「 ブータン 山の教室 」の映画情報・あらすじ・レビュー(ブータンの伝統文化)

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4年前、神戸・元町の古本屋で開催された秘境マニアの座談会「 マイ・フェイバリット・秘境 」というイベントに参加したことがあります。

その時は、秘境という言葉すら聞きなれない程の初心者でしたが、それから4年、ようやく初の秘境へ訪れる機会を得られました。

今度は、元町の映画館で。

本作は、主人公ウゲンと共に標高4800メートルにあるブータン北部の秘境ルナナ村へ見る者を連れて行ってくれます。

どのような旅が待ち受けているのでしょうか。

目次

ブータン 山の教室 

©ブータン 山の教室
©ブータン 山の教室

あらすじ

ミュージシャンを夢見る若い教師は、ブータンの僻地にあるルナナ村の学校に赴任するよう命じられる。オーストラリアに渡りたいと密かに願っていた彼は、その命令をしぶしぶ承諾。1週間以上かかる距離を旅して、大自然に抱かれた標高4800メートルの地にあるルナナに到着する。そんな彼を嬉しそうに迎え、勉強をしたいと目を輝かせる子供たち。憧れの地からは程遠い、電気もトイレットペーパーもない村で、彼は好奇心に満ちた子供たちや村の人々に囲まれて暮らすうちに、やがて自分の居場所を見つけていく。

公開日

2021年4月3日

原題

Lunana A Yak in the Classroom

上映時間

110

キャスト

  • パオ・チョニン・ドルジ(監督)
  • シェラップ・ドルジ
  • ウゲン・ノルブ・ヘンドゥップ
  • ケルドン・ハモ・グルン
  • ペム・ザム

予告編

考察・感想レビュー

©ブータン 山の教室
©ブータン 山の教室

好きだった点

ブータンのありのままの姿を見られる点。

独自の文化や伝統を守ってきたブータン(人口約72万人)を知るための入門映画としても、うってつけだと思いました。

首都ティンプー(人口10万人以上)に住み、ヘッドホンとスマホを片時も離せない。

今時の若者である主人公ウゲンと共に、国王ですら「 僻地中の僻地だ 」と驚いたとされるルナナ村(人口わずか56人)へ、1週間以上かけて険しい山道を登り続けます。

その過程を丁寧にじっくりと描いていて、それが見る人たちに一種のイニシエーション(通過儀礼)の効果を与えていました。

大自然に囲まれたトレッキング体験だけでも十分に観る価値あり。

まさに、写真家でもある監督の手腕の産物ですね。

嫌いだった点

ブータンの山の教室で、先生になることを決心するまでのウゲンの言動が嫌いでした。

親代わりに育ててくれた祖母の忠言を聞かない、教育局に呼び出された待合室ではヘッドホンを付けたまま、村からの使いの精一杯のもてなしにも応えずスマホをいじりっぱなし…。

例を挙げたらキリがありませんが、絵に描いたような「 最近の(ダメな)若者 」っぷりが炸裂。

だからこそ、村の人たちと心の交流を深める過程で、子どもたちに好かれる先生として目覚め、人間的に成長していく様子が、感動的ではあるのですが。

見どころ

村人たちの純真無垢な姿に、深く心を動かされました。

ほとんどのキャストが、映画を一度も見たことのない実際の村人たちだそうです。

だからこそ、混じり気のない純粋さが作品全体にあふれているのでしょう。

特に、実際にルナナで暮らす9歳の少女ペム・ザムの瞳の輝きは、一点の曇りもありません。

先生をやる気のなかったウゲンに変化をもたらしたのは、他でもない子どもたちの存在。

教育とは、未来に触れることであり、子どもたちが先生を育てる、という教育の原点を鮮やかに見せてくれました。

考察レビュー

今回は初のブータン映画鑑賞となりましたが、まず驚いたのが言葉です。

今のは朝鮮(韓国)語? 

それとも日本語? 

と聞き間違えてしまうような単語や、語感に親しみを覚えました。

初めてのブータン映画なのに、まるで懐かしい感じがしたのは、この言葉に秘密があるような気がします。

高知にしか棲めないウシ科のヤクに「 ノルブ(宝)」という名前が付けられますが、朝鮮にも「 フンブとノルブ 」という童話があります。

これは、偶然でしょうか?

言葉が近く感じるのは、仏教が中国から朝鮮半島を経て日本へと渡ってきていることが、関係しているのかもしれません。

ブータン映画が初めて制作されたのは80年代後半、国内にテレビやインターネットが解禁されたのが1999年(とはいっても、ルナナ 村には電気も携帯電話もなく撮影のために65頭の馬で4台の太陽電池を運んだのだとか)

ここ10年ほどは、ブータンでも韓流ブームが続き、日本アニメも人気があり、「 鬼滅の刃 」ファンも増えているそうですよ。

ブータン人は英語で教育を受け、英語が話せるため、世界との壁が低く、これからも優れたブータン作品が羽ばたいていくことでしょう。

邦画「 アヒルと鴨のコインロッカー(2007年)」には、ブータン留学生ドルジが登場します。

原作者の伊坂幸太郎がブータンに旅行した体験が生かされているようですね。

ドルジといえば、本作の監督名もドルジ、主人公を演じた俳優もドルジ、劇作家もドルジ。

日本でいう鈴木みたいな感じでしょうか(笑)

まとめ

©ブータン 山の教室
©ブータン 山の教室

初の秘境ツアーがルナナ村で良かったです。

4年前に時を戻せるなら、秘境座談会で迷わずにこう話すでしょう。

「 マイ・フェイバリット・秘境は、ブータンのルナナ村です 」

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