今作は1970年代のコロンビアでの実話が題材。
人間の尊い志と、やるせない現実に打ちのめされる力作。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
あなたと過ごした日に
公開日
2022年7月20日
原題
El olvido que seremos
上映時間
136分
キャスト
- フェルナンド・トルエバ(監督)
- ハビエル・カマラ
- ニコラス・レジェス
- フアン・パブロ・ウレゴ
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
好きだった点
実在した健康医学の研究者、エクトル・アバド・ゴメス氏の知性と志に心打たれます。
政治家、民主主義者、ジャーナリスト、作家、大学教授というマルチな活躍をする彼。
その有能さがあれば、いくらでも楽に暮らせるものを自らの利益を顧みず、どうにか社会、とりわけ恵まれない層へ還元できないか奮闘します。
既得権益側と闘う姿はたのもしく、まさに今の日本の政治状況にもマッチする空気感がありました。
そんな生き様を知ることは意義深いですし、彼の衝撃的な最期もまた、その意思を貫き通した結果であり「 太く短く生きる 」という逞しさがほとばしっていて、引き込まれます。
嫌いだった点
公衆衛生の専門家でもあるエクトルが、愛息を連れてペストの蔓延する貧民街に出向いた際、息子と同じ歳の少年を並ばせて、いかに息子の体格や見た目が優れているかを語るシーンがあります。
貧しい人のために奔走するものの、彼らへの差別意識がないわけではないのだな、と不思議な感覚に陥りました。
もっとも、あくまでそれが現実であり、恵まれた立場にいる自分とそうでない他者を冷静に見つめることは大切です。
しかし、やや意外な言動でした。
エクトル氏は、多少、利己的で自己陶酔的な部分があったのかもしれません。
まとめ
愛娘の病死という悲劇をきっかけにエクトル氏自身が家族と距離を取り、政治へと舵を切っていくのですが、それがなぜだったのかという描写はあまりなかったように思います。
家族のエクトル氏の死に対する悲しみは尋常ではないですが、家族の中には溝ができていたのもまた事実だったようで、もう少し深堀りしてくれても良かったように感じました。
自由と正義を叫ぶ者はろくな目に遭わない、という結論は何とも救いの無い話ですが、「 善人 」が不当に攻撃される悲劇は歴史上は何度も繰り返してきたのだと痛感します。
だからといって黙するのは違うけれど、それが現実である世の中で、私たちはこれからどう闘っていくべきなのか。
その問いがポカんと浮かび、ずっしりと重くのしかかるような作品でした。