ため息の出るような美しい画とロマンスの裏に見え隠れする古臭い価値観が気になる、見る層によって賛否の分かれそうな1本。
ベル・エポックでもう一度

あらすじ
かつての売れっ子イラストレーターのヴィクトル。仕事を失った彼は、息子から「タイムトラベルサービス」をプレゼントされ、忘れられない思い出の日々を再体験する。
公開日
2021年6月12日
原題
La Belle Epoque
上映時間
115分
キャスト
- ニコラ・ブドス(監督)
- ダニエル・オートゥイユ
- ギョーム・カネ
- ドリア・ティリエ
- ファニー・アルダン
予告編
考察・感想レビュー

好きだった点
とにかく画が美しい。
特に、マルゴを演じるドリア・ティリエのチャーミングさは必見です。
感情をむき出しにする率直さや、人の気持ちに寄り添う人間味を豊かな表情から感じます。
女優としての才能を自覚し、それゆえにビジネスであることを忘れて自分に本気になってしまうヴィクトルに対し、
切り捨てるわけでも利用するわけでもなく、自分なりに真摯に向き合おうとする点は好感が持てました。
嫌いだった点
それと対照的に、魅力的なマルゴを自分の支配下に置こうとするアントワーヌ(脚本家)にはイラっとする場面が多いです。
仕事も忘れてマルゴを独占しようとする姿勢や、そのくせマルゴの演技で気に入らない点は徹底的に攻撃して、マルゴの自信をなくさせるやり方は全くもって賛同できません。
典型的なモラハラ男性だなと感じました。
主人公のヴィクトルに対して愛想をつかした妻・マリアンヌが、結果的にヴィクトルに感じた怒りをなかったことのようにし て、ヴィクトルに泣きついてやり直そうとしたことも挙げられます。
「 どんなに力があり、強がっても、女性は結局男性に泣きつくものだ 」
という空気が作品全体にあるように思います。
ちなみに本作の監督は1980年生まれの男性ですが、いかにもこの(そしてそれ以前の)世代の男性が持っていそうな、女性に対する「 こうあってほしい 」という描き方だなと感じました。
もしこれが、1990年代以降生まれであったり、女性(あるいは「 男性 」という枠ではない)監督だったならば、違った描き方をしたのではないか?と想像しました。
たとえば、マリアンヌやマルゴがそれまでの過去と決別して、新たな道を歩き出すという展開など。
多少問題のある男性でも、それを解決せずに「 情 」を重んじて、女性が我慢して付き合うことが美徳、のように感じられてしまいました。
映画的にはハッピーエンドとなっていますが、女性に対する甘えのようなものを感じました。
まとめ

もしかしたら、それもフランス文化の中では尊いのかもしれません。
そうした価値観ゆえ、歴史的な美しさを守り続けているのかもしないので、一概に良し悪しでは語れませんが。
色々な層の人が見て、自分の感想を語り合ってほしい作品です。