今日は、第92回アカデミー賞で3部門受賞した「 1917 命をかけた伝令 」をご紹介したいと思います。
「 全編ワンカット 」と公開前から騒がれていた今作は、素晴らしい撮影技術を駆使した作品になっていました。
今までの映画と違い、否が応でも戦地に連れていかれる映画で「 攻撃中止 」というミッションを達成するまで、ともに戦場を駆け回ることになります。
どんな戦争映画よりもリアルで、戦争の恐怖を体感することになります。
戦争の本当の怖さ、さらに戦うしかなかった兵士たちの気持ちなどをこの作品を通して感じることができます。
見終わった時に「 戦争の意味 」を考えずにはいられない作品でした。
1917 命をかけた伝令
あらすじ
1917年。第一次世界大戦下の西部戦線ではドイツ軍の後退が始まり、イギリス軍は追撃に出ようとする。しかし、それはドイツ軍の罠だった。危機が迫る最前線への通信手段が途絶える中、若き兵士2人が呼び出され、翌朝までに作戦中止の命令を届けるよう指令を受ける。彼らは兄弟を含む味方1600人の命を救うため、無人地帯 (ノーマンズランド)に飛び込んでいく。
公開日
2020年2月14日
上映時間
119分
キャスト
- サム・メンデス(監督)
- ジョージ・マッケイ
- ディーン=チャールズ・チャップマン
- マーク・ストロング
- アンドリュー・スコット
- リチャード・マッデン
- コリン・ファース
- ベネディクト・カンバーバッチ
予告編
考察・感想レビュー
レビュー ❶
全編ワンカット(風)が話題となり、2020年のアカデミー賞では3部門獲得した今作がついに日本公開。
私は、公開日から2日ほど遅れて見に行くことができました。
満員の客席の中から私が覚えた感想は、1917こそ劇場で見るべき作品だということです。
いつもDVDやVODしてる皆様に言わせていただきます。
1917は、大迫力の画面で見たほうが絶対心に残ります。
今回は、1917が気になってる人に向け、良かった点、こんな人には向かないかもしれないという視点でお伝えします。
本記事を読んで劇場へ行く時の参考にしていただければ幸いです。
< 好きだった点 >
今作を語るうえで語らなければいけないワンカット撮影。
見る前は成立するのだろうか?
と半信半疑だったのですが、119分過ぎるとそんな心配をしていたのが嘘かのような余韻に浸っていました。
ワンカットで撮ることによって今までよりも、映画の世界へ入り込むことができたのです。
劇場へ行こうか迷ってる方には、真ん中の座席で大迫力の映像を楽しんでほしいです。
そして1回だけでは、見逃してしまう部分もあるでしょうから、何回も観れるタイプの作品だと感じましたね。
ワンカットなら息つく間もなくて疲れそうだなと感じる方もいますよね。
安心してください。
息抜きシーンがきちんとありますよ。
< 嫌いだった点 >
嫌いというより、今作が向かない人が絶対いるとおもった点についてお話ししますね。
作品にとって重要なのはストーリーだ。
という人にはオススメできません。
というのも、今作のお話は2人の軍人が攻撃を止める為に手紙を届けに行くだけなんですよね。
主人公たちが道を進めるごとにアクシデントが起こり、必死に対処する。
観客はそれを見て思わず息を飲み戦争の疑似体験をしてしまいます。
なので、この作品を楽しむシステムにハマれないと思った人は見ない方がいいかもしれません。
< 見どころ >
見どころは、やはりワンカット撮影による映像であり、アトラクションのような擬似体験ができることだと思います。
主人公たちを背中から追っていくカメラが観客に戦場の様子を伝えてくるのです。
そして、流れるような映像の細部が私たちに戦争の悲惨さ、残酷さを伝えます。
印象に残ったのは、敵地のベッドにあった家族写真。
時間にして5秒も映ってないのですが、その映像があるだけで相手にも家族がいることを感覚的にハッキリさせてくれるのです。
今作を見ると、戦争なんてものは2度と起こしてはいけないと強く感じさせてくれるはずです。
今作は、全編ノーカットの衝撃作というあがりきったハードルの斜め上を飛んでいく作品でした。
私が見終わった後は、あのシーンどうやって撮っているのか?
あのシーンの意図は?
などの疑問が押し寄せました。
予告で何度も見ているシーンに鳥肌が立つのは久しくなかったです。
今作は、大きなスクリーンで鑑賞するのがオススメ。
ジェットコースターのようなスリルと共に、心の中に小さなモヤができて誰かに伝えたくなる作品だと思いました。
最近の映画は物足りないなと感じているそこのアナタ。
今作をご覧になって映画への満足度を上げてみてはいかがでしょうか?
