潜水艦を題材とした作品といえば、最近だと「 ハンター・キラー 」を思い浮かべうる人もいるのではないでしょうか?
「 ハンター・キラー 」はアクションに寄った作品ですが、今作「 ウルフズ・コール 」は潜水艦と言えど、
敵の潜水艦かどうかを耳と音波で見抜くという特殊能力を伴う職業が主人公でして、一風変わったものになっており、
主人公を筆頭に、登場人物たちのヒューマンドラマ的な要素が強い作品でもあります。
本レビューでは、そのヒューマンドラマ部分を深ぼりしていきます。
ウルフズ・コール
あらすじ
フランス軍の潜水艦で働く男は、並外れた聴覚を持っていた。彼は「黄金の耳」と呼ばれる特殊分析官で、わずかな音から敵の動向を探り出す。そんなある日、彼はシリアでの潜航任務中に奇妙な音を耳にする。それは「オオカミの歌 」(呼び声)のような怪しいソナー音で、その音に惑わされた彼は識別に失敗。その判断ミスにより、深刻な事態を招いてしまう。やがて再びその音を聞いた彼は、人類の存続をかけた決断を迫られる。
公開日
2020年9月25日
原題
Le Chant Du Loup
上映時間
115分
キャスト
- アントナン・ボードリー(監督)
- フランソワ・シビル
- オマール・シー
予告編
考察・感想レビュー
好きだった点
戦争を食い止めるための「 抑止力 」として軍のあり方を、現実的に捉えて構成している部分が好きでした。
この作品の中では、ドラマ的なやりとりもありつつ、準主役級だろうが割とあっさりと亡くなってしまいます。
この観客側からすれば冷徹にも思えるような展開が好きでした。
さらに、核戦争という設定も実際に起こってもおかしくない内容であり、そのリアルさをはらんだ緊迫感を描くために、設定からシビアに作ってるところに好感を持てました。
嫌いだった点
リアルな設定や、やりとりもあるという魅力の反面、最後「 自分を信じてくれ 」と語る主人公のことを艦長が信じた。
というヒューマンドラマとしてはありだけれど、軍人としては問題点のある行動の部分が好きになれませんでした。
大統領命令は取り消しされることがないというのが原則で、その任務が完全に執り行われるために、外部とのやり取りは一切遮断するからこそ何度も会話に失敗していたはず。
「 黄金の耳 」として一緒に任務についたことのある主人公の話を信じる。
ここまでリアルな設定・リアルな展開に努めてきたのに、いきなりドラマチックになってしまい、私はそこが微妙だなと思いました。
核戦争が勃発するか否かの瀬戸際にいるという緊迫感を高めたいのであれば、最後まであくまでドラマチックな展開はそぎ落として欲しかったです。
しかし、そのドラマチックな展開こそフランス映画の大きな特徴なのかもしれませんね。
見どころ
軍人として「 抑止力 」としての自分たちの任務を遂行しようとする、静かに熱い展開と緊迫感のあるやり取りが最大の魅力です。
戦場をストレートに描く戦争映画は、エンタメ質の強いものから本格派まで幅広く存在しています。
しかし、心理戦でもないド派手アクションでもない、潜水艦の中で展開されるヒューマンドラマも織り交ぜた「 軍人としての使命 」
に葛藤する主人公たちという、新しい形の戦争を扱った点が見どころです。
彼らは、核戦争が起こる前に自分たちがその戦争の抑止力として、最後の砦のような役割を持つことを自負しており、
そのために、最終的には自分ではなく国を守るという使命感を静かに心のうちに秘めています。
その使命感が観客にもしっかりと伝わってくるからこそ、1つ1つのやり取りが「 命 」をかけたものであるというヒリヒリ感を感じることができました。
この結末を悲劇ととるのか、戦争の抑止力として職務を全うできて良かったととるのか?で鑑賞後の後味が変わってくるのではないかなと思います。
展開通りいけば、最終的には味方同士で攻撃し合うことになり、多くの人が亡くなるという痛ましい出来事に思えます。
しかし、前述したように、今作の根底に流れているのは「 命を懸けてでも使命を貫く 」という信念です。
それが一番だと考えるのであれば、不可避に思えた核戦争勃発に関して犠牲を払ってでも回避できたのだという「 達成 」に繋がります。
私は「 犠牲を伴いつつも使命を果たせた 」という、悲劇だけでは終わらないドラマ的側面を評価したいなと思いました。
まとめ
フランス映画 × 潜水艦 × 戦争 だけどアクションではない。
その不思議さで鑑賞を決意した作品でしたが、見て良かった、楽しめたと思いました。
テイストは違いますが、関連して「 ハンター・キラー 」「 T-34 」もアリだと思います。
主人公を演じたフランソワ・シビルが良かった!
と感じた人は「 ラブ・セカンド・サイト 」も上映が控えている作品としてオススメです。
こちらはラブコメになるので、女性向けです。