてしまいます。
一気に引き戻されるのが物語の終盤で主人公である犯人(真作者)がゲス社長に向けて放った言葉、「 それが知りたかったんだ 」
この言葉で、冒頭の火事は、作者(と思われていた)おじいさんが殺された時の映像だったんだと。
殺したのはゲス社長だったんだと。
主人公がしていたことはゲス社長への復讐であり、おじいさんへの追悼だったのだと。
ずっと謎だった主人公の動機がこの一言ですっと飲み込めました。
動機に納得したかという話はまた別ですが、こういう構成好きですね。
実話なのか?
本作は実話をもとに作られています。
「 ダ・ヴィンチ・コード 」シリーズの第4作目にあたる「 インフェルノ 」の出版時、アメリカの出版社が各国の翻訳者たちを地下室に隔離して翻訳作業を行ったそう。
小説に限らず、データの流出は他人事ではないし、「 地下 」「 隔離 」という非現実めいたワードも現実になってしまう。
まとめ
人間の欲望って恐ろしい。
「 インフェルノ 」に思いを馳せながら見るのもまた一興かもしれません。
そして、こうした各国の海外作品を私たちが楽しめるのも「 透明人間 」である翻訳家たちの巧みな言葉選びのおかげなんだとこの映画で改めて思いました。
翻訳家バンザイ!