アカデミー賞4部門ノミネートの傑作「 君の名前で僕を呼んで 」のルカ・グァダニーノ監督が描くジュブナイルホラー。
生まれつき人を食べてしまう衝動を抱えた少女と少年の、切なくも痛い逃避行。
正直、あらすじから筆者の性癖ど真ん中を的確に射抜いていたこの作品。
楽しみな映画の公開を待っている期待感って、恋のときめきにも似ている気がします。
そんな個人的期待大の本作、公開初日に勇んで観に行ってきました。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
ボーンズ・アンド・オール
あらすじ
公開日
2023年2月17日
原題
Bones and All
上映時間
131分
キャスト
- ルカ・グァダニーノ(監督)
- ティモシー・シャラメ
- テイラー・ラッセル
- マーク・ライセンス
- アンドレ・ホランドほか
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
素晴らしい1本でした。
息詰まる人生の閉塞感に喘ぐ主人公2人の名演、微睡みのような儚い青春の謳歌、そして食人シーンの鮮やかな血の美しさ。
脚本こそやや突っ込みたくなるような部分もありました(同族けっこういるじゃんとか)が、美しくも鬼気迫るような映像と音響の完成度は素晴らしかったです。
また、触れなければいけないのは、本作のアイキャッチでもある「 食人 」について。
これはあらゆるマイノリティの生きづらさを包括するとともに、10代が抱えがちな人生の閉塞感や不安を表現しようとしたものであるように思います。
「 食人 」という私たちが否応なく忌避感を抱いてしまう禁忌を、生きづらさの象徴としたアイロニカルな手腕には、示唆的な物語の作り手としてこれ以上ない巧さを感じさせられました。
加えて、食人衝動という生きづらさを抱えて逃避行をしながら互いを支え合うマレンとリーとはある種対照的に描かれていたマレンの母と謎の老人サリーの存在も秀逸でした。
マレンの母は、自分たちは怪物であるという呪縛によって完全に心を病み、社会的な正しさや倫理的態度から娘の死を望みます。
一方のサリーは何十年もの長い孤独に圧し潰され、ようやく出会えた理解者(同族)であるマレンに異常な執着を抱きます。
食人衝動によって人生を狂わされてしまった成れの果てとも言える孤独な二人に、もしマレンにとってのリー、リーにとってのマレンのような存在がいたならばと思わずにはいられない切なさがありました。
まとめ
食人という傷つけ、奪う方法でしか他者と関わることのできなかったマレンたちが、その行為に違った価値を見出すことのできるエンディングは感嘆の一言。
私たちは映画を観終わったあとでようやくタイトルの真の意味が理解し、本作に込められた意味に遭遇することでしょう。
その瞬間、マレンとリーが固く結んだ愛に、私たちは骨の髄まで魅了されるのです。