「 愛と闇の物語 」考察レビュー、エルサレムにルーツを持つナタリー・ポートマンの力作
こんにちは、Johnです。
映画ライフ楽しんでますか?
今回は、ペンネーム(@ayahhi)さんからの投稿レビューです。
1945年のエルサレム。
この地にルーツを持つナタリー・ポートマンが監督・脚本も務めた戦争と迫害のリアルを描く意欲作。
画像の引用元:IMDb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
愛と闇の物語
公開日
2021年2月19日
原題
A Tale of Love and Darkness
上映時間
98分
キャスト
- ナタリー・ポートマン(監督・脚本・主演)
- ギラッド・カハナ
- アミール・テスラ
予告編
公式サイト
作品評価
[rate title=”5つ星”]
[value 3/5]映像[/value]
[value 4]脚本[/value]
[value 5]キャスト[/value]
[value 2]音楽(BGM)[/value]
[value 2]リピート度[/value]
[value 4]グロ度[/value]
[value 3.5 end]総合評価[/value]
[/rate]
感想レビュー
好きだった点
正直に言うと劇中で「 好きだな 」と思えるシーンは少ないです。
全体を通して、エルサレムに暮らすユダヤ人としての戦争と迫害に対する恐怖と哀しみに溢れており、非常に暗い。
ただ、あれだけきらびやかな成功をおさめ、ハリウッドでもトップクラスの美女で有名な女優ナタリー・ポートマン。
彼女が監督・脚本も務めるほど思い入れの強い作品が、こんなにも硬派なものだというのはビックリしました。
何とも頼もしいと思いました。
今作には、ロマンスやユーモアなどの観客に受ける分かりやすいシーンはほとんどありません。
おそらく、商業的な成功などを気にしていないのではないでしょうか。
エルサレムというユダヤ人にとっては、常に戦火や迫害におびえるような土地にルーツを持つ彼女は、インタビューの中でも「 自分の本当の家はエルサレムにあると思っている 」
と語るように、今作をどうしても作品として残したかったのでしょう。
女優というキャリアだけでなく、映画という文化遺産に対する気概、自分の果たすべき役割を果たすんだという意思を強く感じました。
嫌いだった点
先に書いたように、全体的に暗いので、好きな点は挙げにくいものの、かといって嫌いな点というのもほとんどありません。
辛い描写はリアルなものだったと思いますし、知らないほうが能天気に生きていけますが「 知られるべき闇 」を描いている今作なので、その真剣さが伝わってきました。
見どころ
ユダヤとアラブ。
共に長い争いの歴史の中で、迫害され差別されてきた2つの民族が、苦しめられた者同士で争ってしまうという宿命。
劇中「 親に虐待された兄弟同士は助け合わない。いがみ合うようになる。」
という意味の言葉が出てきます。
これにはハッとさせられました。
「 苦しみを連鎖させてしまう 」という、人間の哀しい性が描かれていると感じます。
と共に、家庭で起きていることと世界情勢は、規模は違えど同じ図式なのかと気付かされます。
考察レビュー
舞台は1945年のエルサレム。
日本で生まれ日本で育った一般的な日本人にとっては、1945年は「 終戦の年 」であり、その後は「 戦後 」という意識があると思います。
しかし、中東にとっては、1948年のユダヤ人によるイスラエル建国から中東戦争が始まっていき、それ以来ずっと紛争状態なのです。
現在もユダヤ人とアラブ人の対立は根強く残っています。
こうしたことを踏まえると、いかに自分が視野が狭く見える範囲しか世界を知らなかったかと思い知らされます。
まさに、知らない世界の闇を見る機会となった映画でした。
アモスの尾行シーン
母ファニアが主人公の息子アモスを置いて「 ひとりになりたいの 」と言い残し何をするのか不思議に思ったアモスが尾行したシーン。
街角のポストの前で何かに深く感情を揺さぶられている、というシーンがあります。
あれは手紙を出そうとして、何かを思いあきらめたということなのでしょうか?
精神的に衰弱した母が若くして亡くなる時、土砂降りの雨の中(死にゆく彼女の幻想、という描き方ですが)泣きながら体を寄せる。
ことあるごとに現れる、たくましく土を耕す若い男性。
彼女は夫ではなく、この男性と結婚したかったのを諦めたのか?
と思いましたが、その男性は名前もなく言葉も発しません。
なので、おそらく何かの象徴なのではないかと感じました。
ファニアは、明るく裕福な少女時代を送っていました。
エルサレムを希望溢れる開拓地と信じてやってきたものの、戦争の恐怖や何ひとつ楽しいことのない日常によって、その夢が破れ、自分は壊れてしまった
という比喩なのでしょうか。
まとめ
エンターテイメント性がほとんどなく、愛よりも闇がかなり深い作品ですが「 必要な作品 」だと思いました。
こういう作品を映画業界において、ナタリー・ポートマンのような人物が製作するのであれば、救いがあるなという希望を持てる1本です。