「 ポップスター 」考察レビュー、銃乱射事件に巻き込まれた少女がスターになるという実話
映画ライフ楽しんでますか?
今回は、ペンネーム(@MANJU)さんからの投稿レビューです。
今作は、アメリカの学校で起きた銃乱射事件に巻き込まれた少女が辛い経験をバネにポップスターへと駆け上がり、
その成功や周囲からの誹謗中傷との戦いを描いた作品。
また、ナタリー・ポートマンという大スターを抜擢した本作でしたが、正直個人的には駄作でした。
では、なぜ駄作に感じてしまったのか?
を中心にレビューしていきます。
画像の引用元:IMDb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
ポップスター
公開日
2020年6月5日
上映時間
115分
キャスト
- ブラディ・コーベット(監督)
- ナタリー・ポートマン
- ジュード・ロウ
- ステイシー・マーティン
- ラフィー・キャシディ
予告編
公式サイト
感想レビュー
好きだった点
まず物語の始まりが魅力的だった点。
主人公セレステは、ある日、学校に行くと何の前触れもなく同級生の引き起こす校内での銃乱射事件に巻き込まれます。
授業に少し遅れてきた同級生が何も言わず立ちすくみ、次の瞬間突然教師を「バン!」と銃で撃ち抜きます。
冒頭5分足らずで起こるこの急展開に「 この先どうなっちゃうの? 」とグイッと作品に引き寄せられてしまうのです。
逃げ惑う生徒の悲鳴と取り残されたセレステが見つめあった静寂の後、なんとセレステも撃たれてしまいます。
このあたりの静寂にハラハラさせられ、その静寂を切り裂くような銃声にドキッとさせられ、序盤で早くも感情が揺さぶられます。
いきなり張り手を喰らうようなオープニングの入りは、エキサイティングでとても良いなと思いました。
主人公セレステは、この銃乱射事件での経験を歌にして世間に伝えることでポップスターへの道を歩んでいきます。
たいてい映画でのスター街道の描き方は主人公の泥臭い努力だったり、メンター(指導者)の導きからの方向転換だったりするのですが、
今作ではアメリカの社会問題(アメリカではこのような学校での銃乱射事件が時折起こる)を図らずも道具にしてスターダムにのし上がる、
というスターへのプロセスが新鮮でそこも新しさがあるなと思いました。
アメリカでは、2018年公開なので近い時期に公開されたレディー・ガガ主演「 アリー スター誕生 」とテーマが似ているので見比べてみると面白いかもしれません。
嫌いだった点
入りはとても良いのですが、そこからがちょっとお粗末な点が多いように感じました。
心の変化(主人公の)がほぼモノローグ(キャラクターのナレーション)で語られてしまう点。
せっかくスター女優を起用しているのだから、ここは主人公セレステの身に起こる事件や、
周囲の人間関係などを通して彼女がどのように心境を変化させていくのかを魅力的な演技で描いて欲しかったなと思います。
今作は主人公がポップスターという役柄なので、当然彼女の楽曲の素晴らしさや、ステージでの立ち振る舞いのカッコよさで魅せるとこだと思うのですが、
ここの部分が非常におざなりになっているなと感じました。
今作の見せ場の1つがクライマックスのライブシーン。
ここは彼女の華やかな歌やダンスを様々なアングルから録り、観客の感動している表情を連発させるなど様々な演出が考えられますが、
今作ではおそらく3つか4つ程度のアングルでしか撮られておらず、アップや引きの抜き差しも少ないので非常に緩慢なライブシーンに見えてしまいました。
このあたりが非常にもったいないところかなと思います。
好例で言えば大ヒットした「 ボヘミアン・ラプソディ 」なんかはとても多様な演出でライブの興奮が伝わりますよね。
前述の「 アリー スター誕生 」でもライブシーンは、実際のアメリカの巨大フェスを間借りし撮影するなどしてスケールの大きなライブを迫力いっぱいに表現しています。
このあたりの演出や少しのアイディアがあれば、より興奮できるラストになったのではないかなと思いました。
見どころ
女優ナタリー・ポートマンの演技かなと思います。
これまで多くの役柄を演じた彼女ですが、この作品ではスターの華やかさに加えスターだからこそ誹謗中傷を浴びて傷つき、荒れていく姿をきっちり演じ分けています。
あまり荒々しい役柄を演じない彼女の罵声や、怒りの演技はやはり今作の見どころと言えるでしょう。
考察・疑問点
今作で重要な出来事として最初の校内銃乱射事件と、後半のテロリストによるビーチでの銃乱射事件があります。
事件としてはとても大きいですが、いまいち物語とのリンクが薄く、ドライな描き方だったのが個人的には気になります。
両方ともアメリカ社会が抱える大きな社会問題なので、この部分を掘り下げていくともう少しテーマ性のようなものが見えてきて楽しく見られるのかもしれません。
まとめ
悪かった点を長々と書いてしまってかなり印象が悪いかもしれませんが、大きな事件を経験した主人公がスターになるという設定は新しく可能性を感じられます。
そこにもっと明確なテーマ性や映画的・魅力的な演出が加わればもっと良い作品になるのかなと思いました。