爽快さが余計に悲しい復讐劇。
切なくも志のあるラストに、見ている自分の中にも誓いをたてるような意欲作。
プロミシング・ヤング・ウーマン

カフェで働く元医大生の女は、夜ごとバーで酔いつぶれたふりをして男性客の自宅にわざと連れ込まれ、体を触ってきた相手に制裁を加えるのを日課としていた。そんなある日、親友をレイプして死に追いやった男が近々結婚すると聞いた彼女は、かつての関係者らに復讐。さらに衝撃の事実を知り、独身パーティーに乗り込んでいく。
公開日
2021年7月16日
原題
Promising Young Woman
上映時間
113分
予告編
キャスト
- エメラルド・フェネル(監督)
- キャリー・マリガン
- ボー・バーナム
- アリソン・ブリー
- クランシー・ブラウン
考察・感想レビュー

好きだった点
あまりにも切ないラストではありますが、そこにキャシーの思いと志が感じられ、女性同士の連帯という意味では胸が熱くなります。
キャシーが目のシワを全く隠していないというのが好感が持てます。
おそらくは、いくらでも修正できる現代の技術の中にあって、あえて目じりや肘のシワといった年齢を感じさせる要素をあくまで自然に描いていることにも製作上の意図があると感じます。
嫌いだった点
この映画は、「 本当にイヤだ 」と思うようなことばかり出てきます。
成績優秀だったキャシーとニーナが医学部を中退せざるを得なくなった事件のことは、女性の自分としては見るのもしんどいです。
被害者の女性ばかり苦しみ、加害者の男性は保護され、のうのうと人生を成功させるという図式は、世界じゅうで沢山起きていることだと想像できます。
なので、この映画は苦しいです。
ただ、こうした社会構造があるのだという自覚と、それを絶対に許さないという意思を再確認した気持ちです。
男性の意見におもねる、女性の味方ではない女性も描いているのが興味深いです。
属性は関係ないというメッセージを感じました。
この映画を、この映画に登場するような立場や生き方をしてきた男性が見たら、一体どんな反応をするだろう?と思いました。
もしかしたら、ごくごく自然に、復讐された男性たちに同情する人も多いかもしれません。
「 俺たちは悪くない。俺たちは力があるから、コントロールできる 」
という兄弟愛のような連帯は、たとえば、利権を共にする政治家同士にありそうな話だなと感じました。
まとめ
日本での公開でも原題のままにしてくれたのは誠意を感じました。
客寄せのような残念な邦題でなく、「 若く、将来を約束された優秀な女性が失ったもの 」に思いを馳せるには、この題名しかなかったと思いました。
とはいえ、性別での分断を煽る作品とは捉えないで欲しいです。
「 自分を優位に思い、他者をおざなりにしていい 」なんて考えは絶対に許さない。
という意思を感じるメッセージ性の強い作品でした。