「 シラノ・ド・ベルジュラック 」という舞台劇(もしくは人物)をご存じでしょうか?
これは、実在したシラノ・ド・ベルジュラックという剣豪作家を題材にした舞台劇。
その舞台劇の中では、醜い容姿をもつ主人公シラノ・ド・ベルジュラックの純愛が描かれています。
1897年にフランスで初演がなされると瞬く間に話題となり、現在に至るまで数多く演じられてきた名作中の名作です。
そんな名作「 シラノ・ド・ベルジュラック 」という戯曲がどういった経緯で生まれたのか?
それを紐解くのがこの作品。
本作の魅力を掘り下げていきたいと思います!
シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!
あらすじ
1895年、鳴かず飛ばずの劇作家エドモンは、劇場の支配人に駄作だと罵られて上演を打ち切られてしまう。それから時が過ぎ、スランプに陥った彼は、かつて主演を務めてくれた女優から著名な俳優を紹介される。しかし2時間後の顔合わせまでに新作を手土産に持っていくことになり、白紙のノートを前にして頭を抱えるエドモン。やがてカフェの店主の言葉からヒントを得た彼は、実在した剣術家にして作家のシラノ・ド・ベルジュラックを主人公にしようと思いつく。
公開日
2020年11月13日
原題
Edmond
上映時間
110分
キャスト
- アレクシス・ミシャリク(監督)
- トマ・ソリビレ
- オリヴィエ・グルメ
- マティルド・セニエ
予告編
考察・感想レビュー
好きだった点
何と言ってもこの作品の良さは、テンポよく進むストーリーにあります。
舞台劇「 シラノ・ド・ベルジュラック 」は名作も名作ですが、これが完成するまでの顛末を知ってるという方は多くはないはず。
だからこそ、次の展開がどう転んでいくのかワクワクしながら見れます。
主人公であるエドモン・ロスタン(シラノ・ド・ベルジュラックの作者)の周りの人間関係が変わっていく様子も面白おかしく、時にハートフルに描かれているのが何ともクセになります。
微妙だった点
合間に挟まる小ネタのようなギャグに終始クスクスとしてしまったのですが、このコメディ感が苦手という人もいるだろうと感じました。
この作品は、エドモンが「 シラノ・ド・ベルジュラック 」を作り出すまでの苦悩を描くというよりは、作り出すまでの過程を面白おかしく描いていることに傾いています。
したがって、作品が後半になるにつれて人間関係にどんどんフォーカスしていき、作品全体が軽いタッチになってしまっているのは否めません。
テンポの良さを生かすために、戯曲作りも人間関係のいざこざも結構あっさりと解決してしまい、少し物足りなさを感じました。
見どころ
この作品の魅力は、その脚本とキャラクターにあります。
戯曲の内容と、主人公エドモンの変化する心情や人間関係をシンクロさせつつ、さらに一癖も二癖もあるキャラクター達とのドタバタ劇にすることで、そのテンポの良さを作り出しています。
しかし、ただのドタバタ劇に終わらないのが本作の見どころ。
例えば、ラストの第5幕の演劇は本当に戯曲の中にいるかのような美しいシーンに仕上がっており、作品全体に通ずるベル・エポックの華々しさはとても良かったです。
このようなコメディ映画ではあるものの、演出やここぞという場面ではしっかりとシリアスさや美しさを描き出せているのが魅力の一つだと思います。
さらに、戯曲「 シラノ・ド・ベルジュラック 」の中の主要な登場人物同様に、この作品にも悪役がいない点も良かった。
完全な悪役がいない分、軽いタッチでするすると進んでいくストーリーは若干の欠点にはなりますが、
それくらい軽い気持ちで見れる方がこの作品は楽しめ、コメディ映画として成り立っていると感じました。
脚本の面白さ、そしてキャラクター達の人の良さが織りなすドタバタ劇に仕上がっている点もこの作品の魅力です。
まとめ
実在する人物や物事を描こうとすると、どうしても中だるみしてしまったり重たくなったり。
本作は軽い気持ちで鑑賞でき、しかも鑑賞後の余韻も爽やか。
このコロナ禍というご時世も相まって、こういったコメディ映画はいつも以上に求めれてるのではないかなと感じました。
この作品をきっかけに「 シラノ・ド・ベルジュラック 」という戯曲に触れてみるのも良いかもしれません。
舞台版だけでなく映画版としても、検索すればすぐに数作ヒットしますので、このお家時間にぜひ!