「 これから大人になるアナタに伝えたい10のこと 」(サヘル・ローズ著)

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ブックライブラリ読者の皆さん、こんにちは。

早いもので3冊目の書評です。すぐに没企画になるかと思っていましたが、意外にも私、栗秋美穂のSNSにメッセージをくれた方が数人いらして、すごく嬉しかったです。

今度からは「 シネマライブラリ 」のお問い合わせから送ってくれると嬉しいな。

社長やスタッフにも見せたいので。(大丈夫、社長は喜んでくれるから)

さて、今日はこのような「 アナタにお話しするような 」文体で書くよ。

それはね、今日、紹介する「これから大人になるアナタに伝えたい10のこと」サヘル・ローズ著(童心社)は、著者であるサヘル・ローズさんがこのように、話しかけるように書いているからなの。

目次

サヘル・ローズ

1985年イラン生まれ。7歳までイランの孤児院で過ごし、8歳で養母とともに来日。舞台『 恭しき娼婦 』では主演を務め、主演映画『 冷たい床 』は正式出品され、イタリア・ミラノ国際映画祭をはじめとするさまざまな映画祭で最優秀主演女優賞を受賞。映画や舞台、俳優としても活動の幅を広げている。第9回若者力大賞を受賞。芸能活動以外にも、国際人権NGOの「 すべての子どもに家庭を 」の活動で親善大使を務めた経験もあり、公私に渡る支援活動が評価され、2020年にはアメリカで人権活動家賞を受賞する。

「 交換日記を知っている?」

こんな文体で書いていると、読者の方は私を若い人と思うかもしれない。

でも私は50歳で10歳の子どもを持つお母さん。

ブックライブラリ読者の中には教育関係者や保護者の方もいるから、交換日記と言う言葉で懐かしいと思ってくれますか?

交換日記とは、一冊のノートにお友達への感謝や悩み事を書いて、次の日に学校で渡すの。するとね、その渡されたお友だちは翌日、ノートにお返事を書いてくれる。

このサヘルさんの本は、アナタへの交換日記のようなものだよ。

なぜならサヘルさんに返事をしたくなる。だから私はこの本を「 交換日記 」と例えたの。

まず最初の数ページのところにはサヘルさんが「 私の自己紹介をしよっか 」と書いてある。

なんだか目の前にサヘルさんが居そうな書き方だよね。

ライターとしてはこの書き方はブッブー(✖)なんだけど、ライターのルールを守っていては、サヘルさんの本を紹介できないと思ったの。

同じように、この本にはブッブーはない。みんなを「 それでいい 」と認めてくれている。

だけど、彼女がみんなに「 それでいい 」と思えるようになるまでは、とても苦しい道のりがあったんだ。

その生い立ちについては、本の前半にくわしく書いてある。きっとアナタには想像もつかない戦争という現場から、彼女は日本にやってきたの。

でもね、日本に来たからと言って彼女がすぐに幸せになれたわけではなかったんだよ。

「 虐待、貧困、言葉の壁、そしてイジメ 」

この言葉が並んでいるだけで、サヘルさんの困難を想像できる人がいたら、もっとそれを知ってほしいから、本をぜひ読んで。

想像できたら、人は「 行動 」できるようになる。

サヘルさんのようなつらい思いをしている人は実は日本にもたくさんいるんだ。

想像できる人なら、この本を読んで、行動できる。

でもね、想像できなくてもいいよ。サヘルさんは、決して自分の苦しみを押し付けてはいない。

ただ、「 これから大人になるアナタに伝えたい 」その思いだけで本を出したから。

想像できなくても、サヘルさんの気持ちを知るだけでいい。

こういう人がいて今、苦しかった過去を伝えることが誰かの原動力になるなら、そんな思いで自分の過去を、そしてその過去から学んだことを伝えているんだ。

「 さて、話しが変わるよ 」

そう、このフレーズもこの本の中にはたくさん出てくるんだ。サヘルさんは「 アナタ 」に伝えたいことがたくさんあるから、次から次へと話しが飛ぶの。でもそれがまた面白い。

だって、日常の会話でも私たち(特におばちゃん世代)は話しが飛びまくってるもんね。

どういう話に変わるかというと、読んでみればわかるのだけど、路上生活をしていたサヘル少女はいきなり「埼玉の試食のおばちゃん、ありがとう」と本の中で感謝を述べる。

それはね、衝動的に出てきた押さえられない感情だったんじゃないかな。

食べ物がなくて、スーパーの値引きを狙って夕方に現れるサヘル少女に、試食のおばちゃんがくれたたくさんの食べ物を思い出し、突然、本の中で「あの時の親子はちゃんと生きてますよ」と元気よく言うの。

でもそれが、とても人間らしいと感じる。思ったことを思った時に伝えていいよね。

最近、私はとても思う事がある。みんな、空気を読みすぎていて疲れない?

読みすぎて間違えた方向に行っちゃって、頭おかしい人扱いされることのある私は50歳になっても泣くよ。実はさっきもね(笑)でも息子がいるから頑張れる。

サヘルさんも養母にお腹いっぱい食べてほしいから仕事を頑張っていると言ってるよ。

「 10では足りない100を超える数字はな~んだ 」

ほら、また話が飛ぶよ、付いてきてる?

この本の目次は10個で構成されている。それはすごく分かりやすくていい。

まず、目次を読んだだけで全体のトーンが分かる。そうしないと買ってはもらえないからね。

そして目次の言葉ひとつひとつが独立した本のタイトルのようで、実際にどこから読み始めても堪能できる。

新米書評家だけど、ずっと昔から個人的に書評や編集者にダメ出しの言葉をノートに書いていた暗い性格の私だから、この本はよく出来ていると思って、ブックライブラリに選びました。

たぶんね、ルビ(振り仮名)の振り方も対象年齢を想定して振ってある。過度なルビがないのは「 アナタ 」を大人扱いしている証拠だね。

そして最後に私が「 アナタ 」に数字を言うね。153。153個。「 個 」という言葉がヒント。

個数いうことが分かるよね。

それは私がこの本の中で見つけた「 アナタ 」に(そして我が子に)伝えたい言葉の数が153個

あったということ。(数えてるってすごく暗い性格。でも私や息子は、数で分析するのが好きなんだ)

「 アナタ 」が、友だちと交換日記をするとして、この本の中からいくつの言葉を伝えたい?

書き出してみて。書くとサヘルマジックで、その言葉が「 アナタ 」自身のものになるから。

【 告知 】

2025年2月15日 神保町にある「猫の本棚」でサヘルさんのサイン会が行われます。ぜひ、サヘルさんから「 アナタ 」への交換日記(この本だよ)を受け取ってね。

執筆者

文・ライター:栗秋美穂

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