今回は、アカデミー賞作品賞にもノミネートされている「 ジョジョ・ラビット 」を観たので、その感想と考察をご紹介したいと思います。
第二次世界大戦末期のドイツを舞台に描かれたコメディー映画。
10歳の少年のイマジナリーフレンドがなんとヒトラーというとんでもない設定になっていましたが、愛がたくさん詰まった作品になっていました。
そして個人的には子どもから大人への成長物語だとも感じる作品でした。
ジョジョ・ラビット

あらすじ
第2次世界大戦下のドイツに暮らす10歳のジョジョは、空想上の友だちであるアドルフの助けを借りながら、青少年集団「 ヒトラーユーゲント 」で立派な兵士になるために奮闘する毎日を送っていた。しかし、訓練でウサギを殺すことができなかったジョジョは、教官から「 ジョジョ・ラビット 」という不名誉なあだ名をつけられ、仲間たちからも馬鹿にされてしまう。母親とふたりで暮らすジョジョは、ある日家の片隅に隠された小さな部屋に誰かがいることに気づいてしまう。それは母親がこっそりと匿っていたユダヤ人の少女だった。
公開日
2020年1月17日
上映時間
109分
キャスト
- タイカ・ワイティティ(監督)
- ローマン・グリフィン・デイビス
- トーマシン・マッケンジー
- スカーレット・ヨハンソン
- サム・ロックウェル
- レベル・ウィルソン
- アルフィー・アレン
- スティーブン・マーチャント
予告編
公式サイト
考察・感想レビュー

レビュー ❶
< 10歳目線の戦争の現実 >
今作を担当したのは「 マイティ・ソー バトルロイヤル 」のワイティティ監督。
やっぱり笑いとキュートを散りばめるのが上手い!
作品全体として、10歳の少年からみた戦争を見せていくのですが、大人の私たちには秘められた皮肉がちゃんとわかるようにグロは一切なし!
色彩もちょっと絵本ぽいというか可愛くて、とてもとっつきやすい感じに仕上がってました。
ジョジョ君とヒトラーが一緒にジャンプするシーンがある予告編の時点で既に面白そうでしたし、期待以上の作品です。
そして今作の「 ジョジョ君の成長 」を象徴するのは「 靴 」と「 靴紐 」
序盤では紐が結べないのですが、後半はしっかりと結べるようになるのです。
反ナチス運動に関わったことで処刑されてしまったお母さんの靴紐を泣きながら結ぶ姿…。
とても感動的でした。
最後にユダヤ人少女・エルサと共に外に出たジョジョ。
大人への扉を開けるラストも、さすがという演出です。
< ドイツ人が英語を話す違和感 >
内容は良かったんですが、1つ。
ドイツ人たちが喋る言葉がすべて英語なんです。
もちろん、製作がドイツではないし、今までも英語圏以外が舞台で現地の言葉ではない映画もあります。
でもこの映画は、物凄い違和感がありました。
後半は完全に慣れましたが、舞台がWW2時代のドイツと言うことをつい忘れてしまうぐらい。
この映画のドイツ語版があるならぜひ観たいです。
ドイツでヒトラーがテーマの映画はNGのような気がしますが、「帰ってきたヒトラー」はかなりウケが良かったらしいので、もしかしたらそのうち公開するかもしれませんね。
「 パラサイト 半地下の家族 」に続いて、2020年初頭からこれまた大傑作を観てしまいました。
スカーレット・ヨハンソンは、現在一番アツいハリウッド女優さんですね。
そして子役のローマン君、初出演映画なのにここまでとは。
レビュー ❷
第二次世界大戦中のドイツ軍を描いた戦争映画だと思われている「 ジョジョ・ラビット 」
私は10歳の男の子が大人になっていく様子を描いた成長物語だと感じました。
10歳の少年ジョジョは、戦争を通して多くのことを学びます。
ジョジョがイマジナリーフレンドを卒業し現実を受け入れ、大人へと成長していく姿に私はとても心打たれました。
ジョジョは、青少年団ヒトラー・ユーゲントの合宿に参加しますが、臆病で合宿が不安で仕方ありません。
ジョジョにとっての唯一の心の支えはイマジナリーフレンドのヒトラーなのです。
心の中でヒトラーに励ましてもらい勇気をもらっていますが、イマジナリーフレンド無しでは強くなれないまだまだ子供でした。
そんなジョジョが家に匿われていたユダヤ人のエルサと出会い、少しずつ変わり始めます。
ジョジョはナチを崇拝していますが、本当はエルサが言うように、戦争ごっこが好きで現実を知らない10歳の男の子でしかないのです。
エルサによって現実を知るようになったジョジョは、ユダヤ人は自分たちと変わらない人間だと気がつきました。
そして「 恋 」なんて気持ち悪いと思ってい少年が、少しずつエルサに恋心を抱くようになります。
初恋を経験したジョジョは、いつしか大人の階段を上がり始めていました。
さらに、ジョジョを大人にしたのは突然の母との別れでした。
ドイツ軍によって処刑されてしまった母。
大人になり始めたジョジョでしたが、それでもまだイマジナリーフレンドは純粋無垢な子供の世界にジョジョを閉じ込めようとします。
エルサと出会い母を失い戦争の現実を知ったジョジョは最後にそんなイマジナリーフレンドを蹴飛ばし、自分の心から追い出しました。
この瞬間ジョジョは大人になりました。
ずっと母親に結んでもらっていた靴紐は子供であることの象徴でしたが、最後にジョジョはエルサの靴紐を結んであげます。
そこにはもう幼いジョジョはいません。
エルサとともに外に出たジョジョ。
大人への扉を開けた瞬間だったのではと感じるラストでした。
< 見どころ >
可愛いジョジョやヒトラーを真似たタイカ・ワイティティ。
「 ジョジョ・ラビット 」の見どころは何と言ってもサム・ロックウェルでしょう。
サム・ロックウェル扮するクレンツェンドルフ大尉は、青少年団ヒトラー・ユーゲントで子供を教育する役。
いつも通りの弱くて嫌な感じのサム・ロックウェルかと思いきや、まさかの強くて熱い心の持ち主でした。
エルサが見つかった時は、エルサをかばったりする優しさを見せてくれますが、1番印象的だったのはラストでジョジョを助けたシーンでしょう。
戦後ナチの制服を着ているとどうなってしまうか理解していないジョジョを助けるために、ジョジョの制服の上着を剥ぎ取ります。
ジョジョに向かって「 ユダヤ人め 」と叫びあえてジョジョを追い払います。
このサム・ロックウェルの優しい姿に涙が溢れてきました。
生きるために自国の流れに従ったクレンツェンドルフ大尉は、ジョジョやエルサを助けることで最後に自分らしさを貫いたのかもしれません。
そんな彼の姿がとても切なくもあり美しくもあり涙が止まりませんでした。
まとめ

第二次世界大戦末期のドイツを描いた「 ジョジョ・ラビット 」ですが、10歳の男の子が恋をして大人になっていく成長物語でした。
そしてジョジョを成長させた大人たちは、最後まで自分らしく生きて散っていた人たちでもありました。
コメディ映画ですが、ラストは涙が溢れること間違いなしの作品となっていました。