とにかく画が美しく、徹底的な美意識に裏打ちされたスキのない108分。
曲者で愛すべき登場人物と気のきいたセリフには舌を巻く傑作。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
公開日
2022年1月28日
原題
The French Dispatch of the Liberty, Kansas Evening Sun
上映時間
108分
キャスト
- ウェス・アンダーソン(監督)
- ビル・マーレイ
- ティルダ・スウィントン
- フランシス・マクドーマン
- ジェフリー・ライト
予告編
公式サイト
フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
感想レビュー
好きだった点
感性鋭い様々なジャンルのクリエイターから、熱い支持を受けるウェス・アンダーソン監督。
彼の美意識が作品の隅々まで散りばめられています。
知性とユーモア溢れる会話やクセが強く、品のあるシャレの利いた会話。
作品全体が洗練されており、ずっと魅せられっぱなしです。
しかし、ただのオシャレ映画ではなく、ひと癖やふた癖もある、人間臭い登場人物の描き方の秀逸なこと。
人間を本当によく観察しているなと舌を巻きます。
半奴隷の家庭に生まれた女性刑務官(レア・セドゥ)が、天才画家の囚人と恋に落ち、彼のミューズとなる点が特に魅力的だった。
カリスマ学生革命家でありながら、頼りなく弱気な部分を持ち、女学生と恋に落ちながらもうっかり夭逝してしまうティモシー・シャラメ。
まさに旬の俳優という感があり、その色気、力強さ、儚さに見惚れてしまいます。
考察レビュー
分断された各章が、特に詳しい説明もなくバッサリ別の話として存在しているため、つまり何の話だったの?という感想を持つ人も多いかと思います。
しかし、どの章にも根底に流れるスピリットは、共通していたように思うのです。
それは、人の弱々しさや、冷酷になり切れない優しさを愛するということ。
異邦人として仕事を失敗しないよう、死を覚悟して職務(毒入り食事を食べる)を全うするアジア系シェフに対し、
「 この街ではみんな異邦人だよ 」と慰めるゲイの黒人警官。
若者からの「 独身中年女性 」という罵倒に傷つきながらも、「 私の尊厳を奪わないで 」と若者たちの背中を押す高潔な記者。
誘拐犯の一味でありながら、怯える少年に優しい眼差しを注ぎ、子守唄を謳ってあげるショーガール。
それぞれの立場で、やりきれなさや、のっぴきならなさを抱えながらも、己の信じるのものや失いたくないものを、そっと抱きしめているような温かさを感じるのでした。
まとめ
美しくセンス溢れる映像をこれでもかと見せつけられると同時に、人間の内面を描くこだわりや、しつこさも強く感じさせます。