「 パピチャ 未来へのランウェイ 」考察レビュー、アルジェリアの暗黒の10年を実話ベースで描いた衝撃作
映画ライフ楽しんでますか?
今回は、ペンネーム(@ayahhi)さんからの投稿レビューです。
女性の抑圧、暴力がはびこる90年代アルジェリア。
パピチャ(=自由で常識にとらわれない女性)たちの実話をもとにした命がけの闘いは必見。
画像の引用元:IMDb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
パピチャ未来へのランウェイ
公開日
2020年10月30日
原題
Papicha
上映時間
109分
キャスト
- ムーニア・メドゥール(監督)
- リナ・クードリ
- シリン・ブティラ
- アミラ・イルダ・ドゥアウダ
予告編
公式サイト
作品評価
[rate title=”5つ星”]
[value 4]映像[/value]
[value 4]脚本[/value]
[value 5]キャスト[/value]
[value 3]音楽(BGM)[/value]
[value 3]リピート度[/value]
[value 3]グロ度[/value]
[value 4 end]総合評価[/value]
[/rate]
感想レビュー
好きだった点
イスラム原理主義によるテロや女性の抑圧という暗いテーマの中で、人生を諦めずに、たくましく夢見る主人公たちが眩しくて勇気をもらいます。
「 パピチャ 」とは、アルジェリアのスラングで「 愉快で魅力的で、常識にとらわれない自由な女性 」という意味。
この作品に登場する女性たちは、テロに怯え、信仰をふりかざした理不尽な振る舞いにさらされながらも、夢であるファッションデザイナーになろうとします。
寮を抜け出してクラブに遊びに行ったりと、まさにパピチャそのもので、みずみずしく、愛おしく感じました。
嫌いだった点
まさに作品の狙い通りではありますが、
「 女性の正しい服装 」としてヒジャブ(イスラム教の伝統衣装)で顔まで肌を覆うよう強制するなど、
「 女は家にいろ 」
「 金曜に女が集まってはいけない 」
という理不尽極まりなく心底不愉快。
これが現実だと思うと、恐ろしい気持ちになりました。
見どころ
この話が監督自身の体験をベースにしているという点が衝撃。
ムーニア・メドゥール監督は90年代をアルジェリアで過ごし、テロや検問など明日の命も知れない状況から、家族と共にフランスへ逃れています。
主人公ネジュマを演じるリナ・クードリもまた、アルジェリアに生まれ、後に家族でフランスへ移住しており、監督はさぞかし自分を重ね合わせたことでしょう。
ネジュマの力強い瞳や、暴力や恐怖に屈せず、自分の信念を貫く姿勢は本当に清々しく、それ故に多くの傷を負ってしまう展開になんともやりきれない、でも応援したい気持ちになります。
愛するジャーナリストの姉や仲間たちを、信仰を振りかざした暴力によって奪われるネジュマ。
加えて、女性であることを理由に行動や考え方、服装までも強制されます。
興味深いのがこうした強制にすんなりと従い、むしろ自由に生きる女性に対し、こうした抑圧を強制しようとする女性も一定数いることです。
自分たちだけ自由に生きるなんて許さない。
同じ制限を受けるべきだという考えを持つ人たちです。
こうした同調圧力は、国を超え、世代を超え、やはりずっと続いているのだなと感じます。
同じ女性だからといって、同じ考え方や理想を持っているかと言ったら全くそうではありません。
イスラム原理主義に代表されるような男尊女卑や女性の抑圧を居心地よいと感じて、パピチャたちを取り締まるいわば「 自警団 」のような女性たちも描かれています。
やはり、属性でその人を判断なんて出来ないなとしみじみ思いました。
考察レビュー
奇しくも今作が日本で公開されている2020年初冬、アメリカでは初の女性副大統領が誕生しました。
90年代のアルジェリア女性の地位を考えると信じられないような話だと思います。
職業や生き方を自分で決められること。
それは全く当たり前のことではなく、多くの犠牲や努力の上に実現していることだと感じます。
こうした負の歴史をちゃんと知り、人間はこんなにも理不尽なことをする生き物ということをしっかりと胸に刻んでおかないと、
また繰り返すよというメッセージも、今作には込められているのではないでしょうか?
もちろん、女性に限った話ではありません。
理不尽には声を上げ、自らの信念を突き通す。
近年のBLM運動に象徴されるような気運の素が今作にも息づいています。
まとめ
抑圧に「 NO 」を突きつけ、自由に生きるために闘う彼女たち。
前進はしながらも、残念ながら、世界にはまだまだ女性への抑圧ははびこっています。
そんな中、大事なのはおかしいと思うことに声を上げ、屈しないこと。
未来に希望を持つこと。
これらを大事に、魂に炎を燃やすように生きる彼女たちの姿に元気づけられると共に、現実の悲惨さが深く胸に迫る1本です。