格差社会をテーマにした韓国映画「 パラサイト 半地下の家族 」がアカデミー賞を受賞したことは記憶に新しいですね。
ヒット要因の1つには、世間に渦巻く格差社会への不満や政治への不信感が無関係ではないでしょう。
では、なぜ貧富の格差は広がるのでしょうか?
その疑問に答える形で2013年に出版され300万部の大ベストセラーとなった「 21世紀の資本 」 映画を見る前に、トマ・ピケティ原作にチャレンジしてみました。
しかし、膨大なデータに基づいた経済書は、自分には難しすぎて最後まで読み終えるのを断念してしまいました。
そもそも経済やお金のことにあまり興味がないというのが問題かも知れません。
幸い入門書が手に入ったので、原作の概略は理解できたのですが、今度はシンプルな疑問が生まれました。
「 これって映画化(映像化)できるの? 」ということです。
21世紀の資本
あらすじ
世界的なベストセラーとなった経済書「21世紀の資本」を原作者であるトマ・ピケティ自らが解説。資本主義が抱える格差拡大の仕組みを解き明かす。
公開日
2020年5月22日
上映時間
102分
キャスト
- ジャスティン・ペンバートン(監督)
- トマ・ピケティ
- マシュー・メトカルフ
- ジョセフ・E・スティグリッツ
- ジリアン・ラット
- フランシス・フクヤマ
予告編
感想レビュー
好きだった点
見る前に疑問に感じていた「 映画化できるのか 」問題ですが、過去の映画を用いるという納得の手法で解決していました。
ピケティ自身も大の映画好きで、パリでは暇さえあれば散歩がてら映画館に通っているほどだそうです。
過去300年間の資本の歴史を、様々な映画のシーンを切り取って物語って行く手法は、映画そのものの歴史も振り返っているようで、映画好きにはたまらない愉しさが詰まっていました。
一部だけを紹介しますと「 プライドと偏見(2005)」「 ゴールド・ディガース(1933)」「 ウォール街(1987)」「 レ・ミゼラブル(2012)」「 怒りの葡萄(1940)」などが出てきます。
さらに「 エリジウム(2013)」が登場することで、資本の歴史から現代を越えて、近未来の姿まで描かれるのが斬新でクールでした。
他にもアニメやCM、実在した人物たちの映像(ヒトラーやレーガンなど)もうまく織り込まれており、貴重な映像を見られるのが嬉しかったです。
嫌いだった点
今ひとつ好きになれなかった点は、娯楽として楽しめなかった点にあります。映画鑑賞に、現実逃避という楽しみがあるとすれば、本作は現実逃避どころか現実直視を強いてきます。
前半が専門家たちによる専門用語を用いた解説、純粋に作品を楽しむというよりも、学び色の強い経済歴史講義を聴講しているように感じられました。
正直に告白すれば、経済オンチの自分には頭が痛くなりました。
反面、学ぶ作品として捉えると、これほどエンタメ要素あふれた見事な教材は他に見つからないのではないか?とも思えます。
700ページを超える経済書の内容が、たった100分ほどで学べるのですから。
見どころ
経済学(第一人者)たちの解説が豪華だった点。 ノーベル経済学賞受賞 ジョセフ・E・スティグリッツを筆頭に、10名を超える学者・教授・作家たちが登場します。
特にピケティ本人が登場し、解説しているのですから「 21世紀の資本 」解説としては、これ以上の適任者はいませんよね。
考察・疑問点
今回は、コロナによる自粛後、初めて街のミニシアターで鑑賞。その映画館では座席数を1席ずつ空けるように工夫していましたが、驚くことに満席でした。それとなく観客層を眺めると、ほとんどが40~50代以上でした。
きっと制作者たちは、若者向けにという意図でポップカルチャーを多様したのだと推察するけれど、少なくともこの日の観客の中に自分(アラフォー)より若い人は見当たらなかったです。
もっと若者ウケしそうな演出や、宣伝はできないものかなあと惜しく思いました。
まとめ
「 21世紀の資本 」での結論をシンプルにまとめると、(資本収益率 <g 経済成長率)ということでした。
つまりは、世の中の1人ひとりが懸命に働いての経済成長よりも、金持ちの財産増加のほうが大きいという事実です。
石川啄木の「 働けど働けどわがくらし楽にならざりぢっと手を見る 」という短歌が思い起こされますね。
働いても楽にならないのであれば、何をすればいいのか?
その解決策は、本作で明かされています。