「 ある画家の数奇な運命 」の映画情報・あらすじ・レビュー

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時代に翻弄されながらも、向き合うべきものから目を逸らさず、自らの人生、芸術を切り拓いた画家の壮絶な半生。

目次

ある画家の数奇な運命

ある画家の数奇な運命
©ある画家の数奇な運命

あらすじ

ナチ党政権下のドイツ。少年クルトは、叔母の影響で芸術に親しみながら育つ。叔母は精神の均衡を失い、強制入院の果てに安楽死させられてしまう。終戦後、東ドイツの美術学校に進学したクルトは、エリーという女性に出会って結婚。しかしクルトは、ナチ党の元高官だったエリーの父親が、叔母を死に追いやった張本人だと知らずにいた。やがて東ドイツのアート界に疑問を抱いたクルトは、エリーを連れて、ベルリンの壁崩壊前に西側に逃亡。美術学校の教授から酷評されつつも、叔母の遺したある言葉を胸に刻み、創作に没頭しようとする。

公開日

2020年10月2日

原題

Werk ohne Autor

上映時間

185分

キャスト

  • フロリアン・ヘンケル(監督)
  • フォン・ドナースマルク(監督)
  • トム・シリング
  • セバスチャン・コッホ
  • パウラ・ベーア

予告編

考察・感想レビュー

ある画家の数奇な運命
©ある画家の数奇な運命

好きだった点

主人公クルトが、叔母の安楽死や恋人エリーの強制的な中絶、 流産など、悲しみや苦しみにもがきながらも、新しい希望や展望を抱いて前進する姿勢に救いあり。

クルトの才能を認め伸ばそうとする芸術学校の教授や、時にはふざけたりして人生を楽しみ方を思い出させてくれる友人など、 彼をそっと支える善意の描き方に好感が持てます。

全体的に重く暗くなりすぎず、温かみを添えていると感じました。

クルトが新天地の芸術大学への入学面接を受ける際、教授(彼もまた戦争で頭部に火傷を負い、以来ずっと帽子を脱がない)があまり自分のことを語らない彼に、

「 何も語らなくても分かる。その目は辛いことがたくさんあった目だな 」

と語りかけるシーンは印象的です。

嫌いだった点

嫌いというか、(事実なのですが)戦争のむごさがあまりにも心に刺さるので、人によってはトラウマになるかもしれません。

見どころ

クルトの憂いを含んだ青い瞳には引き込まれるものがあります。

エリーの衣装は、色も形もため息の出るような美しいドレスでどれも印象的でした。

困難ばかり降りかかるけれでも、深く愛し合い支え合うクルトとエリ―の姿も本作の魅力。

通り過ぎられないのは、第二次世界大戦下ドイツで起こったことの悲惨さ。

健康なドイツ人以外を根絶やしにするという、恐ろしく残酷な世界ですが、人間らしく反抗をしようものなら酷い目に遭わされます。

だから、民衆は怯えながらも権力者に従わざるを得ず、 残酷さに手を染めていく。

こうした人間心理の闇の深さ、民衆のコントロールの仕方は恐ろしくて身震いがしました。

ドレスデンの空襲シーン、クルトを芸術家に導いた叔母は精神が不安定だという理由で強制送還。

「 断種 」という恐ろしい 不妊手術を受けさせられ、最終的にはガス室で殺されるシーン。

目を背けたくなるからこそ、私たちは国籍にかかわらず、 この事実をしっかりと知るべきだと感じました。

また、戦後の描写もリアルでして、警備の目が光る中、クルトとエリ―が抑圧的な東ドイツから開放的な西ドイツへ 脱出するシーン。

完全に彼らの立場になり、どうか無事に辿り着かせてくれと、祈るような気持ちになります。

ある画家の数奇な運命
©ある画家の数奇な運命

本作は実在するドイツの現代美術家、ゲルハルト・リヒターという人物の半生をモデルにしているそう。

劇中のどれがフィクションでどれが事実かは秘密、というのが製作するにあたっての条件だったと言われています。

そう言われてみると、どれも事実のような、どれもフィクションのような出来すぎた話のようにも感じるのが不思議。

案外「 これはさすがにフィクションでしょ 」と思うエピソードほど事実かもしれないですね。

芸術学校の教授がクルトの作品を見て言った「 ここにあるのは君のものじゃない 」 というのは、彼の才能を否定したのではなく、むしろ信頼していたからこそ。

自分のトラウマにも近いような「 原体験に降りていけ 」というアドバイスだったのでは? と感じました。

しんどくて骨が折れるけれど、「 自分の原体験 」に真実があるいうのは、 芸術家に限ったことではなく

「 職業が何であれ芸術家なんだ 」という教授の言葉は、 様々な人に届いて欲しいなと思いました。

まとめ

ある画家の数奇な運命
©ある画家の数奇な運命

3時間という大作ではありますが、何しろ激動の第二次世界大戦のナチス政権下から東西ドイツを生き抜いた芸術家の半生。

飽きる訳がありません。

実際、最後のシーンではこれで終わり?

という物足りなさすら感じる、 とても引き込まれる作品です。

人間の逞しさも、悍ましさを描いている傑作だと思います。

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