レビュー ❷
< 好きだった点 >
圧倒的な没入感とリアリティ。
「 全編を通してワンカットに見える映像 」のパワーがとにかくすごい。
観客に第三者でいることを許さないつくりになっています。
2人の伝令兵の1日を描いているのですが、作品を通して2人の物語を見ているのではなく、自分もすぐそばで歩いている気分でした。
これまでの戦争ものの傑作の多くは、登場人物たちに共感させることで、観客の心を動かしてきたと思います。
しかし、本作では共感を大きく通り越して、観客自身が体験しているという全くのニュータイプ。
一度席についたら最後、有刺鉄線に囲まれ、死体がゴロゴロした中、ネズミが走り回る。
地獄という言葉が生易しいほどの戦場で2時間タップリさまようことになります。
そして、死体や建物などの生々しさときたら。
無造作な感じが、本当の死体のようで、心をえぐってきます。
ホラー作品などである程度、死体や残虐描写への耐性はあるつもりでしたが、本当の戦場の前では全くの無力。
終始、目をそらし気味でした。
また、この作品のリアリティを支えているのは、映像だけではありません。
余計なことを描かないシンプルさが素晴らしい。
もちろん、観客がついていけるように最低限の前提と背景は提示されますが、細々とした事情は潔くカットされています。
そのため、キャラクターやストーリーの抽象度が上がり、より観客はスクリーン内の戦場を、自分事としてとらえやすくなるのだと思います。
兵士たちの1日をしっかり描く代わりに、省くべきところは省く。
このバランス感覚が、本作の良さだと思いました。
ストーリーが弱いという声もあるようですが、個人的には全く気にならず、むしろめっちゃ長所だと思いましたね。
< 嫌いだった点 >
また、ラストの方で「 さすがに、その生き延び方は無理なのでは 」というシーンがあって残念でした。
作品によっては気にならないレベルなのですが、ワンカット風の撮り方もあって、違和感が。
他の部分はめちゃくちゃリアリティがあったので、ちょっと浮いてる気がしましたね。
今作の内容ではないのですが、宣伝の仕方が若干ワンカット詐欺みたいな感じになってしまっているのが気になります。
確かに公式サイトなどをよく見ると、「 全編を通してワンカットに見える映像 」である旨は書いています。
チラシをパッと見ると、ガチのワンカットで撮ったっぽい印象の書き方になっていて、なんだかなあと思いました。
< 見どころ >
次々と兵士たちの苦難がふりかかるのですが、どのシーンをとっても、リアリティがありつつも映像としての完成度が素晴らしい。
ワンカット風に見せるというとてつもない制限がありながら、完璧といっていいほどに画面がキマッています。
セリフや動作のタイミングもバッチリ。
そして、無残な戦場とは対照的な森や草原の美しい映像もポイント。
彼らの道のりの過酷さや戦争の虚しさを、より強調していました。
さらに、コリン・ファースやマーク・ストロング、ベネディクト・カンバーバッチの出演シーンも良いアクセントに。
時間にして数分の出演ですが、戦争というものを観客にしっかり伝える名シーンばかりでした。
観終わった後は、「 やっと終わった 」という気持ちで、面白さや素晴らしさをかみしめる余裕はなかったのですが、とにかくすごい作品でした。
帰る時に見た燃えるような夕焼けに包まれた街が作中の風景と重なり、一瞬背筋が凍りました。
戦場が現実を侵食しているかのようで。
色々と書きましたが、とにかく一度見て欲しい作品。
絶対に何か残るものがあるはずです。
レビュー ❸
< 好きだった点 >
前評判通りの全編ワンカットの凄さ。
この作品を見ると、全編ワンカットがどういうことなのかを、はっきりと知ることができます。
そして、そのすごさが戦争の恐怖を徹底的に感じさせます。
ゲームをしているような画面感覚になるこの作品は、どこに敵がいるのかどこから攻撃されるのか全くわかりません。
その気持ちは登場人物の兵士と全く同じなのです。
彼らの仲間の1人として、私たちもミッションに参加することになります。
その緊張感は最後まで続きます。
だからこそ、当時の兵士たちの気持ちがリアルに伝わってきます。
これが戦争の現実だということを突きつけられる作品になっています。
ミッションを果たすまで途中で止めることはできません。
映画を見始めたら最後まで彼らとともに行動するしかないのです。
兵士たちがどんなに戦うことが嫌になってもやめられなかったように、私たちも最後まで走るしかありません。
そんな気持ちにさせられるほど臨場感あふれる作品でした。
< 嫌いだった点 >
この作品の売りは何度も言っているように全編ワンカットです。
だからこそ休む暇がなく、結構疲れます。
見終わった後にかなりぐったりしていました。
体力がある時に見るのをお勧めします。
< 見どころ >
兵士の視点で戦場を見ることが出来るのが、「 1917 命をかけた伝令 」でもあります。
塹壕の最前線から敵の塹壕まで走り続けます。
その途中には、兵士の遺体や馬の死骸などがあちこちに転がっています。
何もない中に転がり続ける無数の遺体。
これが戦争なんだということが痛いくらい心に刻まれます。
そしてそんな中「 攻撃中止 」のために走り続ける1人の兵士。
なんのために、誰のために走り続けるのか。
多くの兵士たちが命を失うのを見ながらも、任務遂行のために命をかける若き兵士。
ラストの「 無事に戻ってきて 」という家族の言葉が胸に突き刺さりました。
まとめ
戦争の悲惨さを描いた戦争モノは多くありますが、この「 1917 命をかけた伝令 」は戦争を体験する作品です。
伝令を届けるという単純なストーリーの中で描かれる戦地の状況。
目を伏せたくなる描写もたくさんありますが、絶対に見なくてはいけないシーンでもあります。
これが戦争の実態なんだと叩き込まれる作品が「 1917 命をかけた伝令 」でした。
そして「 それでも戦争をするのですか? 」という問いかけが聞こえてくる作品でもありました。
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