
繊細な映像美に定評のあるセリーヌ・シアマ監督が紡ぐ女性の深淵を描く意欲作。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
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秘密の森の、その向こう


あらすじ
公開日
2022年9月23日
原題
Petite maman
上映時間
73分
キャスト
- セリーヌ・シアマ(監督)
- ジョセフィーヌ・サンス
- ガブリエル・サンス
- ニナ・ミュリス
- マルゴ・アバスカル
- ステファン・バルペンヌ
予告編
公式サイト
秘密の森の、その向こう
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー


良かった点
なんといっても映像美でしょう。
昨年を代表する傑作といっても過言ではない「 燃ゆる女の肖像 」の神々しいまでの映像美の記憶も、新しいセリーヌ・シアマ監督。
その最新作ということで否が応でも期待が集まりますが、やはりその期待を裏切らない、繊細で豊かな眼差しに満ちた良作だったと思います。
幼女、母、祖母とさまざまな世代の女性が登場しますが、みな美しく、寂しさがあり、けれど同時に温かみも持っています。
ただ美しいだけではない、さまざまな感情が交差する表情。
そうした描き方をする監督は、やはり人間の描き方を心得ているなと思わざるを得ません。
好きではなかった点
もはや映画ファンから確固たる信頼を得ているセリーヌ・シアマ監督ゆえ(作品自体ではなく、映画の売り込み方の問題ではありますが)、
どちらかというと作品自体や登場人物よりも、監督のほうに存在感を感じてしまいます。
そして、監督自身が本作を語るうえで話す言葉にはやや違和感を感じるところがあります。
それは宮崎駿氏をリスペクトしており、彼だったらどんなふうに映画を撮るだろう?
と想像しながら作品を作るというコメントです。
もちろんリスペクトを持つことは素晴らしいですし、その対象が日本人であるというのは喜ばしいことだとは思いますが、
「 森の中で自分と同い年の家出中の母親と会う 」という設定は、ややファンタジー過多に感じます。
加えて、その特異な設定がそこまで物語の推進力になっているとは思えなかったのが残念でした。
それが宮崎氏の影響によるものであれば、あまりいい効果を及ぼしてはいないのでは、と感じます。
せっかく素晴らしいものを持っているのだから、もっと彼女独自の感覚や感性を大切にしてほしいと感じました。
考察レビュー
母が家出した理由が自分にあるのではないかと不安がる娘の姿には、小さな女の子特有の自己犠牲や葛藤が見えて切なくなります。
ファンタジーでありながら、女性という生き物を深く見つめる視線がこの物語の核なのではないでしょうか。
まとめ


セリーヌ・シアマ監督の人間を見つめる眼差しを、まざまざと感じる作品でした。