2024年、ハリウッドは脚本家と俳優によるストライキの影響を引きずり、低迷が続いた。
その結果、日本市場における外国映画の存在感は一層希薄なものとなった。
しかし作品の質は例年に劣らず、アメリカ映画は1,2,5,8位に強力な作品を送り込んでいる。
ただしそれらは個々の作家性によって輝いている作品であり、アメリカ映画としての大きな潮流を形成するには至っていない。
世界を席巻するエンターテインメントと良質なドラマの両方をバランスよく生み出してきたハリウッドの映画産業が、大きな転換点に立たされていることは間違いないだろう。
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2024年度外国映画トップ10は?
- DUNE / デューン 砂の惑星 PART 2
- パスト ライブス / 再会
- 美しき仕事
- ロボット・ドリームズ
- シビル・ウォー アメリカ最後の日
- 花嫁はどこへ?
- アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家
- マッドマックス:フュリオサ
- ソウルの春
- 異人たち
次点:枯れ葉/密輸1970
第1位「 DUNE / デューン 砂の惑星 PART 2 」

あらすじ
皇帝の命令で一族と惑星デューンへ移住した青年ポール。移住が罠と判明し、アトレイデス家とハルコンネン家の争いが勃発する。宇宙の命運を懸けた戦いが幕をあけるのだった。
原題
Dune Part Two
公開日
2024年3月15日
上映時間
166分
予告編
キャスト
- ドゥニ・ヴィルヌーヴ(監督 / 脚本)
- ジョン・スパイツ
- ティモシー・シャラメ
- ゼンデイヤ
- レベッカ・ファーガソン
- オースティン・バトラー
公式サイト
コメント
純真な青年ポール・アトレイデスが悪魔的なカリスマ性を持つリーダーへと変貌し、フレーメンの民を率いて旧体制に反旗を翻す物語。
神話的な英雄譚であると同時に、普遍的な人間ドラマであり、現代に通じる政治的なメタファーともなっている。
理想主義的だったポールは「 命の水 」を飲む試練を経て、宗教を利用した扇動や権謀術数も辞さなくなり、権威主義的な手法で民衆を率いて暴力革命へと突き進む。
その姿を客観的に見つめる視点が、リアルで苦い後味を残す。
特筆すべきは、ポールの恋人となるチャニに焦点を当て、ラストシーンを彼女の表情で締めくくった脚色だ。
ポールは全面戦争のため艦隊を率いて宇宙へ飛び立ち、チャニはデューンの大地に留まることを選ぶ。
この対照的な構図がもたらす感動が、本作を21世紀版「 アラビアのロレンス 」と呼ぶにふさわしい叙事詩へと高めている。
2024年を代表する名作だ。
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「DUNE / デューン 砂の惑星 PART2 」映画芸術史上最高傑作の1本、続編に期待したい
第2位「 パスト ライブス / 再会 」

あらすじ
ソウルに暮らす12歳の少女ノラと少年ヘソン。ふたりはお互いに恋心を抱いていたが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまう。12年後24歳になり、ニューヨークとソウルでそれぞれの人生を歩んでいたふたりは、オンラインで再会を果たし、お互いを想いながらもすれ違ってしまう。そして12年後の36歳、ノラは作家のアーサーと結婚していた。ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れる。24年ぶりにやっとめぐり逢えたふたりの再会の7日間。ふたりが選ぶ、運命とはーー。
(公式サイトより引用)
公開日
2024年4月5日
原題
Past Lives
上映時間
106分
予告編
キャスト
- セリーヌ・ソン(監督・脚本)
- グレタ・リー
- ユ・テオ
- ジョン・マガロ
公式サイト
コメント
韓国語の「 イニョン(縁) 」をキーワードに繰り広げられる物語は、人がこの世に生まれ、他者と出会い、別れていくことの不思議さと切なさを余すところなく描いている。
かつての香港映画を思わせるロマンティシズムと、それをさらなる芸術的高みへと押し上げた手腕。
恋愛映画の名作として、映画史に名を刻まれることは間違いない。
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「 パスト ライブス / 再会 」人との縁(イニョン)が織りなす傑作ラブストーリー【 あらすじ・キャスト 】
第3位「 美しき仕事 」

あらすじ
仏・マルセイユの自宅で回想録を執筆しているガルー。かつて外国人部隊所属の上級曹長だった彼は、アフリカのジブチに駐留していた。暑く乾いた土地で過ごすなか、いつしかガルーは上官であるフォレスティエに憧れともつかぬ思いを抱いていく。そこへ新兵のサンタンが部隊へやってくる。サンタンはその社交的な性格でたちまち人気者となり、ガルーは彼に対して嫉妬と羨望の入り混じった感情を募らせ、やがて彼を破滅させたいと願うように。ある時、部隊内のトラブルの原因を作ったサンタンに、遠方から一人で歩いて帰隊するように命じたガルーだったが、サンタンが途中で行方不明となる。ガルーはその責任を負わされ、本国へ送還されたうえで軍法会議にかけられてしまう…。
(公式サイトより引用)
原題
Beau Travail
公開日
2024年5月31日
上映時間
93分
予告編
キャスト
- クレール・ドゥニ(監督)
- ドニ・ラヴァン
- ミシェル・シュボール
- グレゴワール・コラン
- リシャール・クルセ
- ニコラ・デュボシェル
公式サイト
コメント
1999年の製作だが長らく日本未公開だった伝説の作品。今回が初の劇場公開となるため新作と同列に扱う。
フランス映画特有の美学に彩られた本作は、全てが死後の世界を思わせるような幻想的雰囲気を持ち、映画史においてあまり類例を見ない特異な作品となっている。
物語上は深い意味を持たないはずの訓練シーンが、悪夢の断片のように脳裏を離れない。
理屈など飛び越え、これほどまでに「 感覚 」を刺激してくる作品は極めて稀だ。
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「 美しき仕事 」感想レビュー、彼らは何のために戦い、何のために踊るのか?
この上位3本は強力無比な不動のトップ3。
4位以下は、ある程度順番が入れ替わっても問題ない。