
「 自己肯定感 」という言葉を聞くようになったのはいつ頃からだろうか。この言葉が世間に浸透してきたのはおそらく、ここ10年くらいだと思う。
それは文字通り、「 自己 」を「 肯定 」する力だ。しかし、これは他者に認められたり、褒められたりすることで形成される感情で、自分一人では得られないのだ。
今回取り上げるのは、環境活動家として世界中で講演活動を行う谷口たかひさ氏の2冊目の本「 自分に嫌われない生き方 」である。
300ページちょっと、文字は大きく読みやすい。無駄な説明のない簡潔なセンテンスで構成されており、参考文献も明確だ。
一部が箇条書なのも読みやすい。
本書の帯には「 自分を好きでいる 人生でそれ以上に大切なことはない 」と書いてある。分かりやすく、事実だ。
しかし、「 自分を好きでいる 」というのは思いのほか、難しい。育った環境が影響するからだ。成長してから自己肯定感を得るのは難しい。
ところが、本書では「 自分はどうせダメな人間だ 」などという自己否定は、後天的な環境で変化することをデータを元に立証している点で、読者を納得させることに成功している。
このエピソードはぜひ本書を読んでほしいのだが、10歳の子どものいる筆者が、「 ほー、なるほど 」と思えるのだから、一読の価値あり。
子供を叱ってしまい、寝顔に「 ごめんね 」という夜も、この本の中の言葉を思い出すと、「 大丈夫、きっとやり直せる 」と思えるのが良い。
子どもに自己肯定感を与えるハウツー本はいくらでもある。しかし、あくまでもそれは親が子供に「 成功体験を与えましょう 」と言った類のものがほとんどだ。
しかし、その点において本書が他の「 自己啓発本 」と決定的に違うのは、親も「 育ち直し 」ができ、孤育てになりがちな親自身が「 自己肯定感 」を育めるように書かれていることだ。
これが私が本書に抱いた「 ただのハウツー本でもなく、啓発本でもない 」と思う理由なのである。
そしてもうひとつの理由は、最後の章で述べていること。「 君はどう死ぬか 」という、人生の最後を見据えて書かれていること。
「 さぁ、これで自己肯定感はわかったね、これさえ身に付けておけば大丈夫だ 」などと簡単に言わない。
いっとき読んですぐどこかに埋もれてしまう本ではないのだ。なぜなら、人は人生の中で必ず死にたくなる時が一度はある。
この本はそんな時に本棚から引っ張り出してきてほしい。幸せに生きることばかり考えていると、今の自分の環境に不満を持ってしまう。
しかし「 どう死ぬか 」を考えて読むと、谷口氏がなぜこの話題を最後に持ってきたか、その意味が分かる。
本書を最後まで読めば、谷口氏が何をもって「 どう死ぬか 」が大切であるかが分かるように構成してある。
「 なりたい自分との出会い方 」やりたいことがなくてモヤモヤしている小中高生に読んでほしい

文・ライター:栗秋美穂