第一次世界大戦の傷。
そのあとに来る恐ろしいナチズム。
それらを前にベルリンを生きる若者たちの、もがきが苦しみが描かれる。
目が離せない良作。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について
公開日
2022年6月10日
原題
Fabian oder Der Gang vor die Hunde
上映時間
178分
キャスト
- ドミニク・グラフ(監督)
- トム・シリング
- サスキア・ローゼンタール
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
第一次世界大戦で負った傷をかかえ、ナチズムが少しずつ、しかし確実に生活を侵していく描写がリアルで恐ろしく、印象深いです。
今でこそ、アートやカルチャーに溢れる先進都市ベルリン、というイメージがありますが、1930年台初頭は退廃的で救いのない暗さがあったのだなと興味深く思いました。
その中でも、希望や衝動に突き動かされ、必死に生きた若者たちの切なさや輝きが感じられます。
女優を目指すファビアンの恋人、コルネリアが裸になるシーンが登場しますが、ファビアンの裸にはフォーカスしておらず、特に必要ないのでは?と感じました。
以前、ファビアンを演じるトム・シリングとタッグを組んだ「 ある画家の数奇な運命 」でも、コルネリア演じるザスキア・ローゼンダールは、
やたらと裸のシーンが多く「 性的な期待に応える女優 」として起用されているようにも感じてしまいました。
実際のところ、観客動員に影響するのだとは思いますが、女優を性的に消費している現実はやはりガッカリします。
原作は、エーリヒ・ケストナーの「 ファビアン あるモラリストの物語 」
日本では児童文学作家で知られているケストナーですが、第一次世界大戦で散々な思いをし、政治風刺やファシズム非難を盛んに行ったそうです。
そんな彼の著書は、ナチスにより禁圧され、書物が焚き上げられる最後のシーンへと繋がります。
今作の監督をつとめたドミニク・グラフは、明らかに現代の世界中の国々とナチズム前夜を「 似た状況 」と捉え、警鐘を鳴らす思いでこの作品を撮ったと話します。
不況や極右思想の拡大など、やはり歴史は繰り返しがちだと感じました。
単なる「 歴史映画 」として、この作品を見ることが出来ないのが本当に恐ろしいことです。
まとめ
映画の大きな役割の1つである「 警鐘を鳴らす 」という性格の強い作品ですが、意外とユーモラスな進行で楽しめるエンターテイメントでもあります。
ここ日本でも非常に身につまされ、今こそ見届ける必要があると思いました。