コロンバス
あらすじ
モダニズム建築の宝庫として知られるコロンバス。建築学者の父が倒れたとの知らせを受け、韓国からやって来た青年ジンは、ある時図書館員のケイシーと出会う。ジンは、彼女のガイドでコロンバスの街をめぐっていく。
公開日
2020年3月14日
上映時間
103分
キャスト
- コゴナダ(監督・脚本・編集)
- ジョン・チョー(『 search / サーチ 』)
- ヘイリー・ルー・リチャードソン(『 スプリット 』)
- ロリー・カルキン(『 サイン 』)
予告編
考察・感想レビュー
コゴナダ監督は、これが処女作の韓国系アメリカ人監督で自身のウェブサイトに“ムービー・エッセイ”(http://kogonada.com/)を挙げています。
それを見たところどうやらキューブリックやウェス・アンダーソン、日本からは小津安二郎に影響を受けているよう。(コゴナダは小津映画常連の脚本家である野田高悟にちなんでいるそう)
舞台となっているコロンバスはモダニズム建築にあふれ、そのどれもが今見てもどこか近未来を感じさせる。
物語のほとんどがそういった建造物の下で進んでいくためどのカットを切り取ってもとても洗練されており、それだけでも映画としても楽しめるものとなっていると思います。
しかし、この映画はただの芸術志向というわけではありません。
これは建造物を通して、薬物依存症だった母を持つ少女と、これまで仕事一筋で突然意識不明となった父とがこの先どうしていくべきなのかについて考える家族についての作品となっています。
好きだった点
これはやはり、コロンバスのモダニズム建築の数々でしょう。
決して最先端の建造物ではないながらも無機的でシンプルなそれらの佇まいには、ケイシーだけでなく見る人の誰もが心をつかまれているようでした。
嫌いだった点
上映時間も1時間40分ほどなのですが、建物、それから街並みを見せようとするシーンが多いのもあってなのか、少し間延びしたように感じられる場面も多少見られたのが心残りでしょうか。
見どころ
今作は先述の“ムービー・エッセイ”を見てから鑑賞すると「 ここは○○作品っぽいな!」と発見をしながら鑑賞できるので非常におすすめです!
逆に今作を見てからキューブリック、ゴダール、ヒッチコック、小津といった巨匠作品に触れてみるのも楽しいのかもしれません!
私が今作を通じて小津安二郎を感じたのは、部屋と人物を定点で映し出すカットでした。
考察・疑問点
ケイシー(ヘイリー・ルー・リチャードソン)は夢のために泣く泣く母親の元から離れ、ジン(ジョン・チョー)は病床に伏せる父のために、父の存在を億劫に思います。
回復しなくてもいいとすら考えながらもこの地に残ることになる、という対照的な結末を迎えるところが面白い作品でした。
主人公ケイシーとジン、2人の人生のうち一瞬だけ交わりそれぞれ別の人生を歩み始める様子は、まるで反対方向へと向かう列車が一瞬だけ同じ駅に停車し、またそれぞれ逆方向に進んでいくかのようでもあります。
しかし、その進んだ先が決して希望に満ち溢れているわけではない点が今作をより考えさせるポイントとなっています。
コゴナダ監督は小津の「 一人息子 」からケイシーとジンの子どもとしての負担について「 人生の悲劇の第一幕は親子になったことに始まっている 」という引用句を用いて語っています。
なんとなく全体が明るく公式サイトを見てもほんのりする作品かな?
と思っていましたが、コゴナダ監督は今作を悲劇として描いたのかもしれません。
まとめ
漠然とした不安を抱えながらもパステル色の画面の中で淡々と日々が過ぎていくこの漢字は「 パターソン 」を見た時の感覚に近いと感じました。
俗世に取り残されて穏やかな空気感が漂ってる点もそっくりかと。
個人的には主人公の1人であるケイシーがかなり好きなキャラクターでした。
勤勉で家族思いのいい子なんですほんとに。
ぼろっぼろのHondaにのり未だにガラケーを使っているのですが、そんなところにも「 家庭事情を気にして我慢してるのかな 」と勝手に想像して泣けてきます。
あえて言うなら「 レディ・バード 」の主人公クリスティンの真逆を行く感じです。