16歳のアレックスは、乗っていたヨットが突然転覆し、18歳のダヴィドに救出される。
以降、2人は次第に友情を深め、やがて恋愛関係に発展していく。
2人はダヴィドの提案で「 どちらかかが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る 」という約束をするが、そんな矢先、ダヴィドは不慮の事故で亡くなってしまう。
絶望の中でアレックスを奮い立たせたのは、彼とかわした約束だった。
Summer of 85
あらすじ
1985年のフランス。海で嵐にあい遭難した16歳の少年は、偶然通りかかった18歳の少女に助けられる。段々と距離を縮めた2人は、やがて互いに恋に落ちる。しかしある日、少女は事故により命を落とす。彼女との誓いを思い返した少年は、ある行動に出る。
公開日
2021年8月20日
原題
Summer of 85
上映時間
100分
キャスト
- フランソワ・オゾン(監督)
- フェリックス・ルフェーブル
- バンジャマン・ボワザン
- フィリッピーヌ・ベルジュ
- バレリア・ブルーニ・テデスキ
予告編
考察・感想レビュー
起承転結がハッキリしていて、全体的にわかりやすい作品。
前と後の時間軸が入り組んでる構成をしているが、整理されているため頭がゴチャゴチャになることはなかった。
内容とシチュエーション的に、「 君の名前で僕を呼んで 」と比較されがちだが、
本作は複雑な心理描写はあまりなく、映画をあまり見ない人にも浸透しやすい作品のように思えた。
夏の太陽が反射している煌びやかな海、風をいっぱいに浴びるバイクの2人乗り。
最高に眩しい100分間だった。
主演のアレックス役のフェリックス・ルフェーヴルは、オゾン監督から「 リヴァー・フェニックスの再来 」と言われていたそう。
確かにリヴァーに雰囲気が似ていた。
リヴァーは23歳の若さで亡くなったが、再来とされるフェリックスがこれからの映画界でどのような活躍をするのか、とても楽しみだ。
アレックスとダヴィドが一緒に過ごした時間はたった6週間。
80年代は今ほど同性愛が受け入れられる時代ではなかったから、2人が恋人だと言っても信じてくれる人が少なかったのが辛い。
そして、16歳のアレックスにとってダヴィドは初恋の相手だったのだ。
好きだからこそ起こる嫉妬心も、相手を傷つけたり困らせたりする衝動も、恋愛は綺麗事では成り立たない。
ドキドキしたり、キラキラな時間を切り取るだけが恋愛ではない。
それら全ての感情にアレックスが出会ったのは初めての出来事。
汚い部分すらもさらけ出していくこの映画の構成は、ひと夏の思い出にするには多すぎるほどの衝撃を、観客に映し出してくれた。
今までただ漠然と「 死 」に惹かれていたアレックスがダヴィドの墓で踊るのは、今後彼がこの悲しみと精一杯向き合い生きていく上で、
ダヴィドとの思い出に浸るかなりグッとくるシーンだった。
まとめ
できれば終わらないで欲しいと何度も思った。
この作品の一瞬一瞬が彼らにとっての宝物だ。
アレックスが「 彼を通して本当の自分に会えた 」と話していたのを見て、それこそが究極の愛だと感じた。
6週間だけでもそんなことを思える人に出会えたアレックスは幸せで、それはダヴィドも同じだと思う。
ダヴィドの魂はいつもアレックスのそばにある信じたい。