アシスタント

あらすじ
映画プロデューサーを夢見るジェーンは、名門大学を卒業し有名エンターテインメント企業に就職。しかし彼女は、パワハラやセクハラが横行する職場に悩んでいく。
原題
The Assistant
公開日
2023年6月16日
上映時間
87分
予告編
キャスト
- キティ・グリーン(監督)
- ジュリア・ガーナー
- マシュー・マクファディン
- マッケンジー・リー
- クリスティン・フロセス
- ジョン・オルシーニ
- ノア・ロビンズ
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー

どの業界でもあてはまる普遍性があり、他人事として見られませんでした。
若い女性がいかに「使い捨て」の対象となるか、無力とみなされ、夢や希望をそがれていくか。
そして「 お前の代わりなんていくらでもいる 」という扱いを受けることが、いかに人の心を蝕んでいくかがリアルに描かれていると感じました。
若く、有能で、希望にあふれて憧れの映画業界に飛び込んだであろう主人公のジェーン。
しかし、新人、しかも若い女性だからといってないがしろにされ、理不尽な叱責を受け、ケア労働や面倒を一手に
引き受けさせられる立場に辟易し、思い描いたような仕事はできず、とにかくずっと疲労とため息という感じです。
それを「 最初はみんなそうだ 」「 慣れれば大丈夫 」と周囲は励ましているつもりかもしれませんが、その励ましでさえ、人を人として扱わない異常な価値観を温存してしまっている大きな要素のひとつだと思わされます。
ジェーンを愛する父親でさえも、「 お前なら大丈夫だ 」と励ますのが、なんともいえず辛かったです。
やはり「 これくらい普通だから 」と無理して頑張ってしまうことはありがちなことですが
つくづく「 がんばれ 」という言葉はかけるものじゃないなと思います。
なお、この作品は、監督によって数百にも及ぶ労働者へ対してリサーチとインタビューを行い、そこからとりわけ女性の痛みや混乱の経験を浮き彫りにしているといいます。
本作にはわかりやすいセクハラや性暴力の場面こそ出てきませんがあきらかにそれらは存在し、それを助長する「 空気 」が漂っていることを明確に描いています。
告発というほどの大胆さはないものの、多くの女性ががんじがらめにされているおぞましい「 空気 」を扱っている点で、現実的ホラーとも言える作品だと思います。
まとめ
「 これくらい普通 」という価値観が人を苦しめる現実は、若い女性に限らず全ての立場の人にとって有害です。
それに気づき、立ち止まり、声を上げられればベストですが少なくとも異常を異常と感じられる健全さを
社会全体に広められたら良いなと感じました。
映画業界にとどまらない、社会の闇を感じる救いのない話。
それだけに、通り過ぎられない一本。