ブラディ・コーベット監督、エイドリアン・ブロディ主演の「 ブルータリスト 」(2024)が各映画賞を賑わせている。
先頃発表されたゴールデン・グローブ賞で作品賞(ドラマ部門)、主演男優賞(ドラマ部門)、監督賞を受賞しアカデミー賞でも主要部門を争う見込みが濃厚である。
同作は、ホロコーストを生き延びてアメリカへ渡ったハンガリー系ユダヤ人建築家の数奇な半生を描いたヒューマンドラマだが、ホロコーストを題材とした作品は度々主要な映画賞を賑わせている。
ご存じない方に向け念の為説明すると、「 ホロコースト 」とは第二次世界大戦中にナチス・ドイツがドイツ国内や占領地でユダヤ人などに対して組織的に行った絶滅政策・大量虐殺のことである。
第二次世界大戦は近代史における最重要事件だが、ホロコーストは「 戦争の悲劇 」という文脈内で語られずに済まされない、近代史における重要な人類の負の側面の記録である。
今回は、ホロコーストを題材とした作品を厳選して紹介する。
【 7選 】ホロコーストが題材のおすすめ映画
- SHOAH ショア(1985)
- さよなら子供たち(1988)
- シンドラーのリスト(1993)
- 戦場のピアニスト(2002)
- ヒトラーの贋札(2006)
- サウルの息子(2015)
- 関心領域(2023)
SHOAH ショア(1985)

原題(英題)
Shoah
公開日
1997年7月25日(日本初公開)
上映時間
567分
キャスト
- クロード・ランズマン(監督)
考察レビュー
クロード・ランズマン監督によるドキュメンタリー。
上映時間は9時間27分に及ぶ。製作には1974年から11年の歳月を費やした超長編である。
劇映画的な演出もあるが、大部分がホロコースト生存者のインタビューで構成されている。
直接的な体験者が語る壮絶なホロコースト体験は言語に絶する。筆者は鑑賞開始30分で心が折れた。
精神面が体調不良のときに見るのは避けるべきだろう。
決して楽しい映画ではないが、人類の暗黒面を描いた貴重な歴史の記録である。
さよなら子供たち(1988)

原題(英題)
Au Revoir Les Enfants
公開日
1988年12月17日
上映時間
103分
キャスト
- ルイ・マル(監督)
- ガスパール・マネッス
- ラファエル・フェジト
- フランシーヌ・ラセット
- スタニスラス・カレ・ド・マルベルグ
- フィリップ=モリエ・ジェヌー
- フランソワ・ベルレアン
- フランソワ・ネグレ
- ペーター・フィッツ
- パスカル・リヴェ
- ブノア・ヘンリエ
- ジャン=セバスチャン・ショーヴァン
- リュック・エチエンヌ
- ダニエル・エディンガー
- マルセル・ベロ
考察レビュー
フランスの名匠、ルイ・マル監督の代表的な一本。
ナチス・ドイツ占領下のフランスのとある寄宿学校を舞台に、ホロコーストが時代に落とした影を間接的に描いている。
直接的な表現を避け、BGMもほとんどない禁欲的な表現に徹した作品で、決して楽しい代物ではないが、最後の「 さよなら子供たち 」と校長先生が子どもたちに別れを告げる場面のさりげない表現が強い余韻を残す。
ヴェネツィア国際映画祭の最高賞にあたる金獅子賞を受賞し、米アカデミー賞でも脚本賞と国際長編映画賞の候補になった。
シンドラーのリスト(1993)

原題(英題)
Schindler’s List
公開日
1994年2月26日
上映時間
195分
キャスト
- スティーブン・スピルバーグ(監督)
- リーアム・ニーソン
- ベン・キングズレー
- レイフ・ファインズ
- キャロライン・グッドオール
- ジョナサン・サガール
- エンベス・デイビッツ
考察レビュー
名匠、スティーブン・スピルバーグのフィルモグラフィーを代表する一本。
多くのユダヤ人の命を救ったドイツ人実業家、オスカー・シンドラーの実話を基にしている。
娯楽大作で見せるスピルバーグらしいダイナミックな表現は健在だが、内容は徹頭徹尾シリアスで、虐殺の残酷な描写も生々しく容赦なく描かれる。
あえてモノクロで撮った画面も独特の情感を醸している。
話の構成にも無駄がなく、195分の超大作ながら飽きさせない。
感傷的すぎるきらいはあるが、名作と呼ぶに相応しい。
米アカデミー賞で作品賞を含む7部門を受賞している。