「 大いなる自由 」感想レビュー、あらすじ&キャストまとめ
文・ライター:@ayahhi
人間の奥深さや複雑さを丁寧に描くまなざしに敬服する1本。
衝撃のラストもまた、まぎれもない人間の生の姿。
大いなる自由
あらすじ
物語の舞台は第2次世界大戦後のドイツ。法律により同性愛が禁じられていたドイツで幾度も投獄されていた同性愛者ハンス。囚人ヴィクトールは彼に抵抗感があったものの、少しずつ打ち解けていく。
原題
Great Freedom
公開日
2023年7月7日
上映時間
116分
予告編
キャスト
- セバスティアン・マイゼ(監督)
- フランツ・ロゴフスキ
- ゲオルク・フリードリヒ
- アントン・フォン・ルケ
- トーマス・プレン
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
男性同性愛を禁じたかつてのドイツの刑法175条によって、理不尽にも繰り返し投獄される主人公ハンス。
演じるのは俳優/ダンサーのフランツ・ロゴフスキの演技が圧巻です。
ナチスの強制収容所から刑務所に送られた直後のおびえた表情から、繰り返す刑務所生活で培ったたくましく精悍な顔つきまで、30年近くに及ぶ時間を完璧に演じています。
その表情や体の動きは、やはりダンサーという背景も手伝ってか表現力に満ち溢れており、姿勢ひとつで感情の揺れ動きをみごとに表していました。
彼の演技は見る人すべてを魅了するように思います。
政治や当時の法律の残酷さはもちろんテーマの背景にはありますが、男性同性愛者がいかにそれに蹂躙されたか、という被害者としての目線は意外にも控えめです。
それよりも、彼らが、自らの意思で、自らの自由を選択するまっすぐさの方が圧倒的に印象に残ります。
テーマからして社会的・政治的意味合いの強い作品だと思い込んでいたのですが、実際にこの作品で中心に描いているのは、人間の奥深さや複雑さだと感じます。
最初は同性愛への嫌悪を感じたものの、人間としてのシンパシーによってハンスへの信頼(あるいは恋愛感情)を育んでいく同室のヴィクトールには驚きました。
これもごく自然な人間の感情の変化なのでしょう。
また、特に人間の奥深さを感じるのが刑期を終え、自由の身になり、恋人もできそうな状況にもかかわらず、人間のぬくもりを求めるように、わざわざ刑務所に戻っていこうとするハンスの行動です。
タイトルの「 大いなる自由 」とは、なにも塀の外を指しているのではなく、「 ただあるがままの自分の心に正直であること 」を指しているのでは?と感じました。
最後に
監督自身も、ラストシーンの解釈は観客に任せると語っている通り、受け取り方は人それぞれかもしれません。
救いの無い展開とも見えるし、ハッピーエンドの可能性もある。
言うなれば、豊かな複雑さを持った作品といえるのではないでしょうか。