【 2025年本屋大賞 】授賞式レポート、大賞は「 カフネ 」に決定!

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2025年4月9日、桜が舞い散るこの日、明治記念館で「 2025年本屋大賞 」の授賞式が行われました。

本屋大賞とは、全国の書店員が「 一番売りたい本 」を選ぶ賞です。

初期の頃、運営は書店員たちのボランティアでした。会場内に風船を膨らませ、お祭りのようだったと言います。

2003年当初から、本屋大賞受賞作はベストセラーとなり、一気に注目を浴びる賞となりました。

目次

【 大賞 】「 カフネ 」阿部暁子(著)

©講談社

多くの出版関係者や書店員が見守る中、栄えある受賞作品が発表されました。

阿部暁子さんの「 カフネ 」(講談社)です。

©講談社

あらすじ

最愛の弟が急死した。29歳の誕生日を祝ったばかりだった。姉の野宮薫子は遺志に従い弟の元恋人・小野寺せつなと会うことになる。無愛想なせつなに憤る薫子だったが、疲労がたたりその場で倒れてしまう。

実は離婚をきっかけに荒んだ生活を送っていた薫子。家まで送り届けてくれたせつなに振る舞われたのは、それまでの彼女の態度からは想像もしなかったような優しい手料理だった。久しぶりの温かな食事に身体がほぐれていく。そんな薫子にせつなは家事代行サービス会社『カフネ』の仕事を手伝わないかと提案する。

食べることは生きること。二人の「家事代行」が出会う人びとの暮らしを整え、そして心を救っていく。

受賞の喜びを語る阿部暁子さん

©講談社

阿部暁子(あべ・あきこ)
岩手県花巻市出身、在住。2008年『 屋上ボーイズ 』(応募時タイトルは「 いつまでも 」)で第17回ロマン大賞を受賞しデビュー。著書に『 どこよりも遠い場所にいる君へ 』『 また君と出会う未来のために 』『 パラ・スター〈Side 百花〉 』『 パラ・スター〈Side 宝良〉 』『 金環日蝕 』『 カラフル 』などがある。本作『 カフネ 』で第8回未来屋小説大賞、第1回あの本、読みました?大賞、2025年本屋大賞を受賞。

「 2004年春、入学したばかりの大学の生協で『 博士の愛した数式 』を買いました。当時は奨学金と親からの仕送りで生活していたので、一大決心の購入です。

『 第1回本屋大賞、この本は全国書店員が選んだ一番読んでほしい本です 』という文章が目に入り、読んだわけですが、それから時間を忘れて読みました 」

また、「 (作品に)関与してくれた編集さんたちが、私の知らない裏側で、(本作を)いかに広めるかという作戦会議があり、営業さんたちも本当に尽力してくれました。そういう本当にたくさんの人の尽力があってここまで来ました 」

と、編集者や営業担当者への感謝を述べました。

また、書店員の仕事の過酷さに触れ、「 通常の業務を行いながら、1次投票だけでも大変ですが、2次投票になるとノミネート作を全て読んだ上で、しかも心に留まったコメントをつけて投票しなければなりません。

それは本当に大変なことだと思います。大変なのにそれをする。そこにはご自分の仕事への、プライドの高い作品への愛があるんですね 」と、書店員の仕事への理解と敬意を示しました。

そして、「 そういう愛に支えられている書店からこそ、本屋大賞は本当に多くの人に支持されて、愛されて、これまで続けてこられたんです 」と述べ、この受賞を励みにこれからもよい物語を書き続けたいと決意を表明しました。

選考委員を代表してジュンク堂書店の方より挨拶がありました。

近年、書店を去る人が少なくない現実に触れつつ、「 それでも私が書店員を続けるのは、著者や出版社をはじめとする書籍の制作に関わる人々、流通に関わる人々、そして書店の店頭に立つ書店員。

私の元に受け渡されるバトンのような書籍を読み手に届けることや、書物の世界にひたる喜びを感じ、伝えたいと思うからです 」と、書店員としての喜びと情熱を語りました。

続いて、主催者を代表して、NPO本屋大賞実行委員会理事長の浜本氏が挨拶に立ちました。

発表会後には全国の書店でフェアが始まることに触れ、読者の来店を心から呼びかけました。

その言葉には、止まらない書店閉店の現実を受け止めてほしいという思いがあったように感じます。

書店員の仕事を3Kに例え「 感動、希望、そして志 」であると語り、書店員が送り出す作品には感動が満載であり、厳しい状況でも本屋大賞が希望の芽生えとなり、それを支えているのは全国の書店員の志であると。

それは心強い意志表明にも思えました。

ノミネート全作品はこちら

順位書名著者名出版社
2位アルプス席の母早見和真小学館
3位小説野崎まど講談社
4位禁忌の子山口未桜東京創元社
5位人魚が逃げた青山美智子PHP研究所
6位spring恩田陸筑摩書房
7位恋とか愛とかやさしさなら一穂ミチ小学館
8位生殖記朝井リョウ小学館
9位死んだ山田と教室金子玲介講談社
10位成瀬は信じた道をいく宮島未奈新潮社 

【 翻訳小説部門 】第1位「 フォ-ス・ウィング―第四騎竜団の戦姫― 」

翻訳小説部門の第1位は「 フォース・ウィング─第四騎竜団の戦姫 」(レベッカ・ヤロス著、原島文世訳、早川書房)でした。 

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あらすじ

竜の騎手たちが魔法の力で国防を担う国ナヴァール。
書記官を目指していた二十歳のヴァイオレットは、軍の司令官である母親の命令で
バスギアス軍事大学に入学して騎手を目指すことに。
だがそこは、入学者の大半が命を落とす死と隣り合わせの場所だった。
そんななか、第四騎竜団(フォース・ウィング)の団長ゼイデンに、
ヴァイオレットは強く惹かれていく。何重にも絡みあった因縁の宿敵である彼に……。
彼女を待ち受ける極限状態での恋、友情、そして命懸けの戦いの行方は――。
(公式サイトより引用)

【 発掘部門 】超発掘本「 ないもの、あります 」

超発掘本の第1位には「 ないもの、あります 」(クラフト・エヴィング商會、ちくま文庫)が選ばれました。

あらすじ

よく耳にするけれど、一度としてその現物を見たことがない。そういうものがこの世にはあります。たとえば「転ばぬ先の杖」。あるいは「堪忍袋の緒」。こういうものは、どこに行ったら手に入れられるのでしょうか?このような素朴な疑問とニーズにお応えするべく、わたくしどもクラフト・エヴィング商會は、この世のさまざまなる「ないもの」たちを、古今東西より取り寄せて、読者の皆様のお手元にお届けします。
(公式サイトより引用)

作者のクラフト・エヴィング商會のおふたりのうち、藤井さんは、この本が四半世紀前に出た本でありながら今も書店に並んでいるのは読者のおかげだと感謝しました。

また、最近デザインの仕事が減っていることにも触れ、その理由としてイニシャルが「 AI 」という「 とんでもない新人 」の存在を挙げ、会場を笑わせました。

しかし、そのAIの能力を認めつつも、人間には「 心 」という強みがあり、それを活かしてこれからも新しいものを作り続けたいと締めくくりました。

取材を終えて

思い思いの、心のこもったポップを手に阿部さんの周りで笑顔満載の書店員さんたちが何度も繰り返していた言葉があります。

それは、同僚や仲間が書店を辞めていく話でした。胸が痛みました。

書店が好きで、いつもミステリーショッパーのように、どの本が売れているかをチェックして書評セレクトしている筆者も、実は取材先の最寄り駅に書店を見つけられないことを実感しているからです。

書店があったとしても、中身が見られないようになっているので、結局はレビューを参考にするしかありません。

単なるレビューではなく、今なぜこの本が必要で、この本から得られるものは何か、客観性に感想を交えつつ書評を書かなければいけない責任を改めて感じました。

執筆者

取材・文:栗秋美穂

「 あなたの国では 」小手鞠るい著(さ・え・ら書房)

本をメガホンに!国際協力・教育・料理、そして”見える「 活動が繋ぐ物語 」岡本啓史インタビュー

「 これから大人になるアナタに伝えたい10のこと 」(サヘル・ローズ著)

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