カルト中のカルト。伝説的ホラー映画を目にしたが、そこには噂を超える地獄が待っていた…。
マーターズ
公開日
2009年8月29日
原題
Martyrs
上映時間
100分
予告編
キャスト
- パスカル・ロジェ(監督)
- モルジャーナ・アラウィ
- ミレーヌ・ジャンパノイ
- カトリーヌ・べジャン
- イザベル・ジャス
- エミリー・ミスクジャン
- マイク・チャット
- ガエル・コアン
- アニー・パスカル
- ジェシー・パム
史上最凶にして最悪
2007年にフランスで製作された伝説的ホラー映画。
コロナの後遺症に悩まされ、精神に活を入れるような刺激を欲していたとき、配信に入っているのを見つけて見ることができた。
詳しい内容は知らず、スプラッター系だということだけぼんやり知っていた程度で見たのだが…これは掛け値無し、史上最凶にして最悪のホラーだった。
最悪というのは、もちろん出来が酷いのではなく、見てひたすら気分が悪くなるという点においてだ。
確かにスプラッター系とは言えるが、そう聞いてイメージする映画とは存在の次元が違う。
全くエンタメにならず、見る者を一直線に絶望と嫌悪へ追い込んでいく。
そもそもスプラッター描写は単なる仕掛けに過ぎず、真の問題は設定やストーリーの方。
こんな物語を映画にしてしまった狂気こそが、異次元の禍々しさを放っている。
これまでに見た映画で言うと、強いて言うならイギリスの絶望ホラー「 ディセント 」(2005年)に若干近い肌触りだが、本作に比べたら「 ディセント 」はよくできたエンタテインメントだ。
これはスプラッター映画ともホラー映画とも違う、何か別の孤高のジャンルと考えるべきかもしれない。
エンドクレジットで何故か「 ダリオ・アルジェントに捧げる 」と出るが、いや、これを捧げられたら、さすがのアルジェントも困惑するのでは…。
この映画を配信で流すことの是非
DVDのパッケージには「 これは本当にDVD化していいものなのか? 」と書かれているようだが、それ以上に、こんな代物を誰もが気軽に見られる配信というフォーマットで見せていいのだろうか?
「 公序良俗に反する 」という意味では、筆者がこれまでの人生で見てきた映画の中でも一二を争う。
ただ、逆に配信だからこそ見られたという部分もある。
途中で休憩を挟みまくり、あれやこれやいろいろ雑事をやって気分転換したから、何とか最後まで見られたという感じだ。
逃げ場のない劇場で見たら、もっと強いトラウマと化しただろうし、話がさらに暗澹たる方向へと転換する中盤で席を立った可能性すらある。
精神のリフレッシュにホラー映画を見たかったのだが、今回はいささか趣旨が違った。
暑いのでビールを飲んで涼を取りたいと思って酒場に入ったら、マムシを漬けたウォッカをストレートで飲まされて、吐きそうになっているような感じだ。
決して生半可な気持ちでは見ないように
なお、具体的なストーリーについて何も書いていないのは意図的なものだ。
もし見る気があるなら、一切何も知らずに見るべき。
タイトルについてだけ説明しておくと、「 マーターズ 」とは「 殉教者たち 」という意味である。
熱烈な映画ファンであれば、映画の1つの極北として見るといいが、決して生半可な気持ちでは見ないように。
もう1つ大きな注意。
この映画は2015年にアメリカでリメイクされている。
筆者未見ながら、そちらは評判イマイチなので間違えて見ないように。
本稿で書いているのは、あくまでも2007年製作のフランス映画に関する話だ。
アメリカでのリメイク版は前からAmazonプライムビデオに入っていて、現在も見ることができる。
一方フランスのオリジナル版は一時期ラインナップに乗っていたが、2024年4月時点で、再び姿を消している。
あの時配信に乗ったのは、まるで何かの間違いであったかのように…。