文・ライター:@ayahhi
時代にも立場にも歯向かった皇后の勇気とやるせなさが
妙に切ないヒューマンドラマ。
エリザベート1878
あらすじ
物語の舞台は1877年のクリスマスイブ。40歳になったオーストリア皇妃エリザベート。宮廷生活に窮屈さを感じていた彼女は、旧友や恋人を訪ねる旅に出る。
原題
Corsage
公開日
2023年8月25日
上映時間
116分
予告編
キャスト
- マリー・クロイツァー(監督)
- ビッキー・クリープス
- フロリアン・タイヒトマイスター
- カタリーナ・ローレンツ
- ジャンヌ・ウェルナー
- アルマ・ハスーン
- マヌエル・ルバイ
- フィネガン・オールドフィールド
- アーロン・フリース
- ローザ・ハジャージュ
- リリー・マリー・チェルトナー
- コリン・モーガン
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
主人公のエリザベートを演じるヴィッキー・クリープスの渾身の演技が、大きな魅力です。
なんでも彼女は、10代の頃からエリザベートの生涯を知っており、なんとなく自分と重ね合わせていたとインタビューで語っています。
こんな適役は他にいないと言えるでしょう。
一筋縄ではいかず、頑固で、敵を作りやすいけれど、繊細な心の持ち主で、傷つきやすく孤立しやすいというエリザベートの性質を表情や姿勢、体形までもよく表現していたと感じます。
若いころからその美貌で知られたオーストリア皇后・エリザベートの40歳を描いていますが、1878年では、平民の平均寿命だっだそうです。
当然、加齢による老化は避けられないものの、筋トレやコルセットの厳しい締め付けで何とか美貌を保とうと努力する彼女。
しかし、周囲は彼女の加齢を揶揄するような態度です。
ただ、個人的に気になったのは、そこまで周囲は彼女に辛く当たったのか?という点です。
彼女自身がやや被害妄想が強く、心無い言動や発言で、周囲を傷つけている場面も複数見受けられました。
ちなみに、本作のポスターは、豪華なドレスに身を包んだエリザベートが、中指を立てて「 お飾りなんかじゃない 」と挑発する内容となっており、
鑑賞するまでは、古臭く人間性に欠けた慣習を強要してくる皇室(=悪)に人間的で勇敢な彼女(=善)が立ち向かっていく快進撃を描いているような印象を抱きます。
しかし実際は、彼女自身の人間性にもかなり難があり、結果的には周囲に見放されていく過程を描いているとも見えます。
このあたりは「 時代に抑圧された女性が逞しく闘うフェミニズム映画 」として見ると、やや違和感を覚えますし、想像していた爽快感はほぼなく、暗さを感じます。
最後に
女性に若さや美貌を強要する社会は2020年代になっても変わらないというメッセージも強く感じる本作。
エリザベートの性質も、そうしたプレッシャーによって歪められてしまったとも考えられるかもしれません。
なんにせよ、社会が個人に与えるプレッシャーの恐ろしさを感じる問題提起に富んだ作品でした